“人災”の可能性も…背景に「ゼロコロナ解除」?中国炭鉱で崩落 5人死亡48人不明(2023年2月23日)

“人災”の可能性も…背景に「ゼロコロナ解除」?中国炭鉱で崩落 5人死亡48人不明(2023年2月23日)

“人災”の可能性も…背景に「ゼロコロナ解除」?中国炭鉱で崩落 5人死亡48人不明(2023年2月23日)

中国内陸部の内モンゴル自治区にある炭鉱で22日、大規模な崩落事故が発生しました。これまでに5人が死亡し、48人が行方不明となっています。

救助された作業員:「仕事が始まってからすぐです。午後1時15分ごろ、山から石や土が落ちてきた。状況がますます厳しくなってきて、撤退しようと決めたが間に合わなかった。あっという間に地すべりが発生した」

崩落した範囲があまりにも広いため、各地から動員がかけられ、救助作業は夜通し行われました。

救助活動担当者:「11の救援隊、470人以上の救助隊員が現場に駆け付けています。医療スタッフも40人余り現場にいます。午後6時44分ごろ、また規模が大きな地滑りが起きた。救助活動もやむ得ず中断し、緊急案を検討しています」

各地から集り、救助活動を行っている人は900人に上るといいます。

中国では石炭の増産に向け、大号令がかかる中での崩落事故。習近平・国家主席は事故後、異例の速さで救出に全力をあげるよう指示を出しました。

崩落の瞬間を捉えた映像には、斜面そのものが滑り落ち、谷を土砂が埋めていく様子が映っていて、いわゆる“地滑り”が起きたように見えます。

この炭鉱は“露天掘り”と呼ばれ、地面を掘りおこすやり方で、比較的事故は少ない手法とも言われています。

何が起きたのか…専門家に見解を伺いました。

九州大学・松井紀久男名誉教授:「中小の炭鉱だと、安全に対する配慮は少ない(場合もある)気がする」

こうした事故は起こり得るとしながらも、指摘したのは安全管理でした。

松井名誉教授:「今回、50人超が被災した過程で、これまでに小規模なものを何回か起こしているのではないか。亀裂ができる状況がよく生じる、炭鉱の露天掘りで。現在、採掘している斜面の岩石が崩れていったのではないか。モニタリングして、岩盤を日常的にチェックして、安全であるかどうかを確認しているが、うまいところに計測のポイントを設けないと、そこで引っかからなければ、兆候が出ていても気付かなかったということもある」

2015年に撮影された現場の衛星画像を見ると、作業車が通る道もさほど整備されておらず、採掘が進んでいたようには見えません。

この時から数年で、広い範囲が一気に掘り進められたことになります。

今回の事故が急ぎ過ぎたゆえの人災なのか、それとも、もともと安全管理が緩いがために起きた事故なのかは分かりません。

ただ、内モンゴル自治区の炭鉱では、この10年でも毎年のように事故が起きていて、亡くなった人は200人を超えています。

中国共産党指導部は、事故直後にすぐ声明を発表し、当局は炭鉱の担当者を逮捕しました。

習近平主席:「あらゆる手段を用いて、行方不明者の捜索救助を行わなければならない。全人代を控え、各部門は、社会の大局の安定を確実に守らなければならない」

このスピード感には理由がありそうです。

中国総局・冨坂範明総局長:「事故を受け、習近平国家主席は異例の速さで、救出に全力を挙げるよう指示を出しました。背景には、来週から北京で重要会議、全人代が始まることがある。党大会でも再三強調された『安全』の確保は、習政権にとっての最優先課題で、自らが先頭に立って救出を指揮する姿勢をアピールすることで、全人代を前に、批判の矛先が政府に向かうことを防ぐ狙いがある」

【炭鉱崩落の背景は】

事故の背景には、中国特有のエネルギー事情が関係している可能性があります。

中国の発電能力の内訳を見ると、石炭などを使った火力発電が全体の51.9%を占めています。

世界のエネルギー分野に詳しい、多摩大学・真壁昭夫特別招聘教授に聞きました。

中国の石炭産出量を月ごとに見ると、

2020年9月、国内の大気汚染問題もあり、習近平主席は国連で「カーボンニュートラル実現」を表明しました。

その後、石炭に変わるエネルギー転換の方針を打ち出して以降、石炭の産出量は2021年夏ごろまで、減少傾向でした。

ところが、2021年9月、石炭の生産を再開させ、産出量は増加傾向に転じています。

この背景には、新型コロナ“デルタ株”で世界の物流が停滞し、石炭の輸入量が減少。また、中国国内で洪水などが起き、国内の石炭産出量も減少し、深刻な電力不足を招きました。

それ以降、石炭の産出量は高いレベルを維持してきました。

ただ、去年は『ゼロコロナ政策』で電力需要が抑えられていたので、この程度で済んでいました。

ゼロコロナを解除した今年1月以降は、電力の需要がさらに高まっていて、産出量はさらに増えるのではないかと、真壁教授はみています。

事故が起きた採掘現場では、春節の休みを返上してまで採掘をしていたということです。

真壁教授:「エネルギー転換には、早くて数年かかることがある。中国のエネルギー消費量は莫大(ばくだい)で、石炭依存は当面続く可能性が高い。必然的に炭鉱の崩落事故のリスクも伴うことになる」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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