予備選で圧勝も“偽りの関係”か…米大統領選で「トランプ旋風」再び?記者中継(2022年8月17日)
2年後のアメリカ大統領選にも大きく影響を与える中間選挙が11月に迫っています。その中間選挙で“党を代表して戦う候補者”を決める予備選が行われていますが、全米がかたずをのんで見守ったのがワイオミング州の共和党予備選です。
元副大統領を父にもつ大物議員、リズ・チェイニー氏を破ったのは、トランプ前大統領が送った“刺客”ハリエット・ヘイグマン氏でした。
“反トランプ”チェイニー下院議員:「再選を飾ることは簡単でした。2020年大統領選をめぐるトランプ氏の嘘に便乗すればよかった。それは民主主義を崩壊させ、この国の根幹を攻撃しようとする彼の試みを許すことになります。その道は選ばなかったし、選ぼうとも思いません」
ワイオミング州では過去3回、チェイニー下院議員が共和党の代表となり、選挙でも当選してきました。
今回、ワイオミング州の共和党内でできていた構図は「チェイニー下院議員VSトランプ前大統領」というものでした。元々はこの2人、政策面で協調もしていたのですが。チェイニー下院議員は「連邦議会襲撃事件はトランプ前大統領が扇動した」として行われた弾劾裁判に賛成し、事件を調査する特別委員会の副委員長も務めてきました。共和党保守本流として反トランプの代表格です。
“反トランプ”チェイニー下院議員:「トランプ氏はとても危険な存在で、トランプ氏の脅威から憲法を守れるなら、下院議席を犠牲にしても私は構わないと思っています」
一方のトランプ大統領は、天敵に対して刺客を送り込みました。それが今回の予備選に勝利したヘイグマン氏でした。
ワイオミング州での予備選は、民主党員にとっても他人ごとではありません。チェイニー氏を支援するために戸別訪問する人のなかには、民主党支持者の姿もありました。献金した民主党支持者もいます。関わった人は、その理由をこのように説明しました。
チェイニー氏の献金に関わった民主党支持者:「食べ物をのどに詰まらせたら、必要なのは酸素です。当たり前のことと思うかもしれませんが“トランプ”がのどに詰まって、私たちには酸素が必要なのです。トランプ氏に対抗する機運を高めていくには、彼と決別した共和党員を迎え入れ、もり立てねばなりません」
そんな援護射撃があっても、トランプ人気は切り崩すことができませんでした。現段階の得票率を見ると、ヘイグマン氏が66.3%、チェイニー氏が28.9%とダブルスコアという差です。
“トランプ氏推薦”ヘイグマン候補:「トランプ氏にみんなが感謝しています。明確で揺るがぬ支持が今夜の勝利につながったのです」
アメリカ政治にはトランプ前大統領の影響が色濃く残っていると証明された今回の予備選。先にあるのは2024年です。
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4年に1度の大統領選の間の年に開かれる、アメリカ上院・下院の議会選挙が『中間選挙』で、11月に行われます。
下院は435議席。任期2年なので全て改選。上院は100議席で任期6年なので、2年ごと約3分の1ずつ、今回は35議席が改選されます。
中間選挙は、大統領選に直接の関係はありませんが、現政権への信任を問う、いわば大統領選を占うものになっています。
この11月の中間選挙に向けて、党の候補者を決めるのが『予備選』で、そこにトランプ氏の影響が色濃く出ています。
トランプ氏が推薦した候補者は上・下院合わせて181人。すでに結果が出ているところを見ると、上院で17勝1敗、下院で136勝5敗と、勝率が96%に上っています。
この結果にワシントン・ポスト紙は「予備選でトランプ氏は自分の政治的影響力を発揮している」と分析しています。
チェイニー氏のように、去年1月の下院議会でトランプ氏の弾劾訴追に賛成した共和党議員10人に対して、トランプ氏は“刺客”候補を送っています。その結果、4人が“刺客”に敗北し、4人が不出馬、勝利したのは2人だけでした。
2年後の大統領選について、トランプ氏は米メディアに対し「私が立候補すれば、多くの人は出馬を見送るだろう。(中間選挙の)前か後か。それが私にとっての大きな決断となる」とコメントしています。
◆ワシントン支局・小島佑樹記者
(Q.2年後の大統領選で、トランプ氏が返り咲く可能性も現実味を帯びてきましたか?)
今回の予備選で、トランプ氏にとって最も厄介な敵だったチェイニー氏を破ったことで、共和党内に対して「自分に盾つく者は全力で潰す」という強い姿勢を見せつけた形になります。
その結果、トランプ氏が共和党内の次期大統領選候補になる道がかなり近づいたと言えます。今後は、党内のライバルを抑え込む動きをさらに加速させていくものとみられます。
その一方で、ワイオミング州で取材をしてみると、共和党は必ずしも『トランプ一強』には
ならないのではとも感じます。共和党支持者の割合が比較的多いと言われるワイオミング州でさえも、トランプ氏を全面的に支持する層は少なくなってきているということです。
私がいるランダーという街にはかつて、軒先にトランプ氏の旗を掲げる熱狂的な支持者が多数いたということですが、私たちの取材では1軒しか見つけることができませんでした。
ヘイグマン氏に投票したという複数の有権者に話を聞いても「トランプ氏の推薦で投票したわけではない」と明確に否定しました。
(Q.共和党はまとまることができますか?)
今回の取材で印象的だったのは、有権者から“トランプ派候補の矛盾”に対する意見が聞かれたことです。共和党内部、支持者も含めてまとまるどころか、分断がさらに深まっていくのではないかという印象です。
トランプ氏が推薦してきた候補者のこれまでの勝率は96%という結果を出していますが、ある有権者は「トランプ派候補の勢いは“偽りの関係”に基づくものだ」と話しています。
予備選でトランプ氏が最も重視しているのは、敵となる候補者を確実に倒すことができる強い対抗馬です。一方、推薦を受けた候補者もトランプ氏の人気にあやかることだけが狙いです。つまり、トランプ氏とトランプ派候補者の信頼関係は非常に薄いケースが多いです。
予備選のためだけの関係は、共和党支持者の目にも長続きしないものだと映っています。予備選での“トランプ派”は突貫で築き上げられたものが多いだけに、あっけなく空中分解してしまうことを願う共和党支持者も一定数いるのも事実です。
今回の予備選で敗れたチェイニー氏は、NBCテレビのインタビューに応じ、2024年次期大統領選挙への出馬に強い意欲を示したということです。出馬が実現すると、共和党内の大統領候補者選びで、トランプ氏と直接対決する可能性もあります。そうなると、ワイオミング州でも「チェイニー氏をサポートし続ける」という人が多数いたので、さらなる大きな分断を招く1つの要素になり得ると考えています。 (C) CABLE NEWS NETWORK 2022
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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