“日本のアマルフィ”の元旅館 解体に着手 約50年放置され倒壊の危険 和歌山市
イタリアにある世界遺産「アマルフィ海岸」に景観が似ていることから“日本のアマルフィ”と話題になっている和歌山市の雑賀崎で、50年近く放置されたままの3階建ての元旅館が倒壊する危険があることから、19日、市が取り壊しに着手しました。
7000万円の費用が見込まれ、和歌山県内では最大規模の行政代執行となります。
取り壊しが始まった元旅館は、海にほど近い山を削って作られた崖に建てられた一部木造の鉄筋コンクリート製で、延べ床面積は937平方メートルの3階建ての建物です。
建物は、1975年ごろから使われなくなり、2014年に旅館の運営会社が破綻。その後、建物の所有者が亡くなり、関係者も相続を放棄したため、所有者不在の状態となっていました。
50年近く放置されたままになっているとみられ、雨風による劣化が進み、倒壊の危険が指摘されています。
5年前、近畿地方に台風21号が直撃した際には、旅館から落ちてきた瓦礫が住宅を直撃するなどし、周辺住民が和歌山市に対し、建物の撤去を求めていました。
今年に入り、市は倒壊の恐れがあるとして、法律に基づいて自治体が代わりに取り壊す「略式代執行」の手続きに入り、19日、取り壊しに着手しました。
解体の費用は、和歌山県内で最大規模の約7000万円で、国と市が4割ずつ負担し、残りの2割を県が負担するということです。
市は来年3月中旬までに建物の撤去を終わらせたいとしています。
危険な空き家は全国で2万戸
総務省の調査では、2018年の時点で、全国に存在する空き家は849万戸。30年前の倍以上に増えています。そして、危険な空き家は、去年、2万戸確認されました。
本来、こういった建物を解体する責任は所有者側にあるはずのところに、公金が投入されることには、一部で批判の声もあがります。
今回の元旅館のケースでは、7000万円が必要となりますが、和歌山市は費用負担を少しでも軽くするため、建物や土地の売却も検討しまししたが、この土地は土砂災害警戒区域に指定されていることもあり買い手がつかなかったということです。
ただ、市や県の中での検討にとどまっていて、専門家からは「民間にまで広く意見を募れば、建物や土地を利活用するアイデアが見つかった可能性がある」との声があがっています。
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