慣れない生活で疲労色濃く・・・大越キャスターが見た“避難所のいま”(2022年3月15日)

慣れない生活で疲労色濃く・・・大越キャスターが見た“避難所のいま”(2022年3月15日)

慣れない生活で疲労色濃く・・・大越キャスターが見た“避難所のいま”(2022年3月15日)

ウクライナ国境から車で1時間ほどの街・ジェシュフ。500人を収容できる避難所には、約200人が身を寄せています。食堂はもちろん、臨時のシャワールームもあります。

支援物資の配給所には、子ども用のおむつや、毛布などがあります。施設には、子どもたちの遊び場もあります。笑顔には、ほっとしますが、父親と離れ離れの子がほとんどです。

約1000キロを列車と車を乗り継いできた親子。母親は、息子に戦争のことをどう説明していいかわからないといいます。
3歳の息子と避難の母親:「夫はウクライナに残り、ウクライナのために戦っている。私も残りたかったけど、夫に子どもと避難するよう言われた。大人は、子どもたちに世界に暴力があると教えないようにしている」

この施設にいられるのは原則2日。その間に、親戚や知人を頼ったり、ボランティアの支援で受け入れ先を探さなければなりません。

9歳のミハエルくんは、おじいちゃん、おばあちゃんのリンディック夫妻と、南部・オデッサから避難してきました。黒海に面するオデッサは、軍港などもある軍事拠点。リンディックさんの息子は、海軍に勤めています。
オデッサから避難リンディック夫妻:「本当はウクライナに残りたかった。残って武器を持ち、故郷を守りたかった。でも息子に『子どもを守ってくれ』と。私の孫です」

9歳の孫を連れての避難生活。温かい食事などの支援に感謝するリンディックさんですが、ただ、思い浮かべることがあります。
オレクサンドル・リンディックさん:「家で食べる料理のように、とても美味しかった。ただ、残念だが、食べ残しをする人もいる。私は食べきれない量は絶対に取らない。防空壕の中で、飢えに苦しむ人々がいっぱいいるというのに」

この日、ミハエルくんは、食あたりで寝込んでいました。避難所では、慣れない生活に体調を崩す人も少なくないといいます。
避難所の看護師:「長距離を歩き足がはれた人、熱がある人、高血圧の人もいる。さまざまは感染症もはやっているため、ほかの病気にかかっている人もいる」

ミハエルくんとリンディックさん夫妻は、息子の妻が仕事をするアイルランドに向かうと決めました。3人を待つのは、言葉も文化も違う国での生活です。
大越健介キャスター:「日本は遠い国だけど、皆さんのことをとても心配している。どんなことを伝えたいか」
オデッサから避難リンディック夫妻:「メディアが、この状況を伝えることで、私たちは助けられている。私たちが置かれている状況を世界の皆さんに知ってもらいたい」

◆大越健介キャスターの報告です。

この取材は、非常に緊張感を伴うものでした。相手は傷ついた人たちです。日本でも大きな災害のあと、避難所が設けられて、そこで取材をすることがありましたが、そこでも非常に緊張感を持って取材にあたりました。このシェルターに到着して、荷物をほどいた瞬間に、涙があふれ出した若い母親の姿もありました。そして「小さな子どもたちには、戦争というものを見せたくない。だから避難してきた」と話している母親が多かったように思います。そして、一人ぽつんとスマートフォンをいじっていた14歳の男子中学生にも話を聞きました。「離れ離れになった友だちとSNSで連絡を取り合っている」と話していました。私が取材したシェルターは、通信環境が十分に整えられています。いまの時代、厳しい環境にあっても、そうして通信で連絡を取り合うことができる。こうした手段は、重要なライフラインなんだと、合わせて感じました。

取材したシェルターに滞在できるのは、原則2日です。次に向かう場所、当てがある人もいれば、行く当てのない人もいます。当てのない人は、シェルターでの情報をもとに、あわただしく次の場所へ移動しなければなりません。

そして、長旅の疲れか、体調の悪化を訴える人もいるそうです。ボランティアで働いている看護師は、「足がむくんで痛い」という人が多いと話します。そして、看護師が最も心配していたのは、若い子どもたちの心のダメージです。「2歳、3歳の子どもならまだしも、10歳を超えた思春期の子どもたちが、今回の経験によって受けるトラウマが心配。自分たちは、一生懸命に話を聞くことが仕事だが、それと同時に、それは難しい仕事でもある」と話していました。

(Q.避難者の数が増えると、ポーランドをはじめとする周辺国だけの受け入れ態勢に限界がきてしまうのではないでしょうか)
こちらで取材をしていても、「受け入れは、どうしても限界がある」とよく耳にします。ポーランドの外相は、国連本部での記者会見で、「ポーランドも含めて自国だけで対処する国があるとは思えない」と述べ、世界各国に支援の協力を求めました。ポーランドには、すでに180万人を超える避難民が入ってきています。

世界が支援を求められている。それは、地理的に離れた日本も決して他人事ではありません。こちらでよく聞くことがあります。今回の人道危機は、ロシアの軍事進攻によってウクライナで起きていることだが、もう一つ、大事な側面がある。それは、力でねじ伏せようとする独裁者に対して、人の命や、国の主権を大切にする民主主義がどう戦うかだという声です。確かにその通りだと思います。ここで出会う多くの避難民。その人たちの悲しげな目、その人たちが投げかける視線は、そのことを強く訴えかけているように思います。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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