原発事故で“住民ゼロ”の街「壁画アート」で双葉町に彩りを 最後の作品に込めた想い(2022年3月14日)

原発事故で“住民ゼロ”の街「壁画アート」で双葉町に彩りを 最後の作品に込めた想い(2022年3月14日)

原発事故で“住民ゼロ”の街「壁画アート」で双葉町に彩りを 最後の作品に込めた想い(2022年3月14日)

 巨大な壁に向かってペンキやスプレーで“一心不乱”に画を描く人たち。ここは、東日本大震災による原発事故の後、唯一すべての住民の避難が続いている福島県双葉町です。

 街は11年もの間、人は住むことができず、老朽化した空き家は撤去されたり、手つかずのまま廃墟となったり・・・。

 「無人の街・双葉」に、巨大壁画を手掛けるのは東京にあるアート制作会社「OVER ALLs」です。

 壁画を見に来た人:「上手だ。すごいすごい。びっくりした」

 これまで、全国各地でビルの壁やオフィスを彩る作品を描き続けてきました。

 OVER ALLs・赤澤岳人代表:「(原発)事故があって住民がゼロになったような街で、『楽しい』とか『面白い』とあまり言っちゃいけないような気もするけど、未来に進んでる人たちいっぱいいるから、だから僕たちはあえて面白いことやろうと」

 そして、彼らと思いをともにしているのは双葉町で生まれ育ち、現在は東京で飲食店を営む高崎丈さん(40)です。

 荒廃した『原発事故の街』というネガティブなイメージを、色鮮やかなアートで変えたい・・・。

 高崎さんがそう思ったきっかけは、偶然、目にした有名な観光地の成功事例だったそうです。

 プロジェクトに携わる双葉町出身・高崎丈さん:「『廃墟となった造船所』というワードと『止まっている双葉町』というところが、自分の中ですごくリンクした部分があって。違う形として生まれ変わるということが現実的に起こっているということを知られたこと自体が、自分の中では『できないことじゃないんだな』って」

 そんな彼らの思いのもと、1年半前「住民ゼロ」となってしまった街に壁画を制作する「FUTABA Art District」というプロジェクトが始まりました。

 最初に描かれたのは高崎さん自身の左手です。

 OVER ALLs・赤澤岳人代表:「更地だろうが何だろうが関係ない。ここは俺たちの街だ。ここからもう一回始めるぞっていうアートがあれば、少し気持ちが報われるなって思ったから、最初のアートはHERE WE GO(さあ 始めよう!)」

 これまで駅前の「一等地」に描かれた多くの壁画。街の名物女将や、にぎわいのあった時の「街の記憶」が刻まれています。

 OVER ALLs・赤澤岳人代表:「10年ぶりに帰ってがっかりしながら街に入っていくのか、駅降りた瞬間に『何やあれ』って笑ってしまうのか、この差っていうのはむちゃくちゃ大きいと思って」

 第8弾となる今回の作品では、プロジェクトを支えてくれた地元住民などの笑顔が描かれています。

 そして、そのなかには高崎さんも・・・。

 プロジェクトに携わる双葉町出身・高崎丈さん:「これまで僕1人ではできないことを皆さんがいたからやれてきたというのがあるので、そういった意味で皆さんと描いてもらっているのはあがたいなと思う」

 OVER ALLs・赤澤岳人代表:「今回はもう真っ向勝負で、実はこれ一番最初にやりたかったことなんです。アートは未来を示す力があるから、この街に人の笑顔があふれてるような未来を想像させるような絵を入れたいなと思った」

 「再生への架け橋」となった巨大壁画を見に地元住民だけでなく、他県などからも訪れる人たちが増えてきました。

 壁画を見に来た人:「皆笑顔だったり、良いですよね。絵というのは人を動かせると思いました」

 しかし、多くの人に笑顔を届けたこのプロジェクトも今回で区切りを付けるといいます。

 OVER ALLs・赤澤岳人代表:「この絵って東京から来た僕らがやっているということは『よそ者』なんですよね。でも、その『よそ者』が入り込んでいるということが、双葉町って新しいことに対していけるんじゃないって思ってもらえて、そういう一歩が進めたらいいなということを勝手に想像しています」

 東日本大震災から丸11年の今年、双葉町では初めて帰還困難区域の一部が解除され、6月ごろから人が住めるようになる予定です。

 OVER ALLs・赤澤岳人代表:「皆さんの心の中に『何かこの街でもう1回やれるかも』みたいな。ちょっとした後押しになれたら」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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