「3つのカードを出したのがプーチンの弱さ」4州あす併合宣言か 専門家解説(2022年9月29日)

「3つのカードを出したのがプーチンの弱さ」4州あす併合宣言か 専門家解説(2022年9月29日)

「3つのカードを出したのがプーチンの弱さ」4州あす併合宣言か 専門家解説(2022年9月29日)

プーチン大統領は30日、ウクライナ4州の併合を宣言するとみられています。

◆防衛省の防衛研究所・兵頭慎治さんに聞きます。

8年前、クリミア半島の併合を宣言したとき、演説でプーチン大統領は「ロシアに栄光あれ」と語り、多くの国民がモスクワの赤の広場に集まり、国家を歌い熱狂しました。30日の宣言も、この場所で開かれる予定です。

(Q.今回の併合は、クリミアのときのような機運になるのでしょうか)
前回のようにはいかないと思います。クリミアのときは、無血で、短期間で軍事掌握して併合できました。今回は長期化し、ついに部分動員まで踏み込んで、国内で動揺や反発が広がっています。プーチン大統領の最低限の目標であるドンバスの完全制圧もままならないなか、併合宣言を行う。プーチン大統領、そしてロシア国民の表情は、8年前と比べると対照的なものになる可能性があると思います。

(Q.プーチン大統領は演説で、どういう点に注目すべきですか)
注目すべき点はいくつかあります。まず、戦争の出口をどのように見出しているのか。引き続き、併合された地域以外のドネツク州の完全制圧を、長期化を視野に入れて目指していくのか。今回の併合で、戦闘に一区切りつけようとしていくのか。そして、いまの戦闘の状況を、国民にどう語っていくのか。また、欧米諸国に対して、さらなる恫喝やけん制があるのか。このあたりが注目されます。ただ、反発が高まっている部分動員については、言及しないと予想しています。

(Q.ロシア軍がハルキウ州を奪還された際、「プーチン政権の終わりの始まり」と言っていましたが、今の現在地はどうでしょうか)
その見方は変わっていません。むしろ前回に比べて、さらに2歩、3歩進んでいると思います。その背景は、プーチン大統領が追い込まれて、3つのカードを一気に切ってきたということです。まずは『部分動員』。プーチン大統領は総動員については、国民の反発を気にして踏み切ることはできませんしたが、ついに国内の反発、動揺を覚悟のうえで、部分動員に踏み切りました。そして『支配地域の併合』。これも完全制圧できていないにもかかわらず、急いで行った。そして、これまで行ってきた『核の恫喝』も、レベルを上げて「はったりではない」という発言もしています。この3つのカードを一度に切ってしまった。プーチン大統領は、これ以上、領土を奪還されたくない、特別軍事作戦を失敗するわけにはいかないと追い込まれいる。言い換えれば、強気だったプーチン大統領の弱さがうかがえるのではないかと思います。

アメリカ政府は、28日にウクライナへ追加の軍事支援を発表しました。その内容は、高機動ロケット砲システム『ハイマース』18基、軍用車両300台など、約1585億円相当の支援だといいます。

(Q.併合で、ウクライナ軍の戦い方はこれからどうなりますか)
今回の軍事を見ますと、これまでの兵器と大きな変化はありません。ウクライナ側が求めている長距離砲などは入っていません。このあたりから見て取れるのは、今回、ウクライナ4州が併合されて、ロシアが自称“ロシア本土”とみなすところに対して、ウクライナ側が直接攻撃を加えることは、引き続き、アメリカも慎重な姿勢を崩していないということだと思います。さらに、併合されるので、ロシアが言うロシア国境が迫ってくることになりますので、従来の短距離ミサイルでも、攻撃は可能になりますが、ウクライナは、ロシアが“本土”とみなすところには慎重にならざるを得ない。奪還が一時的に弱くなる可能性もあるのではないかと思います。

(Q.戦況が膠着状態になるとしても、ロシア国内では動揺していると思いますが、プーチン政権は内部崩壊につながっていかないのでしょうか)
そこは、プーチン大統領は恐れていて、あらゆる予防線を張っているので、そう簡単に崩壊することはないと思います。ただ、プーチン大統領は2つの火種を抱えていると思います。一つは、部分動員による国民の反発の動きがどこまで高まっていくか。もう一つは、政権中枢部には、強硬派がいます。旧KGBや軍関係者などが中心ですが、彼らから「プーチン大統領は生ぬるい。総動員を早くかけて、本格的な軍事侵攻をして、早く決着させるべき」という突き上げが始まっています。実は、これに突き動かされて部分動員に踏み切った側面もあります。プーチン大統領は、板挟み状態といえます。今後、さらに戦況が悪化し、戦争が負けるとなれば、この2つの火種が大きくなる可能性があり、このときに政権が揺らいでくる可能性があると思います。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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