《ダッシュして気球を空へ》オゾンホールを世界初発見!南極で調べると地球の未来がわかる?(1998年)【映像記録 news archive】
雪上車の上に乗って現れたのは重さ350キログラムの物体、上空の大気を集める観測装置で、クライオジェニックサンプラーと呼ばれます。
中にはマイナス269℃の液体ヘリウムが入っていて、集めた空気を冷凍保存します。
1998年1月3日、第39次観測隊がこれを飛ばす様子です。
観測装置を吊り上げる気球は、薄いポリエチレン製で直径は40メートル、長さは60メートルもあります。
破れないように慎重に広げ、中に軽いヘリウムガスを送り込み、膨らませます。
観測隊員:それではガス注入開始。
しばらくすると、気球が立ち上がります。
観測隊員:頭部支障なし。注入再開。
この気球が採集する大気は日本に送られ、そこに含まれる二酸化炭素やメタン、亜酸化窒素といった温室効果ガスや、オゾンホールができる原因の物質であるフロン類の濃度を測定、分析します。
観測隊員:それでは放球いたします。3、2、1、放球。
観測隊員:はい、ありがとうございました。
気球は上空30000メートルまで上昇し、その途中11のポイントでそれぞれの高さの大気を観測装置に取り込みます。
2時間あまり後には観測を終え、装置を落下させました。
どこに落ちたのでしょうか。
ありました。基地から43キロ離れた氷の海の上に発見。
3日後、
しらせ:よーし、オッケーオッケー、オーケー。
観測船「しらせ」が駆けつけ観測装置を引き揚げます。
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地球を覆うオゾン層が南極上空で薄くなる現象、つまりオゾンホールは、1982年、日本の南極観測隊が初めて観測しました。
これは日本の南極観測の中でも最大の発見の一つです。
当時、気象庁から参加していた忠鉢繁さんが発見しました。
これは、1993年に忠鉢繁さんにインタビューしたときの映像です。
オゾン観測では、分光光度計という計器を使って地上から観測するほか、気球にオゾンゾンデを取り付けて上空からも観測します。
地上からの観測では、それまで太陽光による観測だけだったものを、月光による観測を初めて本格的に行いました。
一日が昼だけになったり夜だけになったりする南極で、初めて1年を通じての観測に成功したのです。
それが「世界初」の発見に、そしてこの時の発見がきっかけになって、世界的なフロン規制につながりました。
中鉢さん:観測そのものは1982年の2月から始まりまして、ずっと観測していったんですが、9月にですね、観測していたオゾンが急に小さな値を示すようになったんです。
少なくとも、現地では原因不明です。何かがおかしいと。
本当にオゾンが少なくなっている可能性もありましたし、オゾンは少なくないんだけれども何か観測上の手違いがあってそういう変な値を観測してしまった(可能性も)。
私たちの間違いか機械そのものの間違いかわかりませんけれども。
私たち日本が最初に、オゾンホールというか、オゾンホールが昭和基地にかかった時の状況をキャッチしたと言うんですかですね、正確にはそういうことだと思うんですけれども。
私たちの前にはそういう話はないんです。
南極上空に限らず、オゾンがはっきりと減っているということを示した発表というのはなかったんですね。
中鉢さん:ずっと観測していきまして、いちばん望ましい答えというのは、2030年とか50年とかになるんですけど、フロンの規制の効果が効いてきまして、ずっと大気中のフロンの濃度が下がってですね、その時にオゾンホールがまた少しずつ小さくなってくるというのが、理想、そのようになるだろうと考えられているんですけど。
(フロンが)きょうやめたからと言って、あしたゼロになるわけではありませんし。だいたい100年ぐらいたつとゼロにきわめて近くなるかなというようなことなんです。
少し効果が出てくるのが20年後、フロンガスの濃度が減り始めたかなあと思うのが、20年後とか30年後とかそういうことになってくると思うんですが。
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こちらは、2003年に昭和基地で行われた観測の様子です。
佐藤さん:いま風、何メートルでしょうか。
無線の隊員:13くらいです。
佐藤さん:13点なんぼですか
無線の隊員:13.1です。
佐藤さん:了解。じゃあ放球態勢に入ります。
作業しているのは、国立極地研究所に所属していた佐藤薫さん。
この年、2003年は、日本を含む7か国の9つの南極基地から、このようなゴム製の気球を何十個も打ち上げてオゾン層破壊のメカニズムを解明するための、共同観測が実施されました。
実はこの時、デリケートなゴム気球が撮影カメラに当たらないか、気になっていたそうです。
無線の隊員:風速13.4です。
佐藤さん:了解、行きます。
<放球>
佐藤さん:あ、成功です。はい。
撮影スタッフ:成功?
佐藤さん:はい。
撮影スタッフ:あー。よかった。
撮影スタッフ:どうでした?打ち上げてみて。
佐藤さん:大変でしたね。大変でした。
気球が左上のほうへ上がっていきます。
気球による観測のほか、人工衛星などによる観測とも合わせ、オゾンホールが史上最大規模に発達したことが確認されたのです。
オゾン層回復のための地道な努力がつづき、その後は改善が見られ始めます。
そして今年2023年、世界気象機関は、2066年ごろに、南極のオゾン層が1980年ごろの水準に回復するという見通しを発表しました。
オゾンホールの発見からでも70年以上。まさに百年の計です。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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