「やりたいことがたくさんあったのに」ウクライナ侵攻半年 子どもの死傷者972人 4歳女児失った母の悲嘆と怒り|TBS NEWS DIG

「やりたいことがたくさんあったのに」ウクライナ侵攻半年 子どもの死傷者972人 4歳女児失った母の悲嘆と怒り|TBS NEWS DIG

「やりたいことがたくさんあったのに」ウクライナ侵攻半年 子どもの死傷者972人 4歳女児失った母の悲嘆と怒り|TBS NEWS DIG

ロシアによるウクライナ侵攻から、きょうで半年。この間、900人以上の子どもが死傷したとされています。今回は4歳の娘を亡くした母親を通じて、この戦いの不条理を考えたいと思います。

7月14日、ウクライナ中部ビンニツァをロシア軍のミサイル3発が襲いました。

記者
「ロシア軍がターゲットにしたのがこちらの建物です。その直後の様子がこちらの監視カメラに写っていました」

衝撃とともに煙が立ちのぼり、破片が降り注ぐ様子がわかります。ロシア側はウクライナ軍と武器支援関係者の会合を標的にした、と主張。しかし、この建物はコンサートホールも入る文化施設でした。攻撃の数時間前、元気に歩いていた4歳のリザちゃんはたまたま近くを通り、巻き込まれました。

一緒にいた母親のイリーナさん。少なくとも17の破片を浴びて入院していました。

リザちゃんの母 イリーナさん
「リザと上を見上げたのを覚えています。信じられないほど、大きなミサイルが見えたのです。私は低くかがんで、このように顔をリザの顔にくっつけるようにして、ベビーカーを強く抱きかかえました。そして大きな爆発音が聞こえ地面が揺れました。リザの体が、お腹のところが裂けていました。自分の体の痛みは感じませんでした」

イリーナさんはへたり込んで、「リザを助けて」と叫び始めました。

リザちゃんの母 イリーナさん
「あれだけのけがをしていたら助からないだろうと、頭で理解はしていました。でも信じたくなかったんです。信じたくなかった、だってこんなことありえない、起こるはずがない。まだまだやりたいこともたくさんあったし、娘を本当に愛していましたし、私たちにそんなことが起きるはずがない 、どうして?って」

リザちゃんは待望の子どもでした。妊娠中に障がいがあることがわかり、中絶も勧められましたが、イリーナさんは断固拒否。生後2か月でダウン症と診断されたリザちゃんに全身で愛情を注いできました。

言語聴覚士のナタリアさん。印象に残っている光景があります。

言語聴覚士 ナタリア・メルニクさん
「リザが初めて『ママ』と言った日を覚えています。お母さんはリザを抱きしめ泣いて、キスして。リザはお母さんの手を握り『ママ、ママ』と言っていました。あの子が今でもドアを開けて入ってくるような気がします…」

SNSでリザちゃんとの生活を発信してきたイリーナさん。ラベンダー畑での写真は、亡くなるちょうど1週間前に撮られたものです。

リザちゃんの母 イリーナさん
「リザは私の人生そのものでした。毎朝起きてあの子を見るたびに、私はこの子がいてどんなに幸運なんだろうと感じていました。彼女に障がいがあっても、他の人達が何と言おうと。いつもぎゅっと抱きついて、私の頬や眉を撫で『まま、ぶぶ』って言うのです。『ぶぶ』というのは“大好き” という意味なんですけど、『ママ、大好き!』と勢いよく言ったり『好き好き好き』とたくさん言ってくれたり、それは忘れません」

リザちゃんを寝かしつけるとき、祖母のラリーサさんはよく、リザちゃんのお気に入りの歌を歌いました。

リザちゃんの母 イリーナさん
「世界は見ているだけ。空爆を防ぐこともせずに。あとどれだけ続くの?もう半年も経ちました。リザは待望の子でした。全てを与えてあげたかった。こんなの、あんまりです」

国連によると、この半年で、確認できているだけでも一日平均5人の子どもが死傷しています。そのひとりひとりにリザちゃんとイリーナさんのような物語があったはずです。

取材したあきば記者がウクライナ中部の現場にいます。中継です。

7月14日にミサイル3発が着弾したのがこちらの建物です。旧ソ連時代に建てられた「将校クラブ」オフィサーズ・クラブ。空軍ゆかりのものではありますが、実際にはコンサートホールなどを持つ文化施設であり、攻撃の数日後には女性シンガーによるコンサートも予定されていて、そのクルーも攻撃で亡くなっています。リザちゃんのお母さんによれば、中には銀行や商店もあったということです。この攻撃では28人が死亡しました。

ロシアはここで武器支援についての会合があったのだから爆撃したと主張しましたが、そもそも白昼、この商業地区のど真ん中にミサイルを3発も撃ち込めば、建物の中でも外でも民間人が巻き添えになるのは明らかです。向かいはさまざまな業種のお店が入る商業ビルです。そして、リザちゃんが亡くなったあたりには、ぬいぐるみ、花、手紙が捧げられています。

お母さんはリザちゃんを大事に大事に育ててきて、リザちゃんもそんなお母さんが大好きでした。そうしたひとりひとりの小さくても大切な物語が、大義だとか、安全保障上の懸念だとか、地政学だとか、歴史観だとか、そういった大きな物語によって、あっけなく踏みつぶされる、それが圧倒的なスケールで起きるのが戦争です。そしてそれは人間の意思で起きているのだということを、この半年という節目で改めてお伝えしたいと思いました。

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