戦争・地震で露呈 エネルギー危機を厄介者が救う?(2022年3月27日)

戦争・地震で露呈 エネルギー危機を厄介者が救う?(2022年3月27日)

戦争・地震で露呈 エネルギー危機を厄介者が救う?(2022年3月27日)

ロシアのウクライナ侵攻による懸念は、燃料価格の高騰などのエネルギー問題にも及んでいます。ロシアの化石燃料に頼る日本も他人事ではありません。輸入に頼らずエネルギー自給率を高めるためにはどうしたらいいのか。カギを握る風力発電の最前線を取材しました。

▽「エネルギー危機」地震・戦争で露呈
(萩生田光一 経産大臣)
「いわゆるブラックアウト(全域停電)を避けるため、広範囲での停電を行わざるを得ない。」
先日、発生した福島県沖の地震。火力発電所が停止した上、寒波も重なり、電力が逼迫、大規模停電の恐れもありました。
日本のエネルギー自給率は主要先進国の中で最下位の12%。ウクライナ危機もあり「自給率」を上げていくことが課題となっている今、注目を集める場所が-。

▽“厄介者の風”が稼ぎ出す40億円
「冬の日本海は大荒れです。きょうは吹雪いているのですが、今、秋田には非常に多くの風車が立てられていて、この吹雪の中でも回転し続けています。そして今、この風が秋田を変えようとしています。」
海岸沿いに連なる無数の風車。実は、秋田は今、風力発電の導入量で全国トップクラス。秋田で風力発電事業を牽引してきた一人がウェンティ・ジャパンの佐藤裕之社長です。
「風車がグルングルン回ってますね。すごいですね。」
「すごいですね。」
(ウェンティ・ジャパン 佐藤裕之社長)
「私が子供の頃なんて学校に行くには雪つぶてが顔に当たりながら通った “厄介者の風”が今、秋田の経済を変えようとしているということで、ある意味、逆転劇かもしれない。」
ここは佐藤社長らが運営する「潟上ウィンドファーム」。22機の風車が回っており、およそ4万世帯の電力を賄っています。
(佐藤社長)「大体、年間で40億円前後の売電収入を得ることができる。」
Q.何もなかった場所に強風で40億が生まれている?」
(佐藤社長)「そうです。」
秋田県ではおよそ300基の風車が回り、65万kWhもの電力を生み出しています。これは県内の総世帯数を上回る電力量です

建設計画はさらに進んでいて、経済効果は3800億円、雇用は3万7千人以上生まれると試算されています。
地元で建設会社を営んでいた佐藤さんが、風力発電事業に参入したきっかけ、それは・・・
(佐藤社長)「3.11東日本大震災で日本が原子力含めて電源を失ったということがきっかけだと思います。あの時は秋田も、実はあまり報道されていませんが、やっぱり数日間寒い中、停電もありましたし、電源を失って町が真っ暗になる、暖も取れない。やはり電力って本当に大切なんだなと。」
そこで思い至ったのが、電力の地産地消。人口減少や経済の低迷が問題となっていた秋田に、再びあかりを灯そうと動き始めたのです。

▽風車を回し“植民地”から脱却へ
しかし、秋田で発電事業を行ってきたのは、県外資本の大企業がほとんどでした。
(佐藤社長)「秋田という土地に特有のこの風を中央資本のみなさんが使って、それで売電をして、その利益は東京におりる。まさにその構造は「植民地」だなと。これは非常に地元の人間にとって悔しい思いをするところで。」
“植民地”からの脱却。そこで佐藤さんが考えたのが地元で手を取り合い、一丸となって挑むことでした。

実は、ウェンティ・ジャパンは地元の北都銀行や、中小企業などが出資し設立された会社。さらに、佐藤さんは部品の製造やメンテナンスなどを地元で担おうと、企業連合「秋田風作戦」を立ち上げたのです。
(佐藤社長)「地元っていうのはやはり置いてけぼりになっちゃいけないんじゃないかと。やはり自分たちの大事な地域資源は自分たちが活用する。それが「秋田のプライド」だと思っているんです。」
現在では110社以上が参加しており、地元の企業がまとまることで、大企業と渡りあっているのです。

すでに、地域経済も回り始めています。機械設計や大型部品などを作っている三栄機械。
(三栄機械 齋藤民一会長)「風車っていうのは設置するだけじゃなくて30年も使われていく訳でしょう。ものすごい投資額でしょう。それが目の前にきたというのは本当に大きなチャンスだと思います。」
飛行機など大型の精密部品を作ってきた技術を生かし、4年前から、風車の基礎部分に当たる「アンカープレート」と呼ばれる部品を作ってきました。

Q.風車関連の仕事の売り上げは?
(齋藤会長)「2~3億くらいにはなっていると思います。非常に(秋田に吹く)風なんて本当は嫌だったんですよ。ところが考えようによっては逆にそれが今みたいになるんですよ。」
若く優秀な人材も集まってきています。
Q.これからどんな作業を?
「メンテナンスを行います。」
風車のメンテナンスや管理を行う、羽後設備の松尾到さん(31)。
「(オーストラリアの)理工学部のクイーンズランド工科大学というところを卒業しているので。どんどん風車の仕事が増えていっているので、若い人たちが来ていただけたらすぐに仕事の場を広げられると思います。」
世界と戦えるグローバルな人材も育ってきているのです。

この日、佐藤さんの姿は東京にありました。
Q.これからどちらに?
(佐藤社長)「今日は風車メーカーのGEさんと打ち合わせがあって来ました。」
すでに、次の大きな挑戦が始まっています。

日本政府が原発45基分の導入を目指し、主力電源と位置付ける洋上風力発電。
大手電力会社ら強豪が名乗りを上げる中、その最大級の開発事業に、佐藤さんらが選ばれたのです。

「おめでとうございます。」
(佐藤社長)「もう当日はもうみんな震えながら電話して。」
(GE 大西英之さん)「本当に再エネが新しいフェーズに入った瞬間ですよね。」
風車はGE製、65基を建てる予定です。洋上風力は陸上よりも安定的に風が吹くうえ、太陽光発電と違い悪天候でも電力を供給できる強みがあります。

(GE 大西英之さん)「日本って一気に形勢が変わるようなポテンシャルを持ってると思うので。今まで(再エネは)ダメだった、今まで遅かったというのは、一概にいう必要はないと思いますね。」

佐藤さんたちが選ばれた大きな要因が売電価格11.99円/kWhという安さ。
現在の発電コストを見てみると、石炭火力や原子力とほぼ同じ水準。地元で部品を調達するなどコスト削減につとめ「日本の再エネは高い」という概念を打ち破り、業界に衝撃を与えました。

Q.洋上風力はどのあたりに?
(佐藤社長)「この沖合2kmぐらいのところにずっと数十機並んでくる。」
ここが洋上風力の建設予定地。完成すれば60万世帯を賄える規模になります。
(佐藤社長)「この風という資源で、一気に豊かなところになる、そして日本を支えるという地になるんじゃないかと思っています。」

ロシア軍のウクライナ侵攻、そして大地震による火力発電所の停止。安定供給の脆弱性が露呈された今、エネルギー自給率向上のカギを握るのが、洋上風力発電なのです。
(佐藤社長)「平和な時代は世界の協力のもとで比較的安定したエネルギーを、安定した価格で日本は調達できたけど、それは未来永劫続くという保証はないよということなわけですよね。あまり国防って言いたくないけど、だけどやっぱりエネルギーは自前で調達するということは、実は大事だってことにもっと気付くべきだろうということですよね。」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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