医療ひっ迫の一番現実的な原因は“院内感染”第7波…医療現場の負担は? 専門家解説(2022年7月13日)

医療ひっ迫の一番現実的な原因は“院内感染”第7波…医療現場の負担は? 専門家解説(2022年7月13日)

医療ひっ迫の一番現実的な原因は“院内感染”第7波…医療現場の負担は? 専門家解説(2022年7月13日)

13日の全国の新型コロナ新規感染者数は、午後9時現在で9万4492人と、これまでの最多10万人を超えていた時に迫る勢いです。

すべての地域で前の週の同じよう曜日を上回っていて、13の県で過去最多を更新しました。

全国に先駆け、沖縄では4月から“第7波”に対する医療体制が続いています。

猛暑も重なり、今月に入って救急搬送の件数が急増していて、人出が足りず、夜間などは民間の救急搬送も出動します。

コロナ患者を扱う『民間救急搬送メディトランセ』では、一晩で5件の依頼を受ける日もあるといいます。

この日に依頼があったのは、90代の女性。病院ではなく『入院待機ステーション』に送り届けました。

医療の最前線では「第6波が終わらないまま、第7波が来た」といいます。

沖縄県立北部病院では、37ある病床のうち、33が埋まっていました。現在、重症者はいませんが、酸素投与が必要な患者が9人入院しています。

沖縄県立北部病院 感染症担当・永田恵蔵医師:「ゴールデンウイーク明け、6月以降から8割~9割の(コロナ)病床を利用している状況。一般病床もきょう満床になってきて“誰を退院させるか”という話が朝からずっとあって、ベッドのやりくりにかなり苦労が続いている。全体の医療の負荷が強い。今までで一番きつい状況」

熱中症や骨折などで搬送される人も増え、病院の外に作ったプレハブの診療室で対応しています。

沖縄県の病床使用率は61.3%。1カ月前と比べると、約23%上昇しています。そんななか、来週から本格的な夏休みが始まります。

沖縄県立北部病院 感染症担当・永田恵蔵医師:「海の中での事故や熱を出したり、何かのアクシデントで来院されるが、いま来院しても医療を提供できるまで時間もかかるし、安心安全な医療を提供できないなかでの旅行になる。自分の安全が保証されないなかで旅行に来る可能性もあると知ってほしい」

13日の東京の新規感染者は1万6878人と、前の週の同じ曜日と比べて2倍に。沖縄の現状は、あすの全国の姿かもしれません。

“第7波”に入ったという認識がされるなか、政府は方針を変えていません。

松野博一官房長官:「現時点では、東京都や過去最多を更新した自治体から、まん延防止等重点措置の要請はなく、重点措置の適用等の行動制限を行うことは考えていない」

日本医師会も。

日本医師会・松本吉郎会長:「現在、国の方では特別な行動制限は出しておりません。あくまでも一般的な、我々が普通にできる感染防止対策を取りながら生活を行っていくことだと思います」

厚労省のアドバイザリーボードは、今後もさらに感染は急拡大すると指摘しました。

アドバイザリーボード・脇田隆字座長:「夏休み、今週末の3連休を控えて、接触の増加の可能性がある。特にBA.5への置き換わりで、感染力が1.3倍というところと、感染拡大の速度が非常に早くなっていることが影響している」

政府は、今月前半の開始を目指していた観光支援策『全国旅行支援』を延期する方針を固めました。

これについて、岸田総理は14日に会見し、説明する見通しです。

***

◆コロナ患者の治療にあたっている埼玉医科大学総合医療センターの感染症専門医・岡秀昭教授に聞きます。

(Q.これだけのペースで感染者数が増加する現状をどう受け止めるべきですか?)

このところの感染者数の増加傾向を考えれば、びっくりしない数字が出ています。

行動制限が解除されて人が動くようになったところにオミクロン株。ワクチン2回接種では感染を予防する効果が極めて少なくなっている。ブースター接種も長くは効果が続かない。

そこに来てさらに、感染力が強いBA.5に置き換わってきた。諸々の要因で感染者数の爆発につながっていると思います。

ポイントは、ここから先、重症者が出てくるかどうか。この感染症のポイントは、遅れて重症者が増えてくることです。

私たちは第4波、第5波の時は、必ずこれから重症者が増えるので、気を引き締めてくださいという話でしたが、今回は分からない。

2週間後にどうなってくるか。重症者が増えると非常に危機感が強くなってきます。

(Q.医療現場は今どのような状況ですか?)

