インドネシアの“首都移転” 目的は環境問題だが“問題山積”…“白紙撤回”可能性も(2023年3月14日)

インドネシアの“首都移転” 目的は環境問題だが“問題山積”…“白紙撤回”可能性も(2023年3月14日)

インドネシアの“首都移転” 目的は環境問題だが“問題山積”…“白紙撤回”可能性も(2023年3月14日)

 インドネシアでは、首都移転が進められていて、早ければ来年にも首都機能の一部が移される見込みだ。しかし、ここにきて計画が「白紙撤回」の可能性も出てきたという。

■計画遅れ…完成したのは“建設作業員用寮”だけ

 草木が生い茂る丘陵地で進む大規模工事。インドネシアの首都ジャカルタからおよそ1200キロ離れたカリマンタン島の東部で、新首都ヌサンタラの建設工事が去年から行われている。

 ヌサンタラの意味は、現地語で「群島」。ニューヨークのおよそ2倍の広さの都市を作る壮大なプロジェクトで、目指しているのは再生可能エネルギーを使った環境に優しいスマートシティーだ。

 ヌサンタラ新首都庁長官:「ヌサンタラは、あしたのための都市です。まさに今、未来に挑戦しなければなりません」

 政府機能は来年までに移転される予定だが、新型コロナなどの影響で計画は遅れている。

 大統領府の予定地はというと建物はなく、いまだ測量している段階。現在、建物として完成しているのは、建設作業員が寝泊まりする寮だけだ。

■「土地は力ずくで奪われ…」先住民から不満の声

 インドネシアが首都を移転させる主な目的は、現在の首都ジャカルタの環境問題。

 ジャカルタは人口集中により長年、渋滞や大気汚染に悩まされてきた。また、地下水をくみ上げすぎたことによる地盤沈下も起きている。

 こうしたことから2019年、ジョコ大統領が首都の移転を閣議決定し、去年1月に国会で関連法が成立した。

 しかし、その直後に行われた首都移転についての世論調査では、賛成が48.5%に対し、反対は44%と拮抗(きっこう)している。

 さらに、建設予定地に住んでいる先住民からは、不満の声が上がっている。

 建設予定地の先住民:「私たちの土地は力ずくで奪われ、支払われた金額も適正ではなかった。他の場所に移されたくない」

 また、新首都の予定地は、オランウータンなど希少生物の生息地でもある。

 NGO「インドネシア生活環境フォーラム」 ドウィ・サウン氏:「動物たちを移動させてから工事を始めるべきでした。急ぐ必要があったのでしょうが、動物のすみかを破壊してしまった」

■現職は出馬できず…後任候補に“反ジョコ派”も

 首都移転を巡る問題は山積している。

 インドネシアでは、来年2月14日に大統領選が行われる。インドネシアの大統領の任期は2期10年までとされていて、3選は認められていない。そのため、首都移転を推進してきた現職のジョコ大統領は出馬できない。

 その後任候補の1人として注目されているのが、ジャカルタ首都特別州のアニス前知事だ。

 ジョコ大統領とは距離をとってきていて、現地メディアによると、首都移転についても「政治的プロセスや国民の参加がほとんどない」と批判的な姿勢をとっているという。

 そのため、アニス氏が当選した場合、首都移転を推進させていくかは不透明となっている。

■首都移転“違憲判決”下ると…“白紙撤回”も?

 また、資金面でも問題が起きているという。

 時事通信によると、インドネシア政府は当初、首都移転の事業費をおよそ4兆円としていて、その8割を国費以外で賄う方針を示していたという。

 しかし、去年1月に国会の予算委員長が、事業費は5兆1800億円にまで膨らむと明かした。政府は民間企業や外国に出資を期待しているが、投資する企業や国は、なかなか現れないという。

 また、首都移転については去年1月に法案が可決され、翌2月に施行されているが、これが「違憲」だとして憲法裁判所に申し立てられているという。

 おととし11月には、ジョコ政権の看板政策の「雇用創出法」が憲法裁判所で違憲判決が下され、改正を求められた前例もあり、首都移転についても違憲判決が下れば、移転が白紙撤回となる可能性もあるということだ。

(「大下容子ワイド!スクランブル」2023年3月14日放送分より)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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