「菅官房長官がいない」葉梨法務大臣を“更迭”『朝令暮改』の原因は?【報ステ解説】(2022年11月11日)

「菅官房長官がいない」葉梨法務大臣を“更迭”『朝令暮改』の原因は?【報ステ解説】(2022年11月11日)

「菅官房長官がいない」葉梨法務大臣を“更迭”『朝令暮改』の原因は?【報ステ解説】(2022年11月11日)

死刑執行をめぐる発言で批判を浴びた葉梨法務大臣について、岸田総理は11日午前中まで続投させる意向を示していましたが、午後には一転“事実上の更迭”に踏み切りました。

「またも決断が後手に回った」と、岸田総理が厳しい批判を浴びています。

葉梨康弘法務大臣:「ただいま、岸田総理に国務大臣の辞表を提出させていただきました。(Q.総理から何か言われての“更迭”ではなくて、あくまでも自分から辞意表明)もちろん一番は、国民に不愉快な思いをさせたこと。私は総理と出処進退について、ご相談を率直に申し上げて、ご相談をさせていただいてきた。そういうなかでの私の判断。(Q.辞表提出を決めたのはいつ)国会の審議では『まだ仕事をしてまいります』と答弁。審議直後でございます。(Q.きょうの午前中にも続投の意向。そこからの辞任。何があったんでしょうか)心の中では、それはもう0か100かということではなくて、辞任は大いにあり得るという思いは持っていました」

11日は、葉梨大臣にとって激動の一日となりました。

問題となった、死刑執行をめぐる「ハンコ発言」。葉梨大臣は午前8時半過ぎ、これまで何回も繰り返してきたことを明らかにしました。

葉梨法務大臣:「きのうのきょうの話ですから、何回というところまでは覚えているわけではありませんけど、複数回ということで申し上げている。(Q.これまでの全ての発言を撤回する)この件に触れた発言については、全て撤回致します」

この後、衆議院の法務委員会に出席した葉梨大臣。問題発言の回数について報告しました。

葉梨法務大臣:「確かめましたところ、東京のパーティーでは4回だと思います。あとは地元のインフォーマルな会合。そこでも複数回、同趣旨の発言をした」

立憲民主党・米山隆一衆院議員:「結局、全部合わせると5~7回だと思うが、10日に官房長官に話したのでしょうか。岸田総理はご存じですか」

葉梨法務大臣:「官房長官も総理もご存じです。10日朝の段階では、そういうお話はしておりません」

さらに、10日は「撤回しない」としていた問題発言を撤回しました。

葉梨法務大臣:「『外務省と法務省、票とお金に縁がない』などと述べた点についても、私の本意と異なる正確性を欠くものであったことから、この場で明確に撤回させていただきますとともに、不正確な発言をしたことについてもおわびを申し上げます。(10日)冒頭、撤回はしないと言ったものですから、質疑のなかで、また途中で撤回するのもいささかどうかなと思いまして。10日の参議院法務委員会を閉じた後、私もよく考えさせていただいて、そのうえで、本日の委員会で改めて、その部分は撤回をしなければいけないし、謝罪もしなければいけないと表明をさせていただいたわけです」

法務委員会は一旦休憩となり、葉梨大臣は、参議院本会議に出席。ここでも謝罪です。

葉梨法務大臣:「不愉快な思いをさせてしまったことは、私の至らなさ。謝罪のうえ、撤回させていただきました。説明責任を徹底的に果たし、国民の役に立つことができるよう、職務に全力を尽くしてまいりたい」

やじが飛び交うなか、続投に意欲を見せていました。

岸田総理も…。

岸田総理:「葉梨大臣に対しては10日、官房長官から厳しく注意をした。改めて職責の重さを自覚し、説明責任を徹底的に果たしてもらわなければならない」

再び、法務委員会に戻った葉梨大臣。質問されている最中、注意を受ける場面がありました。

立憲民主党・寺田学衆院議員:「昨日、参議院の委員会が終わった後に…ちょっと携帯見てないで聞いてくださいよ」

葉梨法務大臣:「今ね、電話がかかってきちゃった。消したんです」

携帯電話の電源を切ったのでしょうか。このあたりから、自身の進退について、説明が微妙に変わります。

葉梨法務大臣:「私自身の任免、もう総理にお預けしておりますが、私自身はしっかりと、そこのところは説明しながら、さらに法務行政の真の重要性はしっかり説明を尽くしていきたい」