恐らく今大変なのは、私のような医大病院の医師ではなく、プライマリーケア、ご開業の先生、発熱外来といった場では、すでに患者が殺到して大変だという声を聞いています。

私たちのような比較的、重症者を担当する病院は先月まで、患者はおらず、コロナ病床を閉鎖していました。

最近になって数人の患者の入院があって、再オープンしています。

ただ、入院患者がどんどん毎日のように入る状況ではなく、さらに重症患者はゼロの状態が続いています。

まだまだゆとりはありますが、これが2週間後どうなるか。

今までであれば、絶対に増えるという話をしていましたが、今は少なくとも重症化を防ぐ効果のあるワクチンは広く打たれていますし、重症化リスクのある人には早期診断をして、治療薬を投与しています。ものによっては8~9割、重症化を防ぐ効果があるとされています。

そういった治療を行っている現状から、私は淡い期待ですが、重症者が増えてこないという期待をしています。

ただ、あまりにも感染者が増えると、持ちこたえられず、沖縄のようになる可能性もあります。

【感染拡大状況】

感染急拡大の状況について、厚労省の専門家会議は13日、最新の分析を発表しました。

BA.5の実効再生産数が、感染力が高いとされるBA.2の約1.27倍(東京)。学校や自宅での感染が増加傾向にあり、特に50代以下の増加幅が大きいという分析がありました。

感染対策は今までと変わらず、基本的な感染対策(手洗い・換気など)の徹底ということです。

アドバイザリーボード・脇田隆字座長:「行動制限が必要という意見はなかった」

(Q.この分析をどうみますか?)

実効再生産数が約1.27倍というのはその通りで、感染力が強くなっていることになります。

これからBA.5への置き換わりが進んでいくので、患者数がもっと増えてくる恐れがあります。

一方で、50代以下の増加幅が大きいところは、やはり行動が大きい人たち。もう一つは、何よりもワクチン接種のブースターが遅れています。

ワクチンのブースター接種が有効であることを裏打ちしています。

論文上でもワクチンの有効性は証明されていますので、やはりワクチン接種を進めていく必要があると思います。

最後の、行動制限が必要ということに関して、私も現時点での強い行動制限の必要性は低いと思っています。

新型コロナウイルスは当初、8割が軽症で2割が重症化と言われていましたが、今現場で患者を診ていて、2割も重症化しません。

非常に重症化率が下がっているので、当初の強い規制を打ち出すのは割に合わなくなってきていると思います。

この1~2週間は静観して、重症者数が増えてくるのであれば、現場の声を聞いて、結論ありきではなく、方針を変えて頂く必要があるかもしれません。

【政府が検討中の案】

政府は、4回目のワクチン接種を含めた強化策を検討しています。

4回目のワクチン接種の対象者を、医療従事者や高齢者施設の職員などに拡大することを検討しています。

主要な駅や空港での無料検査の拡充する方針を固めたということです。

一方で、観光支援策『全国旅行支援』は延期する方針を固めました。

(Q.政府の対策案について、どう感じますか?)

『全国旅行支援』の延期に関しては、さすがにこの感染状況のなかでプロモーションをしていくというのは、常識的に考えて難しいと思います。

次に無料検査の拡充は、出かける際に検査を受けて頂くという流れで必要だと思いますが、インフルエンザ化して、重症患者が増えてきた段階で、全員をどんどん検査して診断するかは、やや疑問な状況になってきています。

特に軽症者は自宅安静で、検査をせずに感染を拡げないように安静にしてもらうという方針転換も、今後必要かもしれません。

4回目のワクチン接種ですが、ようやくやって頂けたかと。本当はもっと早くやって頂きたかったです。数カ月前から色んなメディアに発信をしていました。

というのは、今回の第7波は、一番恐ろしい現実的な医療ひっ迫の原因は、院内感染・院内クラスターによる患者受け入れ停止にあると思います。

今、医療従事者の数は少ないので、そこで感染が起きれば、働き手が少なくなります。

そして、病院内で感染が起きてしまうと、新しい患者を受け入れることが困難になります。

これは、重症患者が増えなくても、受け入れができないということが起こり得ます。

4回目接種は、短期的ですが一時的に感染予防効果は高まりますし、重症化を防ぐ効果はちゃんと増えます。

今、感染が増えている時期に4回目接種を進めて頂きたいと思います。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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