史上初!投打二刀流『W規定到達』の大偉業 川上憲伸が解説“大谷翔平の進化”(2022年10月6日)
エンゼルスの大谷翔平選手は最終戦の6日、メジャーリーグ史上初めて、バッターとピッチャー、投打ダブルでの規定到達を達成しました。
メジャーリーグ全体の規定到達者の割合を見ると、バッターでは、打席に立った全選手693人のうち、規定到達者は18%の130人。特にピッチャーの到達者は、登板した全選手871人のうち、全体の5.2%の45人と、1球団に1.5人にかいません。
【今年と去年の成績】
〇バッター
今年
打率.273 本塁打34 打点95
去年
打率.257 本塁打46 打点100
〇ピッチャー
今年
15勝9敗 防御率2.33 奪三振219
去年
9勝2敗 防御率3.18 奪三振156
◆川上憲伸さんに聞きます。
(Q.今シーズン最後の登板をどう見ましたか)
進化が見えた投球が多かったです。
去年まではスプリットやカットボールが中心でしたが、今年は『スライダー』がすごかったです。6日の試合でもスライダーの投球割合は45%でした。
さらに、100マイル近い速度で、スライダーと逆方向に変化する『ツーシーム』もしっかり投げていました。バッターが2つ追うことはほとんど不可能です。
まさに今シーズンの大谷選手の進化が見えた試合でした。
(Q.大谷選手はインタビューで「守りに入っていたら、無難なところにしかならない」と攻めの姿勢を見せていましたが、いかがですか?)
姿勢もそうですが、大谷選手が求めていた二刀流を本当に達成したと思います
(Q.成績を見てどう感じますか)
大谷選手は今年に限っては、打つ方より投げる方に力を入れ、完成度を求めていたようなシーズンに思います。
ただ正直、エンゼルスは今年、打撃力が本当になく、援護がありませんでした。そのなかで15勝ですから、もう少しチーム状態が良ければ、20勝近い数字が出ていたように思います。
(Q.投打ダブルでの規定到達は、1年間トップ中のトップで走り続けることができたということになりますか)
そういうことですね。いわゆる“大車輪”でチームを引っ張っていった、まさにチームの大黒柱・エースという存在しかクリアできない数字です。
(Q.最終戦では5回途中までパーフェクトでした。マメができての降板は残念でしたね)
ただ、このマメは、大谷選手に限ってはポジティブに考えて良いと思います。
僕もずっと先発ピッチャーでやっていましたが、普通マメは作ってはいけないし、できません。
キャンプ中に新しい変化球などを試している時にマメができることはあっても、シーズン中はマメは固まっていてできないんです。
今年の大谷選手は色んな変化球に挑戦していったからこそ、マメができたんだと思います。
(Q.今シーズンの投球で、真横に曲がるスライダーは強く印象に残りましたね)
まさにバットにも当たらない、逃げていくようなスライダーです。
このスライダーは、投げているフォームが明らかにいつもと違います。ひじを下げ気味で、横から投げているようなイメージです。
フォームを変えることは、ひじにも負担がかかり、ピッチャーはあまりやりません。
大谷選手はトミー・ジョン手術から2~3年経って、今年はひじに自信を持ってトレーニングし、鍛えているから、あのフォームで投げれたのだと思います。
さらに、投げられたから良いというものではなく、思い通りの空振りが取れる。これに尽きたと思います。
(Q.ひじが下がって出てきたら、スライダーが来ると分かっていても打てませんか)
分かっていても打てないスライダーを武器にして投げていたのは、このスライダーにこだわっていたということだと思います。
(Q.今シーズンは、スライダー以外にもバリエーションが増えましたね)
ここでマメの問題が出ます。今年9月くらいから、ツーシームを投げ始めました。
あの素晴らしいスライダーがあって、普通なら「今年はこれでしっかり行こう」と思うのですが、どこかに「このスライダーを投げ続けると、身体が故障するかもしれない」ということがあって、元のスタンダードなフォームに戻した時の新しい変化球が『ツーシーム』です。
ツーシームはほとんど今まで投げておらず、指にかかる摩擦が多くなるので、最終戦ではマメができたのだと思います。
ただ、それで驚いてはいけません。その後、マメができて投げれなくなって、普通ならシーズン終わりという感じになりますが、大谷選手はツーシームを投げず、縦に落ちるスライダーに変えました。
どんどん変化球を覚えて、試合中に投げていくのは、普通では考えずらいです。
(Q.球種はシーズン中に覚えられるものですか?)
基本はシーズンオフです。来年に向けて色んな試行錯誤をして、キャンプのブルペンで実験をして、行けるとなれば試合で使えます。ただ、それもほとんど失敗で終わります。
大谷選手が成功している理由は、キャッチボールが全てだと思います。
先発ピッチャーはシーズン中、試合間隔の間に1回ブルペンに入るだけです。
通訳の水原一平さんとの、リラックスしたキャッチボールのなかで、日本語で会話しながら何度も試しながら、ほんの少しのブルペンで投げてものにする。ここがとにかくすごいと思います。
(Q.それは大谷選手の研究熱心さが現れているということですか)
僕はピッチャーだけしかできませんでしたが、それだけでも覚えるのに時間が足りませんでした。
普段バッターでも試合に出ていて、とにかく先へ先へと行っている間隔があります。
野球が好きで好きでしょうがないというのは、間違いないです。
(Q.野茂英雄さんやイチローさんなど、メジャーリーグに大きな足跡を残した日本人選手はいますが、大谷選手は、チャーミングさで、アメリカの人たちに受け入れられている面もありませんか)
特にピッチャーは、バッターに当ててデッドボールになった時、日本人は帽子を取って謝りますが、アメリカでは一切謝りません。
でも、大谷選手はバッターにボールを当てた後、帽子を脱いで謝りました。逆に当てられた選手も「いいよ」と言う。こういうのが常識的になってきている。
メジャーリーグの文化も変えているところがすごいです。
大谷選手でないと無理だとは思いますが、僕もメジャーリーグがそうなってほしいと考えていたので、誇らしく感じます。
(Q.次のシーズンはどうなると思いますか)
大谷選手はこれで、ピッチャーとしてかなり完成されました。
来年楽しみなのは、MVPなどではなく、ピッチャー部門のサイ・ヤング賞の可能性もあると思います。
今年もチームが違ったら、サイ・ヤング賞を狙えたかもしれません。
サイ・ヤング賞を取って、ホームラン王も取る。それぐらいの夢があります。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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