熱海土石流災害 進まぬ復興計画【現場から、】

熱海土石流災害 進まぬ復興計画【現場から、】

熱海土石流災害 進まぬ復興計画【現場から、】

シリーズ「現場から、」です。静岡県熱海市で起きた土石流災害からまもなく9か月。いまだに熱海市は復興計画を示せていません。「伊豆山に帰りたい」。住民の思いに応えるには、計画策定に向けスピードアップが必要です。

静岡県の担当者
「少しでも多くの人が帰れるようにしたい」
被災者
「工事やってたら出入りが難しいよ」

被災者のもとを訪ねたのは、静岡県などの担当者。土石流で壊れた川の改修やそれに伴う用地買収を説明しました。

田中公一さん(72)は土石流で自宅が全壊。妻・路子さん(70)を亡くし、ここに1人で移り住みました。同じ伊豆山地区の別の場所に家を建て直して戻る意思を固めています。

田中公一さん
「早く復興ができるように俺は協力する。いつでもハンコは押します」

被災者へのアンケートでは、およそ6割の人が伊豆山へ帰ることを望んでいます。

斉藤栄 熱海市長(去年10月)
「にぎわいの拠点を何とかつくれないか」

県や熱海市は、2年後を目標に復旧・復興に取り組むとしてきました。しかし…。

住民
「ちょっと待ってよ!この土石流をいい機会にして、未来見過ぎですよ。イメージ膨らませすぎですよ。被災者を置き去りにしています」

復興を急ぐ行政に違和感をあらわにした住民の訴えに市は方針を転換。町内会などの会合に参加し、地元の声を吸い上げることにしました。

当初、市は復興計画の基本方針を今年度中に示すとしていましたが、5月に延期。さらに、具体的な計画も8月をメドとするなど予定を先送りにしたのです。

熱海市 復興推進室 鈴木肇室長
「早急に進めることが本当にいいことなのかと。皆さまの意見をまずはお伺いする、その意見を計画にどのように反映させていくのか、やはりそこが一番重要だと思っている」

「まだ復興を考えられない」、「早く伊豆山に帰りたい」。2つの声の板挟みとなり、市の復興計画はいまだに明らかになっていません。

2014年、土石流などで74人が犠牲となった広島市の豪雨災害。この時、広島市は具体的な防災対策などを盛り込んだ復興計画を半年ほどで完成させました。

広島市 復興まちづくり担当 金谷寿士課長
「将来の見通しをできるだけ早い段階で示してあげるのが、不安を取り除く意味でも大事」

広島市は復興計画の案をまず提示。説明会に加え、住民向けに常設の面談場所をつくり、計画を日々バージョンアップしていきました。

孫が遊びに来られる家を伊豆山に建てたいと語る田中さん。熱海市は住民の声に耳を傾ける時間を大切にしながらも一日も早く復興計画を示す段階に来ています。
(27日14:40)

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