【報ステ解説】ストーカー規制法の課題「“禁止命令”後、予兆あれば対応できた」(2023年1月18日)
福岡市の博多駅前で川野美樹さん(38)が殺害された事件で、警察は18日、元交際相手の寺内進容疑者(31)を殺人の容疑で逮捕しました。
川野さんは、以前から、交際トラブルにまつわる被害を警察に訴えていました。
川野さんが、初めて警察に相談を寄せたのは、去年の10月21日。このときはまだ交際中だった寺内容疑者に「携帯電話を盗られた」「相手と別れたい」というものでした。
3日後、川野さんは「別れを告げたが、相手が納得しない」と再び相談。警察は、この日のうちに寺内容疑者から事情を聴いたうえで、警告しました。
その約ひと月後、川野さんは、寺内容疑者が職場に来たことや、電話がかかってきたことなどを改めて相談。11月26日、警察は、寺内容疑者にストーカー規制法に基づき、つきまとい行為などを禁じる“禁止命令”を出します。12月に入ってからも、警察は、川野さんの自宅周辺を重点的に警戒し、川野さんには、避難や転職を促したそうです。
福岡県警捜査一課・有馬健一課長:「今回、警察が取った措置は、法に基づき適切に対応したと考えています。結果として、このような形になりましたけれども、非常に残念でならない」
1999年、埼玉県桶川市で、大学2年生の女性が、元交際相手らから脅しや嫌がらせなどを受けた末、路上で刺され、殺された『桶川ストーカー殺人事件』。
この事件をきっかけに作られたのが、『ストーカー規制法』です。脅迫や暴行など、事件に発展しなければ取り締まれなかった“ストーカー行為”は、2000年以降、行政処分や摘発の対象となりました。
2012年、神奈川県逗子市で、30代の女性が包丁で刺され、殺害される事件が発生。元交際相手だった加害者は、女性に1400通以上のメールを送っていました。このときメールを送りつける行為が規制されていないことが問題となり、翌年、メールの送信も“つきまとい行為”に加える改正法が成立します。
2016年には、芸能活動をしていた女性が、ブログに執拗に書き込みをしていたファンに刺され、重傷を負わされました。この事件のあと、SNSでメッセージを送る行為も規制対象とする2度目の法改正がなされます。
2021年には、GPSで相手の位置情報を得る行為も規制の対象となります。3度目の法改正です。しかし、おととし1年間のストーカー相談件数は1万9728件。この10年間、2万件前後で推移していて、後を絶ちません。
◆元埼玉県警捜査一課の佐々木成三さんに聞きます。
11月26日、川野さんから禁止命令の申し出があり、警察は、その日に寺内容疑者に禁止命令を出します。その後、12月9日、警察に寺内容疑者から「川野さんから絵文字が送られてきた」と連絡が入りますが、川野さんは否定しています。
(Q.これは、どういう行動だと思いますか)
警察は、禁止命令を即日に出しています。これはかなり緊急性があると。禁止命令というのは、さらに、そこからストーカー行為をすると違反行為となり、逮捕することができます。かなり厳しい罰則ですので、そこで、容疑者は動くことができなくなった。一つでも、被害者の情報がほしい。だから警察に嘘の情報で、被害者の情報を得ようとしたのではないかと感じます。
警察は、10日間、川野さん宅を重点警戒。川野さんに避難や転職を促します。そして、今年1月6日、経過の確認をしましたが、異常はなかったといいます。
(Q.12月9日から1カ月以上が経過して事件が起きました。少し空白がありますが、どう見ますか)
警察から警告や禁止命令が出された場合、90%以上は、犯罪の抑止となります。この1カ月間、容疑者に動きがなかった。警察は、もし、法に触れる行為があったら、すぐ逮捕するという姿勢を示していましたが、何も動きがない。何かしらの予兆などがあれば、対策は取れたかもしれませんが、その対策が取れない状況だったのではないかと感じます。
(Q.動きづらい面はあると思いますが、何か対策は取れないのでしょうか)
現在の法の整備上では、警告、禁止命令を出して、緊急通報装置も貸与しています。何かしら対策の取っていたなかで、このような犯罪が起きたのは残念でなりません。ただ、その体制を警察がどこまで維持すればいいのか。24時間、被害者を守るというのは、警察官からの人数からして無理です。一歩、踏み込んで、警察が強制力を持ってできるとなると、法の整備を考えないといけないと思います。いまのところ、警察は護身用のものは貸与していません。しかし、私はこの時代になったので、スタンガンや催涙スプレー、力が弱い女性が狙われたときに逃げる隙を作るものが必要だと感じています。
(Q.もしものことが起こる前に警察が加害者に踏み込んだ対応を取ることはできないのでしょうか)
相手が逆上してしまうと思って、通報できない被害者が多いです。警察に、被害者の温度感というのがうまく伝わらない場合もあります。恋愛感情のもつれは、民事ではなく刑事事件だということで、刑事事件に発展する場合、早急に検挙する体制を整えています。警察も先手先手を取っています。だから、身の危険を感じたら、すぐ警察に相談してもらいたいです。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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