焦点は『東部ドンバス地方』か 停戦協議“進展”背景に何が?専門家に聞く(2022年3月29日)

焦点は『東部ドンバス地方』か 停戦協議“進展”背景に何が?専門家に聞く(2022年3月29日)

焦点は『東部ドンバス地方』か 停戦協議“進展”背景に何が?専門家に聞く(2022年3月29日)

ロシアとウクライナの停戦協議が3週間ぶりに対面で行われました。

ウクライナ側が出した情報では、4つの大きな項目が検討されているということです。

〇安全保障の新たな枠組みが機能すれば“中立化”に同意
〇ロシアとの最終合意にはウクライナ領土の完全な平和が必要
〇新たな枠組みにはイスラエル、ポーランド、カナダ、トルコが参加する可能性
〇今後15年間のクリミアの地位について、ロシアと協議を提案した

◆ロシア情勢に詳しい、防衛省防衛研究所の兵頭慎治さんに聞きます。

(Q.注目点はどこですか)

これら4点はいずれもウクライナ側が明らかにした情報で、ロシアがどう反応しているのか、どう検討するのかはまだ明らかにされていません。

大きな進展があったのは、中立化と安全保障です。中立化はウクライナがNATO(北大西洋条約機構)に加盟しないこと。ただし、その代わりにウクライナの安全を第3国が保障する。ここに新しくイスラエル・ポーランド・カナダ・トルコの名前が出てきています。従来、ウクライナが主張していたのは、アメリカ・イギリス・トルコの3カ国でした。イスラエルは、ゼレンスキー大統領がユダヤ系でつながりがあります。ポーランドは隣国、カナダはウクライナの移民がいます。そして、今回の仲介を担ったトルコです。ロシアが一番敵視しているアメリカとイギリスを外すことで、ロシアが受け入れやすいようにしたのかもしれません。

(Q.ロシアはどう反応するでしょうか)

ロシアがウクライナの安全保障にどう関わるかは、まだ見えないところがあり、ロシアからすると気になるところだと思います。ロシアメディアのインタビューで、ゼレンスキー大統領は、ロシアとの不可侵条約を結ぶという話をしていました。新たな枠組みとは別の形で、ロシアとウクライナで不可侵条約を結ぶことを考えているのかもしれません。4カ国による安全保障の枠組みに関して、ロシアがどう反応するかが次の注目点になると思います。

(Q.最終合意にはウクライナ領土の完全な平和が必要としていますが、ロシアが実効支配している地域もあります。領土に関して意見の祖語ができませんか)

ウクライナ領土の範囲が問題になると思います。今回、クリミア半島に関して協議すると言っていますが、、事実上、15年間棚上げにするということで、協議の対象から外すことになると思います。ロシアが一方的に独立承認し、軍事的な掌握を拡大しつつある東部2州と、軍事的に抑えている南部を含めるとすると、ウクライナ側からすれば、ロシア軍の即時撤退という話になると思います。

(Q.ゼレンスキー大統領はロシアメディアのインタビューに対し「ロシア軍を2月24日の侵攻前の状態まで撤退させること。それから複雑な東部ドンバスの問題を解決しましょう」と話していますが、どうみますか)

ロシア側からするとハードルが高い条件になります。24日の前となると、ドンバス地方とクリミア半島は事実上、ロシアが実効支配していた所なので、ここに関しては対象としないというニュアンスも出てきます。ドンバス地方とクリミア半島の帰属の問題は棚上げ、場合によっては国民投票をかけたうえで、さらに譲歩するということなのかもしれません。

(Q.プーチン大統領の側近中の側近、パトルシェフ安全保障会議書記は28日「特別作戦の目的は、西側が解釈しているキエフの政権交代ではない。大量虐殺からの国民の保護とウクライナの非軍事化と非ナチ化だ」とコメントしています。ゼレンスキー政権の追い落としはしないと言っているに等しいですか)

そういうことだと思います。最側近の発言はかなり重みがあります。キエフ陥落、ゼレンスキー政権の打倒、傀儡政権の樹立という当初のシナリオから、ゼレンスキー政権の存続は認めたうえで、何らかの協議を行う姿勢に後退したんだと思います。

以前はゼレンスキー政権・ウクライナ軍の全否定をしていましたが、東部2州の脅威を取り除くということで、ロシアが言っている非軍事化・非ナチ化もかなり局地化されてきました。一見、同じことを言い続けているようで、ロシアの主張は弱まってきていると思います。

ロシアがキエフその周辺の軍事活動を縮小するというのも大きな話です。現在、キエフでの軍事作戦は滞っていますが、対話の条件を整えるためにという名目で、キエフ包囲の動きを縮小・停止する可能性が出てきました。軍事的な作戦目標も、キエフから南東部の方に変更する発言だと思います。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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