「過信してはだめ」運転期間“60年超”で安全性は?原発政策“転換”の背景(2022年12月22日)

「過信してはだめ」運転期間“60年超”で安全性は?原発政策“転換”の背景(2022年12月22日)

「過信してはだめ」運転期間“60年超”で安全性は?原発政策“転換”の背景(2022年12月22日)

政府は、脱炭素政策の一環として、原発の運転期間の延長や、建て替えを進める政策を打ち出しました。

元関西電力の社員で、福井県美浜町の町議だった山崎俊太郎さん(83)は不安を口にします。
山崎俊太郎さん:「本当に60年、70年いうたらね、人間の一生と同じくらいじゃないですかね。それぐらい長い間、運転をするということは、やっぱりどっかで故障は出てくる」

美浜原発の3号機は、福島第一原発の事故後に10年あまり運転を停止した後、去年、再稼働。国内で唯一、40年を超えて稼働しています。
山崎俊太郎さん:「原発がなくなったら、飯食っていけんようになる。その辺を気が付いている人と、気が付いていない人がいる」

国内には、現在、33基の原子力発電所があり、その半数を超える17基が運転開始から30年を超えています。老朽化が進むなか、脱炭素戦略を検討するGX=グリーントランスフォーメーション会議で岸田政権が打ち出したのが、運転期間の延長です。

これまで原発の運転期間は原則40年としたうえで、安全審査に合格すれば1回のみ、最長20年の延長を認めるとしてきました。これについて、審査などのために原子炉が停止していた期間は含めずに計算するとし、60年を超える運転を可能にしました。
岸田総理:「現在、直面するエネルギー危機に対応した政策を加速していくためには、国民や地域の信頼を積み上げていく。地道な取り組みも不可欠」

不安の声が上がるなか、こんな声も上がっています。
飲食業の男性(70代):「40年も前から共存、共栄でやっている。事故さえ気を付けてもらえれば、別にどうしたこともない。発電所関係のお客さんもみえるし、ここらは発電関係の人が多い」
旅館業の女性(80代):「(Q.この10年、原発が動いてなかったが)旅館のほうは、全然収入なし(Q.動いてくれると)助かります」

安全に問題はないのでしょうか。
原子力規制委員会前委員長・更田豊志氏:「何年だから危険だとか、何年だから大丈夫というものではなくて、一つ一つ、その状態をきちんと確かめて、判断していくことになる」

そのうえで、今回の停止期間中を含めないという基準に疑問を呈します。
原子力規制委員会前委員長・更田豊志氏:「“停止期間を除く”理由が、なかなかわかりにくい。やはり年を経ることによる劣化を考えるんだったら、当然、運転停止に関わらず、歴年でみていったほうが」

さらに、政府は、廃炉となった原発の跡地などに安全性を高めた新たな次世代型原発の建設を進めていくとしました。ウクライナ侵攻などが、日本にもたらしたエネルギー不足と電気代高騰が、大きく影響しています。電気代は、この1年で1000円以上、上昇。3月には、電力ひっ迫警報が出される事態となりました。

東日本大震災をきっかけに崩壊した原発の安全神話。当時の民主党・野田政権は、原発ゼロを打ち出したほか、自民党に政権が戻り、原発を再稼働していく方針が示された後も、新設は行わないとしてきました。岸田総理自身も総理になる前は、否定的でしたが、今年8月、突如として新設の検討を指示。そのわずか4カ月で示された原子力政策の大転換。推進派の経産省幹部からは、こんな声も聞こえてきます。
経済産業省幹部:「この1年電力不足や電気代の高騰を皆さん実感された。野党も強く反対できないでしょう。今なら国民の理解が得られると判断したんだと思います」

原発事故により避難を強いられた住民の声です。
農業の男性(60代):「なんで原発なしの電気の使い方ができないんだべ。『安全だ、安全だ』と言って、おろそかになっていたから、ああいう状態になった。過信してはだめだね」
コンビニ店アルバイトの男性(20代):「ちょっと前にも大きな地震もあって、また原発(事故)なったりしたら、大変なことになるだろうから、どっちかというと反対のほうかな。でも決定してしまったのなら仕方ないのかな」

独立性を持って原発の安全性を審査する原子力規制委員会は、政府が示した“運転期間延長”の方針に合わせて制度を変更しました。運転開始30年から『10年以内ごと』に審査して、延長の可否を判断していくといいます。つまり“最長60年”ルールは、事実上、撤廃され、60年を超えた原発も認可されれば、運転可能になります。

ただ、規制委員会の山中委員長は21日、「10年以内ごとの審査は、現在よりも厳しくなる。60年以降の審査については、これから議論したい」と話しています。

2011年の原発事故当時から取材を続けているテレビ朝日社会部の吉野実記者は「“最長60年”を延長するのは、政策の大転換だが、規制委は岸田総理が原発運転延長の方針を示してから、4カ月、5回の会議で制度の概略を決めてしまった。60年を超えて運転した原発は世界にも例がなく、どのくらい原子炉が劣化するのか誰も見ていない。規制委は、60年超の原発の審査方針について、もっと時間をかけて示すべき。“拙速感”は否めない」と指摘します。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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