“都市封鎖する国しない国”分かれるオミクロン対応(2021年12月26日)

“都市封鎖する国しない国”分かれるオミクロン対応(2021年12月26日)

“都市封鎖する国しない国”分かれるオミクロン対応(2021年12月26日)

オミクロン株の市中感染が世界中で広がっています。しかし、国によって対応が大きく異なっています。厳しい規制強化に乗り出したオランダ。一方、マスク以外のすべての規制を解除したオーストラリア。正反対の対応をとった二つの国のクリスマスを取材しました。

▽ オランダ 強力な“都市封鎖”で暴動も
(現地ジャーナリスト村山祐介さん)
「こちらのレストランは屋外のテーブルやイスが全部積み上げられています。こちらもセールと書いてあるんですが、営業はしていません。元々クリスマスの日は、商店はお休みしているところが多いんですけれど、レストランやカフェはパーティーをしている人たちでにぎわっているはずだったんですが、わずかに開いているカフェでコーヒーを求めて並んでいる人たちがたくさんいるような状態です」

年内にもオミクロン株が主流になるとされる中、オランダ政府は店舗の営業や人の集まりを制限する厳しいロックダウンに踏み切りました。
「すべて閉まっているというのはもちろんつらいし何もできない」
「人が全然いなくて何か寂しい感じがする。ロックダウンがベストな選択だと言われているし、そうであってほしい」
ロックダウンの影響はこんなところにも・・・
オランダでは、クリスマスの数週間前から室内をデコレーションするなど準備を始めます。当日は10人近くの家族や親せきが集まりパーティーを開くそうです。
しかし、こちらのウメルスさん一家は今年、家族4人だけのクリスマスに。自宅に呼べる人数が制限されたからです。
(ヘニー・ウメルスさん)「もう2年間も両親とクリスマスを過ごせていません。これが当たり前になってしまいました」
Q. 以前のようには過ごせないのですか?]
「そうなんです」
(レイラ・ウメルスさん)「レストランもすべて閉まっています。テイクアウトしかできません」

先月13日、感染者の急増を受けたオランダ政府が「部分的なロックダウン」に踏み切ると、抗議デモが暴動に発展。
ハーグでは警官5人が負傷、19人が逮捕される事態になりました。

先月25日に過去最多の感染者数を記録しますが、ロックダウンの効果か、その後は減少に転じていました。しかし、その矢先・・・
(ルッテ首相)
「端的に言うと、オランダはあすからもう一度ロックダウンに入ります。クリスマスの1週間前に行われることにオランダ全土からため息が聞こえてきます。またしても望む姿とは全く違うクリスマスです」
より強力なロックダウンの導入がわずか10時間後に開始されると突然発表したのです。
大きな反発が予想される中、なぜこの時期にロックダウンに踏み切ったのでしょうか?

(現地ジャーナリスト 村山祐介さん)
「一言でいうとブースター接種の遅れということだと思います」
3回目となるワクチンの追加接種。進んでいるとされるイギリスが55%なのに対し、オランダは16%に留まっています。

(現地ジャーナリスト 村山祐介さん)
「この点、ルッテ氏も地元紙のインタビューで、ブースター接種の遅れ、そして市民とのコミュニケーションがうまくいかなかったという点については失敗だったという風に認めています。ブースター接種がいきわたっていない段階でオミクロン株が来て、1月には医療の逼迫が避けられないだろうということで、ロックダウンをかけて時間を稼いで、その間にブースター接種を加速させるというのが今回のロックダウンの狙いです」

2年連続となるクリスマス期間中のロックダウン。
(現地ジャーナリスト 村山祐介さん)
「アムステルダムの中心部にある商店街です。先ほどまで静まり返っていたんですけど、12時になると同時にいろんな方々が店から出てきて、フライパンやラッパを鳴らし始めました。政府のロックダウンに対する抗議の意思表示です」

4月に自分のレストランを開店したばかりの男性は1年も経たずに閉店を検討せざるを得ない状況に追い込まれています。
(レストラン店主 ロブ・アウアケークさん)
「こちらが私の店です。ご覧の通り、店内も棚の中も空です」
クリスマスに向けて食材を仕入れていましたが、すべてを廃棄処分しました。
「冷蔵庫や引き出しもすべて空です。悲しくなりますが仕方ありません」

