「この店の肉は密輸」輸入禁止の中国で“ブランド和牛”…闇ルートを追跡取材(2023年5月27日)

「この店の肉は密輸」輸入禁止の中国で“ブランド和牛”…闇ルートを追跡取材(2023年5月27日)

「この店の肉は密輸」輸入禁止の中国で“ブランド和牛”…闇ルートを追跡取材(2023年5月27日)

中国のレストランを訪ねてみると…

店員)
「ここの肉は全部“密輸”のものです」

これは日本から不正輸出された「ブランド和牛」。
そこには、いずれ私たちの食生活を脅かす可能性も…

常陸牛を生産 橋本畜産 橋本武二さん)
「不正に流出したやつでは、値段が安くなって、(和牛の生産が)厳しくなるのではないかと思います。」

本来は輸入禁止の中国で、なぜ「和牛」が流通しているのか追跡取材しました

記者)
「男が今出てきました、特に慌てるそぶりもなく、前を向いて歩いています。」

逮捕されたのは、大阪府の食肉卸業、前田裕介(まえだ・ゆうすけ)容疑者ら3人。
去年、10日余りの間に、およそ5200万円分の冷凍牛肉をカンボジア向けと偽り、
香港に不正輸出した疑いがもたれています。

取材班が、受取先に記載されたカンボジアの住所を訪ねてみると…

記者)
「記載の会社は見当たりませんね」

たどり着いたのは食品とは無関係の店舗。

店主)
「私は家を借りて商売をしているだけで、何も知らないです」 

カンボジアを偽装先に選ぶ理由について現地の事情に詳しい男性は…

カンボジアルートに詳しい関係者)
「カンボジア当局から、発行された、“輸入許可証”があれば、日本から輸出することが出来きます。極端な話、街の肉屋さんから買って輸出ができる。」

本来、輸出する際には、輸入国側が定める衛生基準を満たした証明書の取得が必要ですが、
カンボジアと日本の間には特別な規定はありません。

そのためか、財務省の貿易統計を見るとカンボジアへの
冷凍牛肉の輸出は1位となっています。
しかし、現地のスーパーを訪ねると…

スーパーの店員)
「日本産の牛肉はありません、カンボジア産とオーストラリア産の牛肉だけです。」

日本産の「和牛」は見当たりません。
では、カンボジアへ輸出されたはずの牛肉は
どこへいったのでしょうか―?

カンボジアルートに詳しい関係者)
「香港から中国へ行っているものだと思います。」

背景にあるのは、中国が2001年のBSE問題以来、
日本産牛肉の輸入を禁止していることです。

これは、実際に香港へ不正輸出されている和牛の写真。

カンボジアルートに詳しい関係者)
「安く良い肉を仕入れて輸出する。価値としては3千円4千円5千円の差になる。正規でやっていると勝負にならない。1.5倍で販売している。日本で安く余った肉を買って
カンボジア向けへ申請して香港へ輸出する。」

その手口はこうです。
冷凍牛肉は日本からカンボジアへの輸出手続きを経て、コンテナ船で出航します。船自体は申告通りに、香港を経由しカンボジアへ向かいますが、和牛が入ったコンテナは密かに、香港で荷下ろしされていました。

カンボジアを隠れ蓑に香港を経由し中国本土へ。
取材班が訪ねたのは香港に近い深セン市。

記者)
「深セン市内なんですけども、看板に「炭火焼肉」と大きく
書かれています」

いま、中国では日本式の焼肉がブームだといいます。
そのほとんどは、日本由来のオーストラリア産“WAGYU”ですが、輸入が禁止されているはずの日本の「ブランド和牛」を提供するという店に入ってみると…

出てきたのはA5ランクの「宮崎産和牛」です。
事情を聴くと、信じられない言葉が…

店主)
「ここの肉は全部“密輸”のものです。比較的安いので」
「密輸業者がいるので、詳しくは企業秘密で我々も知りません。代金は先に払うんですよ。商品の写真を見せてくれるので。返品できません」

記者)
「本土側、深セン側へと香港からのトラックがどんどんと入ってきています。あのトラック食品と書いてありますね」

実際の不正輸入のルートは不明ですが、
こうした荷物に紛れ込んでいる可能性もあるといいます。

安く買いたたかれた和牛が、中国で高級和牛として流通している実態が見えてきました。
影響は、国内の畜産農家にも…

記者)
「こちらでは、茨城県のブランド和牛「常陸牛」が育てられています」

常陸牛を生産 橋本畜産 橋本武二さん)
「これは“配合飼料”です。うちだけのオリジナルに混ぜてもらっています。少しでもおいしくなるように」

餌となる飼料や電気代も高騰する中、飼育にかける労力は惜しみません。

常陸牛を生産 橋本畜産 橋本武二さん)
「牛に愛情かけるってことが一番大事なのかなって思っています」

海外向けの注文を受けることもあるといい、不正輸出に対し、強い憤りを覚えています。

常陸牛を生産 橋本畜産 橋本武二さん)
「それだけ経費がかかっているわけですから。それで値崩れするようなものでは大変困ります」

サタデーステーション 5月27日OA
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

ANNnewsCHカテゴリの最新記事