“過去30年間で最大規模”英で大規模ストライキ EU離脱で労働力不足…官民で賃金乖離(2022年12月22日)

“過去30年間で最大規模”英で大規模ストライキ EU離脱で労働力不足…官民で賃金乖離(2022年12月22日)

“過去30年間で最大規模”英で大規模ストライキ EU離脱で労働力不足…官民で賃金乖離(2022年12月22日)

 深刻な物価高が続くイギリスで大規模なストライキが相次ぎ、病院などの公共サービスにも影響が出ている。なぜ、このような事態になったのだろうか。

■“過去30年間で最大規模”ストライキ参加者2万人超

 21日、ロンドン市内で賃金アップを訴えたのは救急隊員たちだ。

 救急隊員:「物価高で我々の給料では、生活費が全然足りません」「私たちは、強欲ではありません。公平な扱いと公正な給料が欲しいだけです」

 今年7月、イギリス政府は物価高に対応するため、救急隊員の賃金を4%上げた。しかし、救急隊員たちは「それでは足りない」と政府に訴え、11%の賃上げが必要としてストライキを起こしたのだ。

 現地メディアによると、ストに参加したのは救急隊員のほかに、医療にかかわる電話受付スタッフ、医療アシスタントなど、最大で2万6600人。過去30年間で最大規模だという。

■政府 英軍兵士ら派遣…スト賛同も「不安」

 そして、救急隊員らによるストは28日にも予定されていて、医療体制の逼迫(ひっぱく)を防ぐため、政府は1200人のイギリス軍兵士らを派遣した。

 救急隊員:「このボタンを押せば、皆と連絡ができます。そして、緊急支援を要請して下さい」「これは、やけど用の応急キットです。やけどを手当てしたり、けが用や救急用など、複数の種類の包帯が入っています」

 イギリスに15年在住し現在、1歳10カ月の息子がいるアサカ・テリーさんも不安を隠せない。

 アサカさん:「やっぱり小さい子どもを抱えているので、救急救命の方とか医療関係の方に、本当に必要な時に頼れる所がないというのは、とっても不安です。(スト以前も)ロンドンでは救急隊員を呼んでも、すごく時間がかかりすぎて命を救えないという状況になっているので。(ストでさらに)スタッフが足りない状態なので、本当に怖いです」

 ただ、アサカさんは医療従事者たちの訴えには賛同している。

 アサカさん:「インフレが10%なので、ストライキをしてでも自分たちの賃金を上げてほしいという意見も分かる」

■“官民で賃金に乖離”→公共部門の人がストへ

 3日後はクリスマスだが、イギリスでは多くのストライキが予定されている。

 イギリスのBBCがまとめた“ストライキ・カレンダー”だ。23日から24日にかけては、郵便事業を行う「ロイヤル・メール」がストを予定していて、クリスマスカードが届かない可能性がある。

 23日から31日の間には、空港の出入国に関する職員のストが予定されていて、クリスマス休暇や年末年始の移動への影響が懸念される。

 このような事態になってしまった背景について、ヨーロッパの経済に詳しい立命館大学国際関係学部の星野郁教授は、次のように説明した。

 そもそもは2020年イギリスのEU離脱によりイギリスで働いていた低賃金労働者がいなくなり、国内は労働力不足に陥った。働き手がいないことで民間の賃金は上がり、それに伴う人件費も上がった。さらに、ロシアのウクライナ侵攻などが拍車を掛け、記録的な物価高になった。

 そんななか近年、賃金抑制が続いていた公共部門の人たちは国の財政難などの影響で賃金は上がらず、官民で賃金に乖離(かいり)ができてしまった。

 そのため、公共部門の人たちが今、ストライキを行っているという。

■財政再建計画は? 教授「悪化に拍車かける場合も」

 こうしたなか、首相に就任したスナク氏は先月17日に大規模な増税と歳出削減を柱とする財政再建計画を発表した。

 それが、所得税の最高税率を適用する対象の拡大や光熱費抑制のための財政支援の見直しなどだ。

 こうした財政再建でBBCによると、日本円で9兆円余りの歳出削減を行うとしている。

 国民の負担が大きいなかで、公共部門の賃上げは難しいのではないかとみられている。

 星野教授は、スナク首相の政策について「ただでさえ経済が弱っている状態で緊縮政策をすると、イギリス経済の悪化に拍車を掛ける場合もある。労働力不足もすぐに解消できる策がないため、しばらく経済低迷が続くのではないか」とみている。

(「大下容子ワイド!スクランブル」2022年12月22日放送分より)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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