補助金“上限”突破で170円超えも・・・ガソリン価格再び上昇加速か 今後は?専門家解説(2022年6月14日)

補助金“上限”突破で170円超えも・・・ガソリン価格再び上昇加速か 今後は?専門家解説(2022年6月14日)

補助金“上限”突破で170円超えも・・・ガソリン価格再び上昇加速か 今後は?専門家解説(2022年6月14日)

今月6日時点のレギュラーガソリンの全国平均価格は169円80銭でした。前週比+1.6円で、8週間ぶりに値上がりしました。

3月以降、ガソリン価格は横ばいが続いていますが、実際の額は高騰が止まらない状況です。上昇分は政府の補助金などでまかなっているため、大きく値上がりしていませんでした。

ただ、補助金には限度があり、このところの上昇分には追い付かず、15日に発表される最新の価格は、再び170円を超える見通しです。

田中商事・三枝直樹店長:「ガソリンを運んでくるのも、油槽所からタンクローリーで来るが、そのタンクローリーも軽油を使って、トラックで運ばれて来るわけです。これもやっぱりコスト的に燃料高騰してますので」

燃料費の高騰を受けて、ドライバーたちは、こんなことに気を付けているといいます。

日章陸運ドライバー、北川和幸さん:「燃料はすごい気にして今走ってる。基本は全部アイドリングストップしている。あとはアクセルの踏み加減」

ただ、節約も簡単ではありません。

同業のドライバー:「待機中とか、暑い時とか寒い時とかエンジンかけないと、エアコンとかヒーターが使えない。会社であまり使わないよう、エンジンを切るよう言われている」

帝国データバンクの調査によりますと、仕入れコストの上昇分を料金にどれだけ反映できているかを示す『価格転嫁率』は、運輸・倉庫の分野で19.9%。これは、仕入れコストが100円上昇した場合でも、販売価格は19.9円しか上げられていないという意味です。

なぜ、価格転嫁が進まないのか。調査では、こんな声も聞かれました。

帝国データバンクのアンケート:「大手荷主に(運賃値上げの)お願いをしても『代わりの運送会社はいくらでもいる』と言われ、転嫁してもらえない」

日章陸運ドライバー、北川和幸さん:「運賃は変わらないので、会社にはすごいダメージがある。遠くには行かなくなった。距離があればあるほど金額も上がる。大きなダメージ。燃料が下がってくれれば、自分たちも安心して走れる。道路だけでなく、燃料も気にしながら走らないといけない。気を使うところがいっぱい増えている。その辺がちょっと大変」

先週には、燃料の仕入れ先から再び値上げするという通知が届きました。

日章陸運、鶴田竜一社長:「今月から上がるということで“8.5円上がる”と届いた。リッターで上がっているので、日々何十万単位、年間で何千万。うちの規模でもそれくらいなので、相当ダメージがある」

東京商工リサーチが発表した先月の運輸業の倒産件数は34件。前の年の同じ月と比べ、6割以上増加しています。

下請けが連なる運送業界では、値上げの交渉も進まないのが実情です。

日章陸運、鶴田竜一社長:「運送会社がお客様なので、その運送会社に交渉しても、その運送会社もまた荷主に交渉しないといけないので、運賃が上がるのはなかなか厳しい。うちの状況も荷主は分かって、荷主の状況も私たちは分かっている。お互い『何とかならないですか』と。できる限りのことはやってくれているので、納得するしかない。正直、きょうも交渉しないといけない。ダメもとで交渉していく」

経済産業省が出している予測によりますと、今月13日時点でガソリンの全国平均価格は1リッター210.6円となっています。

政府は補助金を支給する基準額を168円としていて、予測された金額とは42.6円の差があります。

今回の場合、補助金は38.8円にとどまり、補助金では差を埋めることができない状況になっています。

◆エネルギーの価格相場に詳しい、ニッセイ基礎研究所上席エコノミストの上野剛志氏に聞きました。

上野剛志氏:「原油価格は少なくとも年内は高い水準のまま推移するだろう。年明けも大きく下がる要因が今のところ見当たらない」

高い水準が続く理由としては、以下のような要因があります。

【供給側】
・EU(ヨーロッパ連合)がロシア産原油の禁輸を決定し、供給量が減る見通しのため。
・アメリカの生産量はコロナ前の水準に戻っておらず、OPECプラスも増産を決めているが規模が小さい。

【需要側】
・世界の多くの国がコロナ禍から経済活動を再開しているため、需要が増える。

日本のガソリン価格は、政府の補助金によってある程度、抑制できていますが、上野氏は他にも、補助を受けられない製品は今後も値上がり続くことを危ぐしています。

上野剛志氏:「原油を材料とするプラスチック製品などは補助の対象外であるため、より価格転嫁が起きるだろう」

企業の『価格転嫁率』を見ると、運輸・倉庫業で19.9%、小売り業では53.1%、企業全体で見ても44.3%。これは仕入れコストが100円上昇した時に44.3円しか販売価格に反映できていないという状況です。

上野氏によりますと、今回の原油高の影響は海外による外部要因のため、国内で“誰がどれほど負担するか”が重要だと言います。

企業が負担をすれば、業績の悪化を通じて、雇用や賃金に悪影響が及ぶ恐れがあります。小売り価格への転嫁が進んで、消費者が負担するとなると、家計負担が増え、購買力の低下にもつながりかねないといいます。

上野剛志氏:「政府は“誰がどれほどの負担をするか”バランスをよく見て状況に見合った対応が求められる」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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