オランダのルッテ政権崩壊 移民政策巡り内部対立 背景に“世界一子どもが幸せな国”(2023年7月11日)
2010年に就任し、在任期間がオランダ史上最長となっていたルッテ首相が7日、内閣総辞職を表明した。政権崩壊の背景には、“世界一子どもが幸せな国”であることが関係するという。一体どういうことなのか。
■「移民政策」めぐる内部対立
ルッテ首相:「残念ながら、与党間の意見の相違は克服不可能だと結論付けなければならない」
7日、オランダのルッテ首相が連立を組む政党との意見の隔たりから内閣を総辞職すると発表した。
その理由は、移民政策を巡る内部対立だ。
オランダ移民帰化局によると、難民申請はおととしのおよそ3万6000件から去年はおよそ4万8000件と急増。今年は7万人を超える可能性があるという。
今回、ルッテ首相が率いる中道右派「自由民主党」と、連立を組む政党との間で難民流入制限を巡る対立が起こり、修復不可能となって政権崩壊につながった。
■総選挙は11月に実施予定
2010年から続いていたオランダ史上最長のルッテ首相をトップとする政権の崩壊に市民からは、次のような声が聞かれた。
オランダ人有権者(56):「驚きました。国が安定していたので、少し残念です」
オランダ人有権者(41):「彼はいい政治家だと思うけど、ビジョンに欠けていて時代遅れだ」
内閣総辞職を表明した翌日には…。
ルッテ首相:「(Q.けさはどんなお目覚めでしたか?)目を開けたよ」「(Q.けさの気分はどうですか?)車を通らせてくれないか、私が王への敬意から何も言うことができないことを知っているだろう。ありがとう」
自ら運転する車でハーグにある王宮に入り、アレクサンダー国王に辞意を伝え、今後の対応について話し合った。
総選挙は11月に実施される見通しだ。
■子どもの幸福度 38カ国中で総合1位
連立政権が崩壊したオランダが、“世界一子どもが幸せな国”とされることが、その背景にあるようだ。
ユニセフ・国連児童基金は2020年、先進38カ国を対象に「身体的な健康」「精神的な幸福度」「スキル(学力など)」の3項目をもとに「子どもの幸福度」の調査を行った。その結果、オランダが総合で1位を獲得している。
また、2010年、2013年の同様の調査でも、オランダは総合1位を獲得している。
こうした評価を受けるようになった理由を知るうえで重要なのが出生率だ。
オランダでは、1983年に出生率が1.47と低い水準となっていたが、そこから徐々に回復し、2010年には1.79にまで改善していた。
■「子どもが幸せな国」となった経緯は?
背景にあるのが1982年、当時陥っていた大不況からの脱却を目指して労働者団体、企業、政府の3者が協力することを決めたワッセナー合意だ。
これは、労働者が賃金抑制に協力する代わりに、企業がより多くの人を雇うよう努力するというものだ。
1つの家庭に例えると、夫がフルタイム、妻が専業主婦の場合、企業側から見た労働力は夫が1、妻が0で、足しても1ですが、夫も妻もパートタイムで0.75ずつ働くと労働力は1.5と増加し、世帯収入も増えることになる。
そして政府は、フルタイム労働者とパートタイム労働者の労働条件を同一とするなどの法整備を進めた。
こうしてオランダは私生活が充実し、子育てがしやすい環境、つまり子どもにとって幸せな国となっていった。
■多くの移民が押し寄せ“住宅不足”に
しかし、こうした働きやすい環境によって多くの移民がオランダに押し寄せることにもつながったという。
オランダで30年間暮らすジャーナリストの石田利枝子さんは、「国土が狭く人口密度が高いオランダでは、住宅不足が起きた。住む家がなくキャンプ場で暮らす人がいる一方で、難民は優先的に住宅を得られることなどから、オランダ国内で反移民的な考えが顕著となった」と指摘している。
こうした状況のなかでルッテ首相は、移民の流入を抑える政策を推し進めようとしたのだ。
しかし、石田さんによると、連立政権を組むリベラルの「民主66」や人道主義である「キリスト教連合」にとっては決して受け入れられない内容で、折り合いがつかず連立政権が崩壊したということだ。
(「大下容子ワイド!スクランブル」2023年7月11日放送分より)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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