EU“制裁の柱”ロシア産石油禁輸で合意 ハンガリー難色 パイプライン輸入継続のワケ(2022年5月31日)
ロシアへの制裁としてEU（ヨーロッパ連合）は、首脳会議でロシア産の石油の輸入を部分的に禁止することで合意しました。制裁の柱とも言える今回の合意、年内には90％が禁輸となる見通しとなり、ロシアへのダメージは大きくなりそうです。
“ロシア包囲網”を巡り、大きな動きがありました。
フォンデアライエン欧州委員長：「きょう私たちが合意したことは大きな第一歩です」
ウクライナ侵攻への制裁として、EUはロシア産の石油の輸入を部分的に禁止することで合意しました。
ただ、反対した国もあり、ことはそう簡単ではありません。
ハンガリー、オルバン首相：「エネルギーの問題なので危険を伴い深刻だ。まず解決策について話し合い、次に制裁の話だ」
ハンガリーです。ドナウ川を挟み、歴史的な街並みが続く首都・ブタペスト。国内を取材すると、ハンガリーの抱える複雑な事情がみえてきました。
ウクライナにも隣接し、日本の約4分の1程度の面積を持つハンガリー。人口約970万が住む国は、温泉大国としても知られています。
日本との関係も良好で、2013年には当時の岸田外務大臣が、2019年には佳子さまが訪れたことでも知られています。
一方、ロシアとも、切っても切れない関係です。
笹川平和財団主任研究員・畔蒜泰助氏：「石油でいうと58％くらい。さらには天然ガスに至っては100％ハンガリーはロシアに依存している」
今回の合意に関しては、タンカーでの輸入のみ禁止です。パイプラインによる輸入は継続するというハンガリーに配慮したいわば“妥協案”です。
世論は、真っ二つに分かれていました。
ハンガリー国民：「ウクライナをロシアが侵略している。早く終わらせるには制裁が必要だ。そのためには価格上昇も受け入れられる」「ロシアが唯一国際的な力を誇示できるのがエネルギー。それを使って脅迫している。気候変動問題もあるから化石燃料を減らすべきだ」
当初から制裁に反対を示すオルバン首相。国内から、支持する声も上がっています。
ハンガリー国民：「オルバン首相の判断を支持する。石油の禁輸はやってほしくない。コロナで物価が上がったのに、さらに上がるのは嫌だ。オルバン首相は市民の利益を代表してくれている」「ハンガリーにマイナスの影響があるなら、禁輸はやめた方がいい」
支持する理由が“ある政策”の存在です。
首都ブタペストで、和食店を経営するジュリさん（50）。政府の、「エネルギー価格抑制策」の恩恵を受けていました。例えば、電気代です。
ブダペストで和食店経営、ジュリさん：「電気代は1万555フォリント（日本円で3672円）、価格抑制策がなければ1万4014フォリント（日本円で4907円）。3459フォリント（日本円で1203円）節約できました」
価格抑制策により25％ほどの電気代が節約されています。この政策が始まった2013年からは、14万円を超える額が節約されたことになります。
ブダペストで和食店経営、ジュリさん：「家庭によっては年間で10万円以上になる場合もあります。光熱費を抑えることが政権の基盤につながっていると思います」
2010年、国内経済が行き詰まるなか誕生したオルバン首相。価格抑制政策などを背景に、今年4月、総選挙に勝利。第5次政権を発足させました。
アジア・パシフィック・イニシアティブ、石川雄介氏：「野党からは『ハンガリーのプーチン』みたいな表現が使われていたところはあって、プーチンとも仲良く外交的にも友好関係を築いていた」
その政策に不可欠なのが、石油を供給する側のロシアです。
ウクライナ侵攻前の2月には、モスクワを訪れ、プーチン大統領と会見を行っていました。
ロシア、プーチン大統領：「我々の懸念は無視されている。つまり、3つの要求を検討しているとは思えない」
その3つの要求が、侵攻の口実となった「NATO（北大西洋条約機構）不拡大」などです。
ロシアとEUのはざまで、ハンガリーの狙いはどこにあるのでしょうか。
アジア・パシフィック・イニシアティブ、石川雄介氏：「あえて曖昧（あいまい）な姿勢を取ることによって、お互い双方からある程度の利益を得ようというところが一つあるかと思います。ハンガリーの独立を保ちたいというところが背景にあるんじゃないかと」
30日、ゼレンスキー大統領が訪れたハルキウ。住宅地への砲撃が相次いでいます。東部ではロシア軍が攻勢を強めるなか、南部では、ウクライナが一部の街からロシア軍を撃退しました。
[テレ朝ｎｅｗｓ] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
