【報ステ】ウクライナ支援「今が転換期」リミット迫る“ドイツ製戦車提供”の重要度(2023年1月20日)

【報ステ】ウクライナ支援「今が転換期」リミット迫る“ドイツ製戦車提供”の重要度(2023年1月20日)

【報ステ】ウクライナ支援「今が転換期」リミット迫る“ドイツ製戦車提供”の重要度(2023年1月20日)

ドイツで20日、国際会議が始まりました。この会議での決定が、今後のウクライナの命運を左右するかもしれません。

最大の焦点は、ドイツ製の主力戦車『レオパルト2』をウクライナに渡すかどうかです。

◆ロシアの軍事・安全保障政策が専門の小泉悠さんに聞きます。

(Q.ウクライナはなぜ、戦車を必要としているのでしょうか?)

戦車は、軍用車両のなかで一番、攻撃力が強くて、打たれ強くて、どこまでも走っていける能力がある、走攻守そろった兵器です。

ロシア軍はこの種の装備をものすごく持っているので、ウクライナ軍がこれから占領された領土を取り返そうとするなら、それなりの数の戦車、それに兵隊をついていかせるための歩兵戦闘車、後方から支援するための大砲が、従来よりも多く、なるべく性能が良いものが必要です。そのため、ドイツ製のレオパルト2を欲しています。

(Q.どの地域がポイントになりますか?)

戦争なので予想は難しいですが、ザポリージャ州に部隊を大量に投入して、メリトポリなどを取ると、ロシア軍を西側と東側に分断できます。ただ、ロシア軍も当然、予想しているので、守りを固めていますし、天候などのタイミングもあります。今、実際に戦闘をしている東の方か、ザポリージャ州のどちらかだと思います。

(Q.季節的な要因はありますか?)

戦車は50~60トンあります。地面がぬかるんでいる時期は、沈んでしまって、幅広く展開して戦うことができません。そのため、ソ連は戦車をなるべく軽くつくることを考えましたが、ドイツの戦車は重たいです。

また、もともと持っていない戦車を持ってくるので、訓練にも時間がかかります。いずれにしても、今すぐに使える可能性は低くて、どんなに早くものになっても、今年の夏ぐらい。地面が固まって安定する夏に、ものになっていれば良いと考えていると思います。そのためには、今すぐドイツの戦車を渡す決定をしてもらわないと、夏に間に合わないということです。

(Q.ドイツのレオパルト2が提供されると情勢が変わる可能性がありますか?)

そうですね。今、主要国が持っている戦車は第3世代で、そのなかで最も性能が良いと言われているのが、レオパルト2と言われています。

もう1つは、数がたくさんあります。今、ヨーロッパで自前で戦車がつくれる国は、ドイツ・イギリス・フランスですが、イギリスとフランスの戦車は数が多くありません。これに対して、ドイツのレオパルト2は、欧州15カ国に2000両以上あるため、供与してもらえる母数が多いため、ウクライナが必要とする300、あるいは500という数が手に入るだけの余力があります。

(Q.ドイツの世論調査では、戦車をウクライナへ供与すべきかという質問に対して「賛成」が46%、「反対」が43%と分かれています。ドイツの動きをどうみますか?)

ドイツの専門家ではないので、分かり難いところがありますが、ウクライナでの戦争が始まる当初からずっと、ドイツは仲介役としては一生懸命やります。けれども、戦争が始まったら、なるべく前面に出ていってウクライナを支援することはやりたくないという姿勢は一貫していると思います。

ロシア側からみても、ドイツはずっとビジネスパートナーであり、ヨーロッパのなかでは比較的、話せる国だというイメージがずっとありました。ドイツもいずれ「ロシアと関係改善することになるだろう」という気持ちがどこかにあって、その時に「お前が一番最初に戦車送ったよな」と言われたくない。そのため、「まずはアメリカがたくさん送ったら、次にドイツが続く」というショルツ首相の発言になると思います。

(Q.ドイツで行われている国際会議は重要なタイミングになりますね?)

そう思います。ドイツはドイツで、戦後を見据えた考えがあると思いますが、今ロシアがやっていることは、冷戦後最大の欧州秩序の危機をもたらしています。下手をすると、もっとグローバルな意味を持っているかもしれません。

ドイツとしては、戦後や今後の商売のこともあるでしょうが、それは平時の考えであると脇に置いて、もうちょっと有事モードになっても良いのではないかという感じを、安全保障の専門家として私は持ちます。アメリカや、ロシアと隣接していて脅威認識が非常に強いバルトの国々や、ポーランドなどはそういう感じを強く持っていると思います。まさに今、皆でドイツを取り囲んで「いい加減認めろよ」という話をしている局面だと思います。

もしこれで、ドイツが「売った戦車をウクライナに送っても良い」という話になるのであれば、ウクライナが以前から求めていた戦闘機や、射程が長いミサイルまで踏み込んでいく可能性もあります。西側の支援が質的に大きくステップアップした契機と言えると思います。それに対してロシアがどう出るのか。色んな問題をはらんだ週末だという感じがします。

(Q.ロシアの出方は読めませんね?)

読めないです。ただ、核使用はそんなに簡単ではないということは、この11カ月で分かってきました。動員も、前に動員した大部分が戦場に投入されていません。恐らく、それをやってから、第2次動員をするか決めます。そのため、軍事的な対応は、今すぐ取れるカードは意外と少ないと思うので、政治的なシグナルを出すとか、エネルギー面など非軍事的な部分で、ロシアのエスカレーションはまず始まるのではないかと、現状はみています。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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