そして委員会の終盤、気になる場面が。

葉梨大臣が答弁に立った瞬間、後ろの扉から入ってきた男性が、委員会室にいた女性にメモを渡します。

女性は、内容を書き写したように見えます。

委員会が終わると、女性がメモを葉梨大臣に見せました。

このころ、報道各社は、岸田総理が更迭の意向を固めたと一斉に報じ始めます。

そして、約4時間後、葉梨法務大臣は総理官邸で岸田総理と面会しました。

葉梨法務大臣:「(Q.発言撤回の範囲が広がったり、対応の問題“後手後手に…”との思いは)後手後手というよりは、私自身は10日から11日かけて、つまり情報をこちらで隠すつもりは全くありません。ただ、10日の段階では、9日の報道が出たばかり。そこまで気が回らなかった。今後、微妙な発言については、私も政治家の一員として、しっかりと確認をするなり、掌握するなり、より良い政治を目指したい。良い発言を目指したい」

本来なら、11日から東南アジア歴訪を予定していた岸田総理。急きょ、出発を延期しました。

今回は、事実上の更迭となりました。

岸田総理:「(Q.総理から“辞めた方がいい”などの進言は)葉梨大臣とは様々な話をしました。しかし結論として、丁寧に説明を尽くしてもらわなければならない。こういった指示を行い、11日の国会に臨んでもらった。葉梨大臣から辞任の申し出があった。こうした経過。私自身、任命責任を重く受け止めております。どの派閥であったとしても、こうした辞任に至ったことについて、総理大臣としての責任を重く受け止めている。ぜひ課題をしっかりと取り組み、解決することによって責任を果たしていきたい」

連立与党の公明党・山口代表は。

公明党・山口代表:「国民の信頼がなければ政権運営はできませんので、信頼を損なったことに対して、国民の期待に応えられる、仕事ができる内閣にしていく必要がある」

野党からは、総理としての資質を問う声が上がっています。

立憲民主党・泉代表:「本当に遅いなと。遅かった今回の辞任だった。岸田総理も、大臣が辞任を申し出なければ、厳重注意で済ませている。著しく総理としての決断力や考え方に欠落があるんじゃないか」

共産党・小池書記局長:「(総理は)決断と実行というが、決断しない、説明しない、実行しない。これが岸田総理かと。山際前大臣の件でも、同じようなやり方をとっている。個々の大臣が重大な問題を起こしているが、もはや岸田総理の問題だと。総理としての資質がない」

葉梨大臣の後任には、斎藤健元農水大臣が任命されました。

***

◆報道ステーション政治担当・吉野真太郎デスク

(Q.11日午前にも続投の意向を示していたが、午後になると一転。これは国会軽視とも言えると思いますし、対応がちぐはぐです。どうしてこうなったのでしょうか)

そもそも10日の段階でかばうという決断は“泣いて馬謖を斬れなかった”ということです。

そこに危機感を抱けなかった岸田総理の責任は、もちろん一番大きいと思います。

ただ、もう一つは、サポートチームの存在です。

この決断で国会を乗り切れるか。国民からどう見られるのか。そういうことをサポートチームも含めて一緒に考えなければならなかったと思います。

ある総理周辺は「まずは本人に説明責任を果たさせるのが岸田流」と話していて、サポートチームもその深刻さを共有できていなかった節があります。

(Q.岸田総理のもと、総理官邸には松野官房長官・木原官房副長官、自民党には茂木幹事長がいます。吉野デスクアは、安倍政権を長年取材していましたが、その頃と比べて、岸田総理を支える体制は機能していますか?)

一言で言うと「総理、これは持ちませんよ」と言ってくれるような、安倍政権の時の菅官房長官のような人がいないということだと思います。

菅氏の、政権の危機に関する嗅覚というのは、ものすごいものがありました。

安倍政権が良かったか悪かったかは依然、賛否両論があると思いますが、当時の官邸幹部の話では、閣僚の更迭に関しては一定の基準がありました。

今回の葉梨大臣の例でいうと、安倍政権の基準では一発でレッドカードで、菅氏や当時の官邸スタッフがいれば「総理、これは持たないと思います」ということになり、更迭の判断が揺れて、日をまたぐといことはなかったと思います。

確かに、その権限は“安倍一強”とも言われて、与党内でも反発の声はくすぶっていましたが、危機管理ということで言えば、当時の二階幹事長などが火消しをするような役割分担がありました。

(Q.岸田政権は今後の国会運営を乗り切れることができますか?)

そうとう厳しくなってくると思います。

11月下旬には、第二次補正予算の審議が始まります。

野党はどんどん勢いづき、次のターゲットは、政治と金の問題が指摘される寺田総務大臣に移っていきます。

岸田総理の任命責任にもつながっていき、政権への逆風はますます強まるばかりです。

来年は統一地方選挙もあります。

そこに向けて、人心一新で局面打開を図ることも、政権としては視野に入ってくるかもしれません。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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