総理「現状は不十分」歴史的岐路に“反撃能力”保有へ 防衛関連3文書を閣議決定(2022年12月16日)
政府は、安全保障戦略の大転換となる防衛関連3文書を閣議決定しました。
日本の安全保障の歴史的転換点。それを指しているのが、合計100ページ以上に及ぶ3つの文書。外交・防衛の基本方針である『国家安全保障戦略』。それに基づき防衛目標と手段を記した『国家防衛戦略』。その手段を実行するのに必要な防衛経費の総額や、装備品などがリスト化されたのが『防衛力整備計画』です。
なぜ、向こう5年間で43兆円も必要なのでしょうか。
基本方針である『国家安全保障戦略』。9年前の文書では、中国を“地域安定の懸念”と表現していたのが、
国際秩序に対する“最大の戦略的な挑戦”と変わりました。中国への言及がロシアや北朝鮮よりも先に来ていることから、日本の安全保障の根幹に中国が活発化させている海洋進出や軍拡があることは間違いありません。
今回、敵のミサイル発射基地などを攻撃する『反撃能力の保有』が初めて明記されました。
アメリカ軍の主力巡航ミサイル『トマホーク』を購入する計画。国産ミサイルを改良し、攻撃能力を高める計画。日本ではほとんど研究が進んでいない極超音速ミサイルの開発にも着手する計画など、攻撃兵器の開発・整備だけで約5兆円に上ります。
岸田総理:「脅威が現実となったときに、この国を守り抜くことができるのか。極めて現実的なシミュレーションを行いました。率直に申し上げて、現状は十分ではありません。相手に攻撃を思いとどまらせる抑止力となる反撃能力は、今後、不可欠となる能力です」
あくまで抑止力としての反撃能力としたうえで、現在は、その備えが必要になっている情勢だといいます。
岸田総理:「国と国の対立、むき出しの国益の競争も顕著となり、グローバル化の中での分断が激しくなっています。国際社会は“協調と分断”“協力と対立”が複雑に絡み合う時代に入ってきています。有事と平時、軍事と非軍事の境目があいまい」
国家間の対立が、突如として“軍事衝突”に結び付く。特に、今も続くロシアのウクライナ侵攻は、こういうことが現実に起こりえることを国際社会に突きつけました。
米中の受け止めです。
アメリカ国防総省・ライダー報道官:「日本のような重要な同盟国が、他の同盟国やパートナーと同じように防衛力に投資することは、自由で開かれたインド太平洋を守り、侵略を抑止し、そして地域の安全・安定を維持することの決意表明になる」
中国外務省・汪文斌副報道局長:「日本は事実を無視し、両国関係の約束や共通認識に違反し、中国に理不尽な汚名を着せている。中国脅威論をあおり、自国の軍拡に口実を求めることは成功しない」
今回の大転換の出発点なったのが、2年前、辞任する直前に安倍元総理が訴えたこの発言でした。
安倍総理(当時):「安全保障政策の根幹は、わが国自身の努力に外なりません。抑止力、対処力を強化するために何をすべきか。新しい方向性をしっかりと打ち出し、速やかに実行に移していきたい」
当時、官邸キャップとして安倍政権を取材していた記者は、こう話します。
報道ステーション政治担当・吉野真太郎デスク:「当時、安倍総理の念頭にあったのは、北朝鮮の弾道ミサイルです。日本はミサイル防衛システムを整備してきたわけですが、2017年あたりから北朝鮮はそれをかいくぐる可能性がある実験をハイペースで実施していて、安倍総理は“防御”だけに頼ることに強い危機感を持っていました。仮に、最初の相手のミサイルを打ち落とせたとしても、日本に反撃能力がなければ、第二、第三の攻撃にさらされ続けるわけです。安倍総理は『“最大の抑止力”は、日本を攻撃すれば、手痛い反撃を受けるかもしれないと相手に思わせることだ』と話していました」
2年前の北朝鮮情勢といえば、米朝和平の道が閉ざされ、南北融和もとん挫した後です。急速に国際情勢が変化するなか、迫られた対応。それゆえに、議論と説明の不足が指摘されています。
立憲民主党・泉健太代表:「戦後のわが国の安全保障の方針が大きく転換されるということ。国民や国会に情報提供・提供も説明も論戦もない」
日本維新の会・藤田文武幹事長:「ついこの間行われた参議院選挙では、防衛に関して増税するということは、自民党、政府・与党も全く言っていない」
共産党・志位和夫委員長:「この3文書の内容は、専守防衛を完全にかなぐり捨て、日本という国を戦争国家に作りかえる。きわめて危険な内容となっている」 (C) CABLE NEWS NETWORK 2022
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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