“売り手市場”の就活開幕 学生が重視する「賃上げと初任給」「高い方にいきたい」(2023年3月5日)
本格スタートした就職活動、空前の「売り手市場」と言われる中で焦点となっているのが賃上げです。
番組は人材確保に向け、賃上げに踏み切る企業を取材。その秘訣とは。
▽「高い方にいきたい」初任給も“賃上げ“
(山本将司ディレクター)「午前11時です。開場5分前なんですが、既に多くの学生が列を作っています」
来年春、卒業予定の大学生の就職戦線は早くも熱を帯びていました。
(企業の採用担当者)「おはようございます!間もなくスタートですよ!間もなくスタートします!」
今年は多くの企業が採用数を増やし、学生優位な“売り手市場”と言われる中、ここにも“賃上げの波”が押し寄せていました。
(就活生)「税金とかも上がっていますし、給料の方も結構重視してみています」
「休みと給料に関してはしっかり見たい」
「説明を聞いてみて、よっぽど惹かれる何かなければ(給与が)高い方に行きたいです」
こうした声はデータにも表れています。
志望企業を選ぶ際、初任給を重視すると答えた就活生は実に9割近くに及んでいます。採用する企業側も…
(ノジマ 人財採用グループ 平生愛果さん)「けっこう初任給のところは学生から『心配だ』という形でお声をいただくことはよくありました。初任給、今年は社内として1万円上げまして24万5千円から25万5千円」
(フレスコ採用責任者 松江将平さん)「建設会社は、結構アナログな部分があるので大手と比べていろんな福利厚生っていうところがあまりない。給与がある程度高いよっていうのを見せつけていかないとやっぱり(競争相手に)負けてしまうので」
初任給の引き上げが焦点となる一方、2000万人を超える非正規社員には賃上げの動きが…先月発表された調査では、回答した3184社のうち、半分以上が賃上げを行うと答えています。
▽パート従業員の“おもてなし”時給アップで評価
三重県にある、生協が運営するスーパー。5月にパート従業員全員の時給をおよそ50円上げるといいます。
(コープみえ まつさか店 中江多美江店長)「おはようございます。朝礼を始めます」
なぜ時給アップを決めたのでしょうか。パート従業員の“もてなし”が大きく関係していました。
Q. 背中についてるのは?
「背中ワッペン。私たちはどうしても陳列しながらで、来てくださった組合員さん(客に)背中を向けてることが多い。なので、後ろからでも声をかけてもらえるように」
初めてのお客からも声をかけられる機会が増えたそうです。
パート歴9年の波多信子さん。
(パート歴 9年目 波多信子さん)「絶対手作り、いっぱいあります。同じものはかぶらないから」
お客に楽しんでもらうため、自ら考えたという接客が…
「おばちゃんピンクだから怖ない?ちょっと怖い時もあるから。被り物によっては。今日はいいやろ?きれいやと思えへん?お姉ちゃんも…」
(7年通う常連客)「(仮装を)見させてもらうのが楽しみでもあります。子供を歓迎してくださる雰囲気がすごくあったかくて、来させてもらう理由の1つです。」
こうしたパート従業員の自主的な取り組みを時給アップで評価することが、さらなるサービス向上に繋がっているといいます。努力は確実に実を結んでいます。
(スタッフ)「これが常温可能で、こっちは冷蔵」
(客)「これ、前なかったでしょ?」
(スタッフ)「あったあった。パッケージが変わったん。」
スタッフと和やかに話していたのは、常連客の松本さん。
Q. どれくらい通ってる?
(常連客 松本さん)「お店ができてからだから21周年。ずーっと自転車で雨の日も風の日も。店員さんと近いんですよね。いろんなことをおしゃべりしたり、商品のことも新しいこと聞けたり、それでやっぱり足運んじゃう。」
他の店では言いづらいことを伝えられるのも、長く通っている理由だといいます。
(常連客 松本さん)「しらすが高かったんですよ、この前来た時より。他のお店だと『え、どうして上がったの?』って聞けないけど、ここなら『先週と値段違うよね?』とか聞きやすいので」
この店では、お客に寄り添うサービスが来店動機となり、最終的に売り上げにつながることを目指しています。
(コープみえ 人事部 野田智也部長)「職員一人一人が組合員(客)の生活にどう貢献していこうか自身で考えて、パートだけだからとか、正規だけだからというところはないのかなと感じております。本人の意欲や能力があれば、しっかり活躍してもらいたい」
▽パート従業員も「正社員と同じ待遇」に
非正規社員の賃上げのため、大胆な経営改革を行ったところもあります。
「ローストビーフを準備しています」
新潟のホテルで10年以上パートとして働くフィリピン出身の牛木セセリアさん。このホテルで正社員と同じ待遇にするため、全てのパート従業員に始めたのが…
家族手当に食事手当、さらに住宅手当など毎月2万円を超える手当てを支給しているのです。
(日本在住28年 牛木セセリアさん(53))「多くもらって本当にありがたいです!感謝します!」
他にも…
Q. 冬のボーナスはいくら?
「3万6千いくらかな」
ボーナスや社会保険についても正社員と同じ基準に改善したといいます。なぜ、こうしたことが実現できたのでしょうか。大きな原資となったのが…コロナで観光客が激減したことを逆手にとり、3年前、もともと外注していた清掃業務を全て取りやめ、社内で行えるよう組織改革を行ったのです。
(ホテル双葉 小林秀雄専務)「みんながコロナの中で頑張って、色々な新しいことにチャレンジして削減したりとか努力したものに報いたいと思って。減った分を手当てに上乗せしたりという形で、原資を作らせていただきました」
非正規社員の待遇改善に乗り出したのには訳が…
1月に行われた調査では、ホテル業界の人手不足の割合は、2年前に比べおよそ5倍に増加。宿泊客が戻る中、深刻な人手不足に悩まされていました。こちらのホテルでも、およそ2割がパートなどの“非正規社員”。その人材を確保するため、“実質的な賃上げ”が不可欠でした。
(牛木セセリアさん)「なんとか4~5万くらいを仕送りして、色々ローンとか私も払っているので…」
手当てにより、およそ10%収入が増えたセセリアさん。母国フィリピンで暮らす91歳の母親への仕送りも以前に比べ楽になったといいます。
(牛木セセリアさん)「ありがたい、ほんとすごくありがたい。」
手当て以外にも、結婚や産休で離職する従業員が多かったため、勤務体系も大幅に見直したといいます。
(ホテル双葉 小林秀雄専務)「パートさんに移ったり社員に戻ったりっていうのを柔軟にできることによって離職率がすごい低下した。冬に入ってからお客様に大変お越しいただいておりまして、少しずつコロナ前に近づいております。次は今年の4月に賃上げを考えております」
3月5日『サンデーステーション』より
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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