変わる「江戸前の主役」背景にあるのは“温暖化” 冬の東京湾で次々に…(2023年1月3日)

変わる「江戸前の主役」背景にあるのは“温暖化” 冬の東京湾で次々に…(2023年1月3日)

変わる「江戸前の主役」背景にあるのは“温暖化” 冬の東京湾で次々に…(2023年1月3日)

 東京湾で取れる江戸前の魚といえば、皆さん何を思い浮かべますか。ここ数年、江戸前ではある魚が主役になろうとしています。背景にあるのは温暖化です。

 12月の東京湾で次々に釣れるのは「太刀魚」。名前の由来は光沢のある刀のような体型からともいわれます。サンシャイン水族館に展示するためのタチウオの採集。元々、熱帯から温帯にかけて住んでいる魚なのですが…。

 サンシャイン水族館・三田優治さん:「今は結構、東京湾周辺とかでも冬にかけても釣れるようになってきてます」

 東京・木場の釣り船では。

 釣り客:「15本ぐらい。初めてなんですよ」「冬まで狙うようになったのは最近じゃないですか」

 クーラーボックスは太刀魚で埋まっていました。

 深川・吉野屋、高橋郷船長:「本当の東京湾、神奈川・東京・横浜沖で釣れるようになった。東京湾のもう『江戸前の太刀魚』みたいになりつつありますね」

 「江戸前の主役」が今、変わりつつあります。江戸前のネタに自信を持つ「江戸前寿司日ノ出茶屋・横浜」。おすすめのおまかせ握りには東京湾で取れた太刀魚が。一方、江戸前の代表格の一つ、シャコは。

 江戸前寿司日ノ出茶屋・横浜、筑丸勝さん:「数がちょっと減っちゃってますね。市場とかでも今、出回らない。幻のシャコになっちゃいました」

 「小柴のシャコ」で有名な横浜・柴漁港の漁獲高の割合です。90年代に取れていたシャコは今、ほぼ水揚げされていません。一方で、存在感が高まっているのが太刀魚。今では半分以上になっています。

 タチウオを「ブランド」として売り出す場所も出てきています。「竹岡つりタチウオ」は1キロ超えの大物に限られ、旬はまさに今、12月から2月です。

 千葉・天羽漁協、大熊広美さん:「昔はこんなのなかった。東京湾の中にいる魚が変わってきたというか。救世主だよね」

 竹岡漁港のタチウオ漁を作り上げてきた川崎さんは漁師生活70年。東京湾を見続けてきました。

 “太刀魚”漁師・川崎勇さん(87):「取れない魚が多くなっちゃったですよね」

 70年前、タイから始めて、スズキ、シロギス。年々、魚が取れなくなり、江の島まで船を出すこともありました。苦労の連続でしたが…。

 “太刀魚”漁師・川崎勇さん:「5、6年前だね。タチ(太刀魚)が短期間で一番水揚げがあった。半年間でもって1500万円から2000万円くらいかな」

 太刀魚が驚くほど取れるようになった江戸前。なぜなのでしょうか。

 “太刀魚”漁師・川崎勇さん:「水が少しあたたかいですね」

 東京湾は、特に秋冬の水温が上がっているというデータがあります。40年前と比べるとおよそ2℃。さらに、ここ数年の温度上昇は顕著で、その要因として考えられているのが…。

 神奈川県水産技術センター・岡部久主任研究員:「黒潮大蛇行に伴う黒潮系暖水の湾内への波及があるのではないか」

 2017年から続く、日本沿岸を流れる黒潮の大蛇行。その流れの先がちょうど東京湾に流れ込みやすくなっているのです。しかもこの黒潮、温暖化の影響を強く受け、他の海に比べて2倍以上の速さで水温が高まっているともいわれています。

 神奈川県水産技術センター・岡部久主任研究員:「これは想像でしかないんですけど、温暖化というのが本当に進んで、水温がものすごく高くなってしまえば、東京湾の中がサンゴ礁のようになってしまうかもしれない。(それでも)漁業は恐らくそうなった時に取れるものを利用するのではないかなと」

 今、江戸前の主役になりつつある太刀魚。温暖化の影響で、今後さらに江戸前は変わっていくのかもしれません。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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