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平和教材から『はだしのゲン』削除の理由 広島市教委「本質に迫る時間が短くなる」(2023年2月16日)
広島市立の小学校から高校までの平和教育で使われている教材では、原爆投下前後の生活を描いたマンガ『はだしのゲン』が使われています。
しかし、4月からの教材では、削除されることが決まりました。いったいどんな事情があったのでしょうか。
世界で初めて原子爆弾が投下された広島。戦争と被爆、そして、その後の体験をどう後世に伝えていくのか。78年という歳月が過ぎ、当事者の声はますます届きにくくなっています。
被爆の現実を描いた『はだしのゲン』。もとになっているのは2012年に亡くなったマンガ家・中沢啓治さんの実体験です。
マンガを原作に、これまで何度もアニメやドラマが作られてきました。
それは、この体験を伝えなければと多くの人が考えたがゆえです。
亡くなる数カ月前、中沢さんは広島市内の小学校を訪れていました。
中沢啓治さん(当時73歳):「みんな家族も亡くなりました。本当に戦争と原爆がなかったら、散り散りバラバラになって別れることはなかったけど、それらの悔しい思いを『ゲン』の中で織り込んで、一生懸命描いてきました」
被爆地として平和教育に力を入れてきた広島市。被爆体験の風化が懸念されるなか、市立の学校では10年前、小中高一貫の平和教育プログラムが始まりました。
授業で活用されている『ひろしま平和ノート』。小学3年生向けの教材で取り上げられているのが『はだしのゲン』です。
ところが、市の教育委員会は、この4月から教材として使わないことを決めました。
広島市教育委学校教育部・高田尚志課長:「理解させるのに、さらに教材を作らないといけない。時間をかけて説明しないといけない。“困り感”というか、授業での課題を(教員が)挙げていた。そこは致し方ない」
焦点となったのは、原爆が落とされる前、主人公のゲンと弟が家計を助けるため、街角で浪曲のまね事をして小銭を稼ぐ場面。そして、栄養不足で倒れた身重の母親に食べさせようと、池のコイを盗むシーンです。
広島市教育委学校教育部・高田尚志課長:「なぜコイを盗まないといけない状況になったのか。まず浪曲がどういうものか。子どもたちに説明しなければいけない。それをどういう場面でやったのかとか、それでお金を稼ぐという経緯、なぜ2人がそこに至ったか。小学3年生なので、ある程度ゆっくりと事実をつかませて、感じさせて、考えさせるという作業が必要なので、少し遠回りするというか、本質に迫る時間が短くなるということが生じる」
原爆投下で自宅が焼け、下敷きになった父親がゲンに逃げるよう迫るシーンも合わせ、教材では扱われないことになりました。
教材に使われることが決まった時、喜んでいたという中沢さん。突然、使われなくなったことに、妻のミサヨさんはこう話します。
妻・中沢ミサヨさん:「びっくりしたところなんですけどね。何が何だか。何がいけないのかなと。説明がほしい。何の連絡もなかった。描いている途中に、ふとペンが止まるんですよ主人は。亡くなる時の熱さ、焼けて死んじゃう熱さとか、描いていてつらくてね。胸が張り裂けそうだと言ってました。戦争が起きるから核兵器を使うのであって、ボタンを押して原爆が落ちたらどうなるかっていうこと。じっくり知ってほしいですね。それだけですね」
広島市では4月から、原爆で一瞬にして家族を失った被爆者の体験に教材を差し替えるといいます。
広島市教育委学校教育部・高田尚志課長:「45分の授業のなかで、子どもたちに何を身につけさせるか。ふさわしい教材という視点で差し替えを考えた。『はだしのゲン』自体をまったく否定することではない」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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