【報ステ解説】“救済法案”衆院通過 元2世信者「心から感謝」課題も…大きな2つの壁(2022年12月8日)
旧統一教会などをめぐる被害者救済法案が、自民・公明両党、立憲民主党や日本維新の会など一部野党も賛成する形で衆議院を通過しました。
8日の衆院本会議には、これまで旧統一教会による被害を訴えてきた当事者の姿もありました。
元妻が信者・橋田達夫さん:「僕らには扉は開いた。第一章のページが開いた。ここから旧統一教会に対して、まだまだ自分の気持ちを伝えていく」
元2世信者・小川さゆりさん(仮名):「被害者の話を聞いてくださった岸田総理に心から感謝。まだまだ課題がたくさん残っている部分があるので、どうか私たち被害者のことを忘れずに。どうか、これからも私たち被害者がいることを忘れないでほしい」
法案が成立した場合、どういうケースが、今後、救われるのでしょうか。
例えば、法案を求められた人が、その場から立ち去りたい意思を示したのに立ち去らせないこと。霊感などを使って、本人や家族に、現在や将来にふりかかる重大な不利益が避けられないと不安をあおったり、不安に乗じて寄付が必要不可欠だと告げることなど、困惑させて寄付させることが禁止されます。
こうした状態でした寄付は、一定の間、返還を請求できるようになります。また、借金のほか、家や土地を売って、寄付するお金を用意するよう求めることも禁止されます。ただ、あくまで、寄付をした本人の意思が必要です。本人以外の返還請求が認められるケースは、非常に限られると指摘されています。
審議の場が移った参議院でも、この点が追及されました。
立憲民主党・石橋通宏議員:「2世信者の多くが『救済されない』と訴えている事実を、どう受け止めているのかお答えください」
岸田総理:「使いにくいとの指摘があることから、法テラスと関係機関が連携した相談体制の充実を進めていきます」
立憲民主党・石橋通宏議員:「信者の多くは、長期間にわたってマインドコントロールがとけず、寄付行為を続けています。山上容疑者の母親も、今も熱心な信者と伝えられています」
旧統一教会による被害が注目されるきっかけとなった安倍元総理の銃撃事件から8日で5カ月。山上徹也容疑者(42)が困窮する姿を目の当たりにしてきた親族は、こう話します。
山上容疑者の親族:「子どもを救うために裁判を起こしても、時間がかかって間に合わない。目の前に危機があったときに、どう救済するのでしょうか。法案はあまり意味のない表面的なものにみえます」
今回の法案には、2年後をめどに見直すという規定が入っています。
岸田総理:「現行の日本の法制度のもと、どのような措置が許容されるかについて検討が必要ですが、被害救済の実効性を確保する観点から必要な見直しを行ってまいりたいと考えております」
元2世信者の小川さんは見直しについて、特に、未成年者が救われるよう議論してほしいと話します。
元2世信者・小川さゆりさん(仮名):「やはり宗教2世が、ほとんど救われない内容になっている部分もあります。親を訴えるということはハードルが高く、未成年者の場合は、ほとんどが難しくなります。非常に大きなハードルがまだある」
◆被害者救済に取り組む阿部克臣弁護士に聞きました。
阿部弁護士は、お金を取り戻すには実務的に非常に高い壁があるといいます。特に家族が取り戻すことが難しい理由として『扶養の壁』と『親権の壁』の2点を挙げます。
まずは『扶養の壁』ですが、そもそも扶養されていないと取り戻せません。経済的に自立した子どもは対象外でとなります。扶養の対象であったとしても、取り戻せるのは、最低限の生活費レベルの数万円程度になるのではといいます。例えば、親が1億円寄付した場合。戻ってくるのは生活費程度の1カ月3万円として、10年分が認められても360万円。残りの9640万円は返ってこないことになります。
次に『親権の壁』です。未成年の子どもだと取り戻すのに親の同意が必要となります。ただ、両親ともに信者の場合は難しい。親の代わりに未成年後見人をつけることはできますが、親権を停止するなどの必要があり、非常に難しいということです。
被害者救済にどの程度、役に立つものなのでしょうか。阿部弁護士は「限定的だが抑止効果はある。ただ、旧統一教会の被害者救済には、ほとんど役に立たない。早急な見直しが必要」と指摘。そのうえで「被害はお金の問題だけではない。宗教2世の児童虐待や生きづらさの問題は、今回の法律では触れられていない。2世問題に対応できる体制作りが必要」と話します。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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