知床観光船「KAZU1」海面へ 水深182mから“つり上げ”(2022年5月26日)

知床観光船「KAZU1」海面へ 水深182mから“つり上げ”(2022年5月26日)

知床観光船「KAZU1」海面へ 水深182mから“つり上げ”(2022年5月26日)

 知床半島沖で観光船が沈没した事故。26日午後、KAZU1が引き上げられる予定です。この後、水深の浅い海域に移動する予定のKAZU1ですが、果たして事故原因の解明となるのでしょうか。

 26日午後4時10分の時点でカメラはまだ、KAZU1の姿を捉えていません。

 いまだ行方不明の12人。そして、いまだ分からない事故原因。手掛かりはつかめるのでしょうか・・・。

 様々な人の思いを乗せ、知床の大自然を相手にしたプロジェクトが始まりました。

 穏やかな風と波の斜里沖。午前7時55分、無人潜水機が降下。午前8時2分に作業が開始されました。

 船上では、引き揚げる準備が進んでいました。

 専門家は、26日の作業で、3つのポイントを挙げていました。

 水難学会・斎藤秀俊会長:「きのうの段階でKAZU1にスリング(ベルト)がかけられた」

 今回の作業はどのように進むのでしょうか。2日前、KAZU1が落下した地点がここです。ここでベルトと枠を船体に固定します。

 午後、海面近くまで引き揚げ、およそ7.5キロ離れた水深の浅い海域に移動したうえで、作業船に引き揚げます。

 作業船上にKAZU1を乗せたまま27日、網走港に入ります。

 地元の人の協力を得て、海上から取材することができました。船は網走港から、現場を目指します。

 穏やかな波と風を受け、船を走らせること1時間半・・・。知床の雄大な山々を背に、作業に追われる「海進」。その姿を“初めて”海上から捉えることができました。

 取材が許されたのは、引き揚げ作業をする船から1カイリ、つまり約1.8キロの地点からです。

 前回、落下した経緯を踏まえて作業は大きな変更を強いられました。

 水深182メートルに落下したKAZU1。今回は強度を増した、ナイロン素材のベルトを使います。

 前回は5本でしたが、今回は2本での引き揚げです。

 大きく変わるのが「引き揚げる位置」です。前回は水深20メートルのところまで引き揚げ、曳航(えいこう)する方法でしたが、今回は、作業船の真横まで引き揚げる“横抱き”という方法が取られます。なぜ、この方法なのでしょうか。

 水難学会・斎藤秀俊会長:「良いこととしては、船が暴れませんから、スリング(ベルト)と船の間で摩擦ができづらくなる。つまり切れにくくなる」

 前回は、船体との距離を空ける方法が取られましたが・・・。

 水難学会・斎藤秀俊会長:「船が時々ジャンプするように、打ち上がったような状態になる。船が動くとスリング(ベルト)と船の間が摩擦する。それによってスリングが切れたというのが前回」

 家族からも、こんな声が上がっていました。

 海上保安庁第一管区警備救難部・横内伸明次長:「ご家族の方から今回、船体があがってくることについて行方不明者に関してはなかなか中からというのは難しいかもしれないけど、家族の大事なものとかが残っていた可能性があるところを今回、落下したことは非常に残念という声はございました」

 家族も見守るなか、新たに行われる「横抱き」。ただ、危険も伴う方法でもあります。

 前回は、作業船との距離があったため、作業船と衝突する可能性は低かったものの、今回は作業船との衝突にも気をつけなければいけません。

 地元漁師は、海底の地形も気がかりだったと話します。

 船長:「(Q.この辺りってどういう海底?)陸に近い所から結構な狭い範囲で落ち込んではまた深くなる。段々畑の状態。潮の流れでそっち(深い方)に落ちる可能性があるじゃないかと。一番最初落下した時に心配した。ただ、ここまで落ちたところが平坦(へいたん)な部分が落ち込まないで深い所に行かないで済んだ」

 午後3時、つり上げ作業が始まりました。

 午前中にベルトと黄色いフレームの固定が完了。前回と同じくウィンチを使います。

 前回落下した際は、“逆潮”(ぎゃくちょう)と呼ばれる強い潮の流れがあったそうですが、気になるのは26日のコンディションです。

 船長:「今の現在の潮で1.2ノット。時速に直すと2.4キロぐらいのスピード。おととい落下させた時の半分以下」「(Q.半分というのはかなり違う?)違います」「(Q.きょうの天候条件はかなりいいといえる?)いいです。最高です。だから安心して陸の方まで引っ張っていけるんじゃないかな。逆潮ではありません」「(Q.潮の流れにのっていけそう?)いけます」

 作業は、いよいよ佳境を迎えます。

 “横抱き”と言われる固定する作業が始まります。この作業も、簡単なものではありません。

 水難学会・斎藤秀俊会長:「しっかり固定すると思います。固定することでベルトと船との間がずれると(前回と)同じように切れるので、ずれないようにすることが固定。水面上の空中であれば固定は簡単。海の中にいるとKAZU1が浮力を受けて暴れるとまた切れる」

  この後、浅瀬へ曳航される予定です。そこで、船体の引き揚げが行われます。

 今、行われている場所で引き揚げることはできないのでしょうか。

 水難学会・斎藤秀俊会長:「海進そのものがゆらゆら揺れる状態だと、つり上げの時にゆらゆら揺れてうまくつり上げられない。海進のイカリを降ろして固定できたらつり上げをやりたい。そのためには浅瀬に持っていかないといけない」

 海の海の安全は安全は守られていたのか。

 今回の事故は問い掛けます。

 知床にある遊覧船事業者に対し、通常監査が入りました。

 北海道運輸局・岩城宏幸局長:「これを機に各事業者における安全対策に万全を図っていきたい。必ずしも十分ではなかった。もう少しできることがあったのでは」

 事故はなぜ起こったのか。その一歩を進めるための引き揚げ作業。新たな事実は分かったのでしょうか。

※「1(ワン)」は正しくはローマ数字
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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