【解説】「意図的に殺害した」ロシア軍”残虐行為”は他にも【Nスタ】

【解説】「意図的に殺害した」ロシア軍”残虐行為”は他にも【Nスタ】

【解説】「意図的に殺害した」ロシア軍”残虐行為”は他にも【Nスタ】

ウクライナ・ゼレンスキー大統領は4月5日、国連安保理でのオンライン演説で、「ロシア軍による戦争犯罪で多くの市民が犠牲になった」と訴えました。非人道的兵器の使用も指摘されるロシア軍の実態など、外交、安全保障に詳しい明海大・小谷哲男教授に聞きました。

■ゼレンスキー大統領「ロシア軍は意図的に殺害」 ロシアの残忍行為の背景とは

渡部峻アナウンサー:
ロシアによるウクライナ侵攻が始まり、6週間近くが経とうとしています。

アメリカの国防総省の高官によると、「ウクライナ首都キーウ周辺にいたロシア軍のうち、3分の2以上が撤退し、ベラルーシに集結している」と話しています。そこで体制を強化し、ドンバスやドネツク、ルハンシクなどの地域での戦闘に参加するという見解を示しています。

キーウ近郊のエリア、ボロディアンカ、ブチャなどで被害がありました。
このエリアについて、ゼレンスキー大統領は国連安保理会合で、常任理事国・ロシアがいるなか、「ロシア軍は意図的に人々を殺害した。女性や子どもを家の外で殺害し遺体を燃やした。第二次世界大戦後、最も恐ろしい戦争犯罪だ」と話しました。

ボロディアンカという地域では犠牲者の数がブチャより多いとみられています。
AP通信によると、この地域は3月末、ウクライナ側が奪還したというふうに報じています。ただ、ウクライナの検事総長は「キーウ州で最悪の状況である」というふうに話しています。

これに対し、ロシア・ラブロフ外相は「ウクライナとの交渉を決裂させる口実を見つけようとしていると考えられる」と反論。ネベンジャ国連大使は「ウクライナが自国民を殺している。きょうもまたロシア兵や軍に関する多くの嘘を耳にすることになった」と反論をしています。

ホラン千秋キャスター:
調べれば何が真実か分かるような主張を、なぜロシアは続けているのでしょうか?

外交、安全保障に詳しい明海大・小谷哲男教授:
ロシアにとって、嘘というのは1つの大きな武器なんですね。自分たちの行動を正当化する、それから敵や国際社会を混乱させる、かく乱する、そのために平気で嘘をつくというのをこれまでもやってきました。今回も明らかに、ロシアが嘘をついてることは分かっているのですが、ロシアの中で完結すればいいんですね。国際社会が信じる信じないは関係なくて、自分たちが自分たちの立場を主張した、それだけで彼らは満足するということです。

ホランキャスター:
ロシア軍が残忍な行為を行う背景には何があるのでしょうか?

小谷教授:
いわばロシア軍の伝統でありまして、戦争になった時に民間人を意図的に攻撃するということを、これまでも繰り返してきました。それによって、敵に恐怖心を与える、自分たちの目標をより達成しやすくするということだと思います。

■投票棄権のインドも 国連で初めてロシアを批判 

井上貴博キャスター:
これまで国連決議の場で投票棄権をしていたインドが、今回初めて国連の場でロシアを明確に非難するという声明を発表しました。やはり中国、インドをロシアから引き剥がすという意味で、この発言はどう捉えていらっしゃいますか?

小谷教授:
インドに関しては、やはり民間人が大量に虐殺されているというイメージが、インド国内でも当然広まっていますし、そういった映像を受けてもロシアの肩を持つということは、インド政府としても難しくなってきたんだろうというふうに思います。対ロシア包囲網を敷く上でも、インドをこちら側に引き込む機会が訪れているというふうに思います。

■「枕の下に地雷」「クラスター爆弾」 撤退地域にも残るロシア軍の残忍な行為

渡部アナウンサー:
他にもロシア軍によるとみられる非人道的、残忍な行為の痕跡がみられています。
ウクライナ軍のボランティアのボフダン・ルカシュクさんによると、撤退した地域にロシア軍は地雷や手りゅう弾を残していったということです。そのため住民は、まだ戻らないようにと言われているのだということです。
さらに、キーウ近郊には、「犬の死骸や民家の枕の下などに地雷が仕掛けられた例もある」と話しています。

ロシア軍は、これまでも民間の施設に非人道的な兵器を使用した疑いが指摘されています。
その1つが「クラスター爆弾」と呼ばれるものです。空中で数百の小型爆弾が飛散し、広範囲に無差別攻撃をするというもの、非人道兵器と言われています。
イギリスの調査報道機関「ベリングキャット」は、このクラスター爆弾をロシアが使用したと報じています。告発記事は「ウクライナの民間人によって記録されたクラスター爆弾使用の痕跡」というタイトルで、記事によると、「クラスター爆弾の残骸がウクライナ国内で多数見つかった」ということです。民間人の住む住宅地、病院、さらには幼稚園にも使用した可能性があるというふうに報じています。

ホランキャスター:
停戦が見通せないということになりますと、ロシアの残忍な行為は一体どこまでエスカレートしていってしまうんでしょうか?

小谷教授:
今回の件で我々が思い出さなければいけないのが、ロシアというのはプーチン大統領という元スパイが統治している国であるということです。国際法があっても、とらわれることなく、目的を達成するためであれば手段を選ばずに何でもやるという国だということが確認されました。大量に人を殺害できる兵器を、民間施設や民間人に対して使うことは国際法で禁止されていますが、これを平気でやるということだと思います。この先、化学兵器や核兵器の使用ということも念頭に置かなければなりませんが、今回の件で国際社会が強い声を上げることで、化学兵器などの使用を思いとどまらせるチャンスでもあるかもしれません。

井上キャスター:
地図で見るとロシアのすぐ近くに日本があるということでもありますね。

小谷教授:
やはり日本としても国際社会と一緒になって、経済制裁をさらに強化するということは必要ですし、一方でウクライナに対する支援を維持、強化していくということが必要だろうというふうに思います。

井上キャスター:
今プーチン大統領が何を考えているのかってのはもう全く分かりませんか?

小谷教授:
もう全く分かりません。分かりませんが、今の状況で諦めるということはないんだろうと思います。
(06日19:43)

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