【独自】製鉄所の司令官「人道回廊で避難できず」 ロシア「あと1時間で掌握する」(2022年4月21日)
アゾフスタリの製鉄所では、多くの子どもなどが避難を続けています。ロシア側に抵抗を続けるアゾフ大隊の司令官が番組の取材に応じ、「人道回廊での避難はできていない」と、主張しました。一方、ロシアの特殊部隊は約1時間後の日本時間21日午後6時にも、この製鉄所を掌握すると声明を出しています。
最前線を指揮する司令官が応じた、異例ともいえるインタビュー。
ウクライナ・アゾフ大隊、ジョリン・マキシム司令官:「ロシアは特に過酷な一線を超えた」
製鉄所の子どもたちの安否はどうなったのでしょうか。
AP通信が撮影したマリウポリの学校の映像です。親ロシア派は、対面授業が再開したと主張しています。ただ、教科書を見ると・・・、ロシア語です。人道支援としてロシアから提供されたものです。
掲示板には「祖国のために!ロシア人のために!」と書かれたスローガンが掲げられています。
教師:「子どもたちは喜んでいます。生き残って再会できたのがうれしいようです」
ロシア、プーチン大統領:「我々はドンバス地域が日常を取り戻し、より良い方向に進むよう一貫して行動している」
ロシア側が“日常”が戻りつつあると主張するのとは対照的に、街は荒んでいく一方です。
人々は、わずかな雨水をため、しのいでいます。
現在も、過酷な状況に追い込まれている場所があります。
ウクライナ・アゾフ大隊、ジョリン・マキシム司令官:「飲料水はとっくになくなった。軍人も民間人も皆、工業用の水を飲んでしのいでいる」
黒煙が上がるアゾフスタリ製鉄所です。その製鉄所を守る「アゾフ大隊」の司令官。降伏勧告の夜8時から3時間後の20日夜、番組のインタビューに応じてくれました。
ウクライナ・アゾフ大隊、ジョリン・マキシム司令官:「兵器や弾薬がある限り、アゾフ大隊は戦い続ける」
最前線の指揮官が、インタビューに応じるという異例の状況。限界を超えた、危機感からです。
ウクライナ・アゾフ大隊、ジョリン・マキシム司令官:「薬がだいぶ前に切れた。痛め止めも消毒液もない。そういう状態で不衛生ななか、手術を行わなければいけない状況だ」
チェチェン特殊部隊の指揮を執るカディロフ首長。日本時間の21日午後6時ごろに陥落すると、自信を見せています。
チェチェン共和国・カディロフ首長:「皆にめでたいニュースを伝えたい。ランチ前かランチ後(日本時間午後6時)には製鉄所はロシア軍に完全に掌握されるだろう。このニュース気になりますか」
アメリカの元陸軍中将の分析も、絶望的なものです。
元米陸軍中将、マーク・ハートリング氏:「マリウポリは現実的にもうできることはありません」
その状況に朗報がもたらされたのは、20日のことです。
マリウポリへ出発するのを待つ、多くのバス。日本時間の20日午後8時“人道回廊”を設置することで合意されたからです。
ウクライナ大統領顧問:「きょう(20日)、マリウポリからの人道回廊が発表された。この情報を得た人は、なるべく人道回廊を利用し避難してほしい」
ルートは、マリウポリから海沿いを走り、トクマク、オリヒウを抜け、ザポリージャへ向かう約300キロの道のりです。バスは90台、市民6000人が退避できるとしています。
先ほどのバスは、オリヒウからマリウポリへ人々を迎えに行くバスです。
ゴールとなるザポリージャ。比較的安全とされる南部の町です。のどかな景色が広がる街中、人々は祈りにも似た思いで待っています。
ザポリージャ市民:「避難する人を見るのはつらい。すごく心配しています」「戦争が終わり、子どもたちが死なないことを祈っています」
そのザポリージャで、一日千秋の思いで待つ人がいます。
マリウポリテレビ、オシチェンコ社長:「マリウポリに今10万人以上の民間人が残っていると伝えたい。子どもも数万人いる。皆を救わないといけない」
マリウポリテレビの社長です。自身はザポリージャに退避しましたが、今も半数近くの社員が行方不明です。
6000人を移動させる今回の人道回廊では、少なすぎると訴えていますが、そもそも、成功に不安を抱えています。
マリウポリテレビ、オシチェンコ社長:「人道回廊が成功することを願っているが、残念ながら、この1、2カ月のロシアの行動を見て信用できないことは分かっている」
不安は的中したのでしょうか。
情報が錯綜しています。ロイター通信が伝えた“人道回廊”で避難する人々の様子です。
避難する市民:「ザポリージャの姉妹の所に行きます」「向こうには、息子たちが待っています」
多くの人がバスに乗り、避難している様子を伝えています。
ただ、バスには「Z」マークが記され、白い布を巻いた親ロシア派の兵士の姿も見えます。ロシアが、人道回廊が機能したことを主張する狙いでしょうか。
ウクライナは、真っ向から否定しています。
ウクライナ、ベルシチュク副首相:「残念ながら、きょうのマリウポリからの人道回廊は計画通りに機能しなかった。ロシア軍が現地の部隊を統率できず、避難に必要な一時停戦を守らなかった」
人道回廊が開始されてから30分後には、攻撃があったとして中止したことを発表しました。
同じ時刻に、降伏勧告を受けたアゾフスタリ製鉄所。徹底抗戦を続けています。
ウクライナ・アゾフ大隊、ジョリン・マキシム司令官:「ロシア軍は前回と同様、降伏勧告を無視され、2つの小隊が撃退された」
インタビューした時間は、人道回廊が設置されて3時間後です。
指揮系統が機能していないためか、ロシアの攻撃が続き、とても避難できる状況にないとしています。
ウクライナ・アゾフ大隊、ジョリン・マキシム司令官:「敷地内の一部は今も爆撃されているし、避難させてくれない。現在10万人くらいの人々がマリウポリの地下室などに隠れているが、ほとんどはアゾフスタリ製鉄所にまだいる」
その多くが地下室に取り残されたままだと話します。
地下通路まで続く、強力な爆弾が容赦なく落とされています。
ウクライナ・アゾフ大隊、ジョリン・マキシム司令官:「地下シェルターを破壊するための強力な爆弾だ。1週間くらい民間人が隠れているシェルターに落とされている。ロシアは軍人ではなく、民間人を殺しているのは分かっているはずだが、それを楽しんでいるようだ」
ゼレンスキー大統領は、民間人の安全な通行と引き換えに、ロシア軍の捕虜を交換する用意があるとしています。
ゼレンスキー大統領:「我々は、わが国民とロシア軍捕虜との交換を様々な形で行うことも辞さない」
21日午後2時半ごろ、ウクライナは、4台のバスがマリウポリを出て、ベルジャンシクに到着したと発表しました。
ウクライナ、ベレシュチュク副首相:「きのうの人道回廊で、4台のバスが避難できました。市民はベルジャンシクに泊まって、バシーリブカに向かっています。ザポリージャで皆さんを待っています」
ただ、製鉄所の攻撃はやんでいないようです。
日本時間の午前2時半、人道回廊設置から6時間経過した後、アゾフスタリ製鉄所を守る兵士が声明を出しています。
アゾフ大隊・副司令官:「ロシア側が『攻撃の一旦停止』を発表したにもかかわらず、約束を破り攻撃がずっと続いている。民間人はまだ安全に退避できていない。言葉だけではなく、攻撃を止めてほしい」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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