ロシア軍の大量虐殺が明らかに…各国非難の“戦争犯罪”とはどんな罪?

ロシア軍の大量虐殺が明らかに…各国非難の“戦争犯罪”とはどんな罪?

ロシア軍の大量虐殺が明らかに…各国非難の“戦争犯罪”とはどんな罪?

ウクライナの首都近郊で多数の民間人の遺体が見つかったことを受けて、ゼレンスキー大統領は、国連の安全保障理事会で「第2次世界大戦後、最も恐ろしい“戦争犯罪”だ」と演説。各国からも同様にロシアを非難する声が。この“戦争犯罪”とはどのような罪なのか。プーチン大統領を逮捕・起訴し、罪に問うことができるのか。専門家を交えて解説します。

■首都キーウ近郊ブチャで民間人の多数の遺体

ホラン千秋キャスター:
ウクライナの首都キーウ周辺の惨状を見ていきます。

井上貴博キャスター:
まずいくつかの新たな情報として、首都キーウ近郊ブチャという街の惨状です。4月4日、ゼレンスキー大統領は300人以上の民間人が殺害されたというメッセージを発しました。

イギリスのサンデー・タイムズの報道では「民家の地下室で両手両足を縛られた子供を含む18人の遺体が見つかった。拷問の跡が見られた」ということです。
国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」によりますと「(ロシア兵が)男性5人をひざまずかせ、Tシャツを頭にかぶせて目隠しをし、そのうち1人の後頭部を銃で撃った」というふうに情報を発表しています。

■“最悪の状況”ボロディアンカでは略奪も

井上キャスター:
特に最悪の状況ともいわれているのがボロディアンカという街です。ウクライナの検事総長は、「ボロディアンカはキーウ州の中で最悪の状況」と発言しています。

ボロディアンカ市長(5日ニューヨーク・タイムズより)
「地下やアパート内で避難していた人の多くが行方不明になっている。想定だが、200人以上の人が亡くなったと考えられる」

住民の声(6日CNNより) 
「遺体で見つかるのは無実の民間人、理由もなく撃たれた」
「宝石も取られた。略奪者と変わらない」

ホランキャスター:
このように日常が奪われてしまって、二度と戻ってこない命を奪われてしまった人もいると考えると、本当に胸が痛いですよね。

食べチョク 秋元里奈代表:
本当にそうですね。2か月前は普通に生活をしていたのにこういった惨状になっているというのは本当に心が痛いです。とにかく早く停戦に持ち込むというところがまず第1だと思うのですが、停戦になった後も、やはりこの責任というのをしっかり追及されなきゃいけないですし、やはり事実を明らかにして、ロシアが攻めたことによって事実として民間人が亡くなっているというところなので、そこの責任というのをしっかり取ってほしいなというふうに感じます。

ホランキャスター:
先日行われた停戦交渉では、首都キーウ周辺への攻撃は大幅に縮小するという話があったのですが、攻撃を止めるということは一切無さそうですね。

外交安全保障に詳しい明海大学・小谷哲男教授:
そうですね、東部への攻撃を強化するということですけれども、その他の地域に関してもミサイルなどで攻撃を続けているようですので、停戦に簡単に応じるような素振りはなかなかロシアからは見えてこないです。

ホランキャスター:
以前、ロシア軍の兵士たちの士気が下がっているのではないかという報道もありましたが、今、民間人の皆さんに行われた残虐な行動を見ますと本当にそうなのだろうかと感じる部分もありますが、いかがでしょうか。

小谷教授:
これはロシア軍が組織的に行っている民間人に対する殺害という側面と、軍の統制が効かなくて個々の兵士が略奪などを行っている、その両方が重なっていると思います。ただ、ロシアは例えばチェチェンやシリアでもこのように民間人に対する酷い殺害を繰り返してきました。国際社会はこれまでチェチェンやシリアで行っていることに十分注意を払ってこなかったのです。それが、ロシアがキーウ周辺でも同じようなことをやっている背景にはあると思いますので、やはりこれを機に国際社会はロシアに対して厳しく対処していかなければならないと思います。

■各国首脳から相次ぐ“戦争犯罪”の非難

井上キャスター:
その国際社会の厳しい対処、何ができるのか、ここ数日、各国のトップが使っている言葉があります。“戦争犯罪”です。

ウクライナ ゼレンスキー大統領
(4月5日、国連安保理)
「第2次世界大戦以降最も恐ろしい戦争犯罪」

アメリカ バイデン大統領(4月4日)
「彼(プーチン大統領)は戦争犯罪人だ」

ドイツ ショルツ首相(4月3日)
「市民を殺すことは戦争犯罪である」

井上キャスター:
この言葉がどんな意味を持ち、国際社会が何をでき得るのでしょうか。

■“戦争犯罪”とはどんな罪?プーチン大統領は裁けるのか

井上キャスター:
戦争犯罪とは、戦争中に起きる国際的な法律の違反で、ジュネーブ諸条約やハーグ陸戦条約などで民間人への攻撃や非人道兵器の使用などが禁じられていることを違反したということ。これが戦争犯罪ということでくくられるわけです。
では、違反した場合はどうなるのか。戦争犯罪を行った個人に対し、今回はプーチン大統領に対しですが、ICC(国際刑事裁判所)が調査し、逮捕・起訴することができる。では、プーチン大統領を逮捕・起訴できたところで何ができるのか。
そもそもロシアという国は、国際刑事裁判所に加盟していません。加盟していない国に対して調査し、逮捕・起訴することが現実問題として出来うるのでしょうか。

お話を伺ったのが、早稲田大学法学部・萬歳寛之教授です。
萬歳教授は「国際刑事裁判所は、逮捕状を発付したとしてもプーチン大統領を逮捕することは難しい」と話します。
狙いとしては今までとあまり変わらないかもしれませんが、萬歳教授は「国際刑事裁判所の調査が国連などのホームページ上に掲載されます。そのホームページをロシア国民が目にする、真実に触れることで国内の反発が強まりプーチン大統領の孤立化に繋がるか」としています。
同じことを欧米各国はずっとやっていますけれども、さほどの効果が出ていない中で、本当にこの行動がどれほどの効果を持つのかということなのかもしれません。

ホランキャスター:
仮に孤立化させたとしても裁くことはできないということなのでしょうか?

小谷教授:
ロシアが直接、国際刑事裁判所の加盟国でないということですので事実上、裁くことは難しいです。ただ、もしロシアで政変が起こって新しい政権ができて、国際刑事裁判所に入るということを決めた際、新しい政府がプーチン大統領を逮捕して、その法廷に突き出すということはできます。あるいは逮捕状が出た場合、プーチン大統領が国際刑事裁判所の締約国のどこかに何らかの理由で行った場合、その締約国が逮捕するということもできますので、やはり逮捕状を出すというところまでは、やって損はないと思います。

ホランキャスター:
今できることはあるのでしょうか?

小谷教授:
今はきちんと証拠を集めて、プーチン大統領の戦争犯罪に関する確固とした裏づけを取って、逮捕状を請求するということをやっておくべきだと思います。
(06日19:29)

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