「ロシア大敗北」北東部要衝“奪還”ウクライナ軍急進の理由は?専門家解説(2022年9月12日)

「ロシア大敗北」北東部要衝“奪還”ウクライナ軍急進の理由は?専門家解説(2022年9月12日)

「ロシア大敗北」北東部要衝“奪還”ウクライナ軍急進の理由は?専門家解説(2022年9月12日)

ウクライナ軍が11日までにハルキウ州の“ほぼ全域”を奪還。要衝の都市からロシア軍を撤退させることに成功しました。

アメリカのシンクタンク・戦争研究所は「急速な反攻でハルキウ州のほぼ全域を奪還し、ロシアは作戦上の大敗北を喫した」、イギリスの国防省は「ロシア軍の大多数が、防御体制を最優先せざるを得ない状態に追い込まれている可能性が高い」と分析しています。

一方、ロシア国内では「反プーチン」の動きが表面化しています。

モスクワ市のロモノソフスキー地区の議会は、プーチン大統領に対して「あなたの考え方や統治手法は絶望的に時代遅れで、ロシアの発展と可能性を妨げている」として、プーチン大統領に辞任を要求しました。

また、サンクトペテルブルク市議グループも、プーチン大統領に国家反逆罪での告発を議会に提案しています。

◆防衛省防衛研究所・兵頭慎治さん

(Q.戦況の変化をどうみますか?)

ウクライナ軍にとって、ロシア軍を首都キーウから撤退させたことに次ぐ大きな戦果だと思います。

イジュームは、ロシア軍の補給線が通っていて、プーチン大統領が優先しているドネツク州の完全制圧を行うための重要な軍事拠点になっています。

3月下旬にロシア軍がここを制圧しましたが、ほぼ半年でウクライナ側に奪還されたことは、ロシア軍にインパクトをもたらしていると思います。

これによって、ロシアはドネツク州の完全制圧という最優先・最低限の軍事課題が難しくなります。戦局の潮目が大きく変わった可能性が出てきました。

(Q.急速な展開の背景には何がありますか?)

今から見ると、ウクライナ側は用意周到に準備していた感じがします。ヘルソンなど南部で反転攻勢の動きを見せ、東部に集中したいと考えているロシア軍の精鋭部隊を南部に引き付けました。

8月に入ってからは、ウクライナ側が関与した、クリミア半島での爆破事件がありました。これも布石だったのではないでしょうか。

ロシア軍の関心・戦力を東部から南部に引き付けた段階で、虚を突いた形で東部での奇襲作戦を行うというシナリオがあったのではないかと思います。

ロシアは今、火力発電所の破壊などインフラを攻撃していますが、次の一手に注目されます。

(Q.どのような作戦がウクライナにとって功を奏したと言えますか?)

これだけ大規模な地域を奪還するためには、戦車や火砲などを東部に集中させていったと思われます。完全な奪還を目指すために、密かに火力を東部に集中させていたのではないかと思います。

(Q.今回の作戦にアメリカはどこまで絡んでいると考えられますか?)

アメリカは、ロシアが支配している地域の奪還を目指して兵器供与を行っているので、ある程度は想定の範囲内だと思います。ただ、これだけ早く、大規模な形の奪還を、アメリカがどこまで予期していたかは分かりません。

(Q.ロシア国内の反発はどう見ればいいですか?)

モスクワ近郊で極右思想家の娘が爆殺される事件が起きるなど、不穏な動きがロシア国内で始まっています。

軍事侵攻が長期化し、軍事作戦がうまくいかないなかで、水面下で反プーチンの動きが高まっている可能性もあります。

過去にも反プーチンの動きは、大都市から始まって、全国的に広まっていく傾向がありました。今は火がつき始めていて、急速に広がっているのかもしれません。

プーチン大統領は今まで反戦的な動きを力で抑え込んできましたが、そこにも限界が見えてきているのかもしれません。

(Q.ロシアは今後、どう出てくると考えられますか?)

ロシアが取れる手は限られています。東部に集中しようとしても、南部でも反転攻勢の動きがあるため、簡単ではないと思います。

ロシアが戦局を大幅に打開するためには、国家総動員に踏み込んで、兵力を大幅に増強する必要がありますが、ロシア国内の反発を気にして、プーチン大統領も踏み切ることができません。

懸念されるのは、戦局が悪化した際に、プーチン大統領が大量破壊兵器の使用に踏み切る可能性です。ロシアが敗北し、プーチン大統領の権力基盤が危うくなった場合、核兵器の仕様も含めて追い込まれる可能性があると思います。

プーチン政権の終わりの始まりになる可能性も出てきたのではないかと思います。

(Q.西側はロシアを追い詰めすぎても良くないということになりますか?)

アメリカなども戦争がエスカレーションし、ロシアが核などの大量破壊兵器に踏み切ることを懸念してきました。

ウクライナをどこまで勝たせて、プーチン大統領をどこまで追い詰めるのか。この難しい判断を、アメリカなども求められると思います。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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