タイで空前の「錦鯉ブーム」 “愛好家”急増…国民的スターも「かかせない存在」【Jの追跡】(2023年1月29日)
「泳ぐ宝石」と称される「錦鯉」。「日本中で生産されている錦鯉の8割は、海外に出荷されている」ということです。そこで追跡スタッフは、愛好家が増えているというタイへ向かいました。タイで起きているという錦鯉ブーム。その驚きの現象を追跡しました。
■「所得向上」「円安」で 愛好家が急増
この日、福岡県久留米市にある養鯉場(ようりじょう)では、夜明け前から錦鯉の出荷作業が行われていました。
技術の進歩により、錦鯉を入れた袋に酸素を注入することで、30時間程度の輸送が可能になっています。
この日の出荷先は、日本からおよそ5000キロも離れたタイ。数千匹の錦鯉がトラックに積み込まれます。
尾形養鯉場・尾形学代表取締役:「じゃあ気を付けて行ってくれよ」
朝日が昇るなか、一路、福岡空港へ。錦鯉に刺激を与えないよう、慎重に作業が進められていきます。
果たして、日本の錦鯉はどのように飼われているのでしょうか?追跡取材班は、錦鯉を追ってタイへ向かいました。
バンコクから車で2時間。到着したのは、東京ドームのおよそ2倍の広さがあるタイ最大規模の養鯉場。200個もの池に10万匹以上の錦鯉がいるといいます。
安いもので、1匹数千円、大きなサイズになると、1匹数十万円はするといいます。
そして、久留米の養鯉場から出荷された錦鯉は、無事に到着し元気に泳いでいました。
従業員一同:「サワディカップ(こんにちは)」
社長のニミットさん(51)によると、錦鯉がタイで爆発的に売れているのは「コロナ禍」がきっかけだといいます。
巨大養鯉場を経営・ニミットさん:「コロナ禍で『おうち時間』が増えたから、錦鯉を飼うタイ人が急増したんだよ」
そして、これまで錦鯉の愛好家といえば、欧米や中国などの富裕層に限られていましたが、年々、平均所得が上がっているタイなど東南アジアで、最近の「円安」を受け愛好家が急増したのだといいます。さらに…。
ニミットさん:「錦鯉は見た目の美しさもさることながら、タイでは古くから『幸運の魚』として知られているんだよ」
■「錦鯉は幸運の魚」飼い始めてから業績↑
そこで、実際に「錦鯉のおかげで大成功した」という愛好家のお宅へ向かいました。
まるで白亜の宮殿のような自宅。ガレージには、高級車が何台も。そして自宅の庭には、25メートルはあろうかと思われる巨大なプールがあります。立派な錦鯉が何匹も泳いでいました。
持ち主は、パイサーンさん(55)。錦鯉を飼い始めたのは20年前。自宅の庭には、錦鯉のために造った池が7つも。水の冷却装置は数千万円もするそうです。
なぜ、ここまで錦鯉にこだわるのでしょうか?
パイサーンさん:「錦鯉は、私にとって『幸運の魚』なんです」
タイで繊維関係の会社を経営するパイサーンさん。錦鯉を飼い始めた途端、会社の業績が伸びたのだといいます。
パイサーンさん:「錦鯉のおかげで、会社の業績が上がったのは確かです。だから私は、錦鯉の力を信じています」
■若い世代でブーム SNSで広がる“錦鯉の輪”
さらに、タイでは今、ある変化が起きています。
これは、錦鯉の安売りセールの様子。1匹数百円からという破格の値段に、毎回多くの若者たちが押し寄せるそうです。
愛好家:「錦鯉の魅力は体形と模様!カワイイ!」「庭に池を掘って錦鯉を飼うのが今、はやっているんだよ」
これが、この男性の自宅の池。実は、若い世代でブームだというのです。一体、どんな若者が錦鯉を飼っているのでしょうか?
自宅を訪ねると、庭の池に立派な錦鯉がいました。持ち主は、バンコク市内でインテリアデザイン会社を経営するデールさん(36)です。
デールさん:「僕が好きな錦鯉の品種は『昭和』だね。白と赤と黒のバランスが最高なんだ!錦鯉は日本の芸術品だよ!」
なぜ、タイの若い世代で、錦鯉がブームになっているのか聞いてみました。
デールさん:「インターネットやSNSで、錦鯉仲間とつながれることが大きいよ。そこで色々な情報を交換するんだ」
SNSを通じて広がる“錦鯉の輪”。実はデールさん、錦鯉愛が高じて、大切に育てた錦鯉で数々のコンテストで賞を獲得するほどに。
今月下旬、久しぶりに日本に行くというデールさん。目的はもちろん、錦鯉の購入です。
デールさん:「今回の予算は100万円くらいかな。すてきな錦鯉と会えるといいね」
■タイの国民的スターも! 一等地に養鯉場を建設
そして今回、追跡取材班は、錦鯉を心から愛するタイの超大物に会うことができました。その人物とは…。
タイの国民的スター ウィリーさん(52):「テレビ朝日スーパーJチャンネルをご覧の皆さん、初めまして!ウィリーです!」
ドラマや映画の俳優からお笑い番組まで、テレビ番組のレギュラーは週7本というウィリーさん。タイでは誰もが知るスーパースターです。
自宅の庭で錦鯉を飼うことが子どものころからの夢だったというウィリーさん。なんと5年前に、バンコクの一等地に錦鯉御殿のような養鯉場を建設。自ら仕入れた錦鯉を販売しています。
ウィリーさん:「仕事で疲れた時やつらい時、錦鯉は僕の心を癒やしてくれる存在なんだ。錦鯉がいなかったら、今の僕はいなかったかもしれない。それくらい僕には、かかせない存在なんだよ」
日本の文化、錦鯉に魅せられたウィリーさん。コロナ禍前は、毎年のように日本を訪れ、自ら養鯉場を回り、自分の目で選び抜いた錦鯉を購入していたといいます。
ウィリーさん:「僕が日本に行くのは錦鯉を買いに行くのではなく、錦鯉の職人たちから『芸術品』を盗みに行くんだよ」
ウィリーさんが特にこだわっているのが…。
ウィリーさん:「錦鯉で一番重要なのは『ボディー』なんだ。『ラグビーボール』のように、ふっくらとした美しい流線形が理想だね!」
さらに…。
ウィリーさん:「次に重要なのは『肌』。例えば『紅白』という、この品種の錦鯉は、牛乳のような白さが重要なんだ」
ちなみに、この錦鯉は「緋写り」という品種。体長は94センチで、タイでの販売価格は45万バーツ。日本円でおよそ180万円です。
ウィリーさん:「日本のお相撲さんみたいに、たくさんご飯を食べるからエサ代が大変だよ!」
農林水産省は去年12月、「錦鯉」を海外への輸出重点品目に新たに追加。2025年には97億円の輸出額を目指しています。
尾形代表取締役:「錦鯉は日本の伝統文化ですからね。海外の方に認められて、それぞれの国で愛好家に喜ばれているというのは本当に誇らしいですよね」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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