店内営業を禁止されたこちらのボードゲームの専門店は、かき入れ時なのに売り上げが9割も減っています。
(ボードゲーム店 マレク・ドレデレさん)
「今回は青天の霹靂でした。政府の対応がいい加減なんです。(追加接種について)もう少しうまく対応できたはずなのに」

▽“ウイルスと共存”選んだオーストラリア
オミクロン株に対し“都市封鎖”を行ったオランダ。一方、南半球のオーストラリアが行ったのは“規制の緩和”です。
(現地ジャーナリスト 平野美紀さん)
「クリスマスシーズンは真夏のオーストラリア。ビーチにはこのようにたくさんの人たちがサーフィンのなどをしに遊びに来ています」
「クリスマスは大好きです。夏なので良いですよね」
Q. 新型コロナの状況については?
「関心はありますが、ビーチは気持ちいいし。外なので大丈夫です」
(現地ジャーナリスト 平野美紀さん)
「レストランにはこのようにたくさんの人たちがクリスマスランチを楽しみに来ています」
街でも多くの人が真夏のクリスマスを楽しんでいます。オーストラリアは15日、マスク以外のほぼすべての規制を解除。海外からの入国も解禁し、水際対策も大幅に緩和したのです。

すでに日常を取り戻したかのように見えますが、実は、ニューサウスウェールズ州では感染者数が連日、過去最多を更新し、25日も6000人を超えています。
シドニーで行われた音楽イベントでは97人が感染する大規模クラスターも発生。地元の保健当局は新規感染者のおよそ8割がオミクロン株だとみています。

厳しい“ゼロコロナ政策”によって感染者数を抑え込んできたオーストラリアですが、8月以降、感染者が急増し、今月に入るとオミクロン株の影響とみられる感染爆発が起きています。なぜこのタイミングで大幅な規制緩和に踏み込んだのでしょうか?

(スコット・モリソン首相)
「どのようにオミクロン株と共存していくのか模索しなければならない。でも我々はロックダウンには戻りません。人々の生活を制限することはありません。ウイルスと共存するため前に進みます」

16歳以上のワクチン接種率が90%以上に及んだとして“ウイルスとの共存”を決断したモリソン首相。
オミクロン株の重症化リスクは低いとして今後は、感染者数より集中治療室(ICU)の患者数を重視するとしています。

政府の決断の背景にあるのは、厳しい規制による“経済への深刻なダメージ”だといいます。
(現地ジャーナリスト 平野美紀さん)
「何度も何度もロックダウンが繰り返されので、もうこりごりという人が多くて、すごい不満、もう引っ越したいという人がいましたけど、そこの反発がすごく大きくて、たまたまこの(規制緩和の)時期がオミクロン株のすごくたくさん感染者が出る時期に重なってしまった」

10月までの約100日間ロックダウンされていたニューサウスウェールズ州では、外出は原則禁止で買い物は自宅から5km以内。マスク着用が義務付けられ、外での運動も1日1時間しかできませんでした。
そのためオーストラリア各地でデモが頻発。ロックダウンの解除を求める声が日増しに高まっていたのです。
政府の決断を人々は好意的に受け止めています。
市民は・・・
「少し心配ですが(経済を)再開させ日常を取り戻さなければ」
「入院者数が少ないままなのでそれほど不安ではないと思います。日常に戻りたい。ロックダウンはもうこりごりです」
たしかに感染者数は爆発的に増えていますが死者数は1日10人以下で今のところ増えていません。

一方、専門家は、“オミクロン株のリスク”を考慮していないと政府を批判します。
(メルボルン大学 臨床疫学 ナンシー・バクスター教授)
「政府の戦略は基本的にワクチンだけです。それ以外の対策は重視していません。政治的に都合がいいのだと思います。最終的に政府が正しく(オミクロン株は)深刻化しないかもしれませんが、最善の結果を前提とした楽観的な計画はやめるべきです。」

12月26日『サンデーステーション』より
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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