事故前からハッチ破損か 観光船事故で国が報告書「隔壁の密閉で沈没回避できた」(2022年12月15日)
今年4月に知床半島沖で起きた遊覧船『KAZU1』の事故をめぐり、国の運輸安全委員会は15日、経過報告書を公表しました。
それによりますと、船の前方のハッチから海水が流れ込んだとみています。「ハッチが確実に閉鎖された状態でなかった」といいます。
番組が入手した事故が起きる前のハッチをとらえた写真には、4隅に取っ手があり、金具で船に固定されています。ところが、船が引き揚げられると、ハッチはなくなっていました。金具がポッキリと折れていたのです。
海水は、このハッチから船内へ。甲板の下の船倉や機関室は壁で仕切られていましたが、完全に密閉された空間ではありませんでした。隔壁に人が通れるほどの四角い穴と、直径30センチほどの丸い穴がありました。この穴に達した水は、機関室へと流れ込みました。電子制御の部品などに、海水が接触して、エンジンが停止したとみられています。
問題は、ハッチが、事故の前から壊れていていたかもしれないこと。報告書には、事故の2日前に実施された救命訓練で「確実に固定できない状態だった」との証言があげられています。
さらに、『KAZU1』は、別の運航会社が、もともと穏やかな瀬戸内海で使っていた船で、厳しい知床の海を想定して作られたものではありませんでした。そのため海が荒れると、船首の甲板に、直接、波が打ち込む状態だったそうです。
いつの時点かはわかっていませんが、ハッチが外れ、客室前の窓ガラスを直撃したとみられています。そこからも海水が流れ込んで、船の傾きは加速。船長が異変を伝えてから、20分ほどで浸水が進んだようです。
さらに、船底の損傷についてもわかったことがあります。
『KAZU1』の船底にあった損傷は、国の運輸安全委員会の報告書によりますと、7カ所、確認されています。そのうち6つの傷は、運航会社の知床遊覧船が、2つあったエンジンを1つに減らすなどの改造工事をした場所と一致していたことがわかりました。ただ、船底は二重構造になっていたため、傷は、船内にまで達していなかったそうです。報告書は「ここから浸水したとは考えられない」としています。
運輸安全委員会は「隔壁を密閉していれば、浸水の拡大を防ぎ、沈没は回避できた」としました。
いまも行方がわかっていない小柳宝大さん(35)の父親は、こう話します。
小柳宝大さんの父親(64:「きのうの(家族への)説明会でもあったが、『まだ中間報告で完全ではない。いろんなことを調査していく』と。通過点かなと思っている。もう二度と繰り返さない。きちっとした原因究明をしていただきたい」
この事故を踏まえ、運輸安全委員会は、今回のように船が穏やかな海から激しい海に転用された場合、確実にハッチが閉まるかの点検など、小型旅客船を運航する事業者に周知・指導を行うよう、国土交通大臣に意見を出しました。
ほかにも報告書では“船体構造の問題”だけでなく、運航判断の問題、安全管理規程を遵守していなかったこと、監査・検査の実効性に問題があり、事故が発生したと指摘しています。
“監査・検査の実効性”に関しては、去年、『KAZU1』の事故後、抜き打ちで確認。安全管理規程や連絡手段を適切に対処していたと評価していたことや、海上では、通信困難な携帯電話への変更を認めていたことを問題視しています。
水難学会の副会長で元海上自衛官の安倍淳さんは「携帯電話を実際にかけるなど、検査の実効性を上げることが大事。運航会社の安全意識を高める必要がある。例えば、地域の特性に合わせ、事業者同士が、連絡・チェックできる態勢を作るべき」と話します。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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