安倍元総理の国葬「非業の死、大きな実績」 法的根拠は?経費は適正?(2022年8月29日)

安倍元総理の国葬「非業の死、大きな実績」 法的根拠は?経費は適正?(2022年8月29日)

安倍元総理の国葬「非業の死、大きな実績」 法的根拠は?経費は適正?(2022年8月29日)

 安倍元総理の国葬を巡り経費が適正なのか誰が主催するのか、野党によるヒアリングが行われました。その国葬まで1カ月を切るなか、岸田総理の説明を求める声が強まっています。

 来月27日に行われる安倍晋三元総理の国葬費用およそ2億5000万円は、国会の審議を経ずに政府が使い道を決められる「予備費」が充てられます。

 ですが、このなかに会場周辺の警備費用は含まれず予算の全体像は明らかにされていません。

 立憲民主党・山井和則議員:「国葬の総額が全く分からないんですね。警備費や全国の都道府県からの派遣なども含めた国葬関連諸経費の総額はいくらなんですか?これは数十億円になる可能性はあるんですか?」

 内閣府の担当者:「内閣府におきましては、式典本体の準備を担当しているものですから、それ以外の各省庁での費用については把握はしていない」

 立憲民主党・山井和則議員:「そう答えられると思って、各役所から来て下さっておるんですけど、例えば、警備費はいくらですか?国や都道府県かどこが負担するのか」

 警察庁の担当者:「ご質問ございました他の道府県からの応援の警察官の部隊等も含めた全体の警備体制は、まだ不確定ですので、現時点においてはこの場で申し上げる状況ではございません」

 選挙演説中、凶弾に倒れた安倍元総理。

 政府は非業の死を遂げたことも国葬を行う理由の一つに挙げました。

 松野博一官房長官:「安倍元総理の国葬議については、憲政史上最長の8年8カ月にわたり内閣総理大臣の重責を担ったこと、選挙運動中での非業の死であったこと、大きな実績を様々な分野で残されたこと。これを国の公式行事として開催をしその場に海外からの参列者の出席を得る形で葬儀を執り行うことが適切であると判断したところであります」

 参列者については、最大6400人に招待状を送付する方向で調整し、アメリカのオバマ元大統領やドイツのメルケル前首相、インドのモディ首相らの出席が見込まれています。

 ちなみに、安倍元総理とは27回もの首脳会談を重ねたロシアのプーチン大統領は「出席する予定はない」とロシアの報道官が明らかにしています。

 また、29日の野党ヒアリングでは国葬の法的根拠や弔意についても議題になりました。

 立憲民主党・小西洋之議員:「国葬を内閣の判断だけで、しかも閣議決定だけでやろうとしていることが根本の問題で、弔意の問題も出てくれば、法的根拠の問題も出てくれば、お金の問題も出てくる。『国全体として敬意と弔意を表す儀式』を国葬としているのであれば、国民が『弔意を求められてしなければいけない』と思わないように政府として自治体と関係者に通知を出すべきだと思う」

 内閣府担当者:「国としての考え方。誤解を招かないように弔意を求めるものではないと引き続き説明する」

 立憲民主党・小西洋之議員:「国葬の担当大臣は岸田総理でよろしいですか?」

 内閣府担当者:「担当大臣というよりは、内閣府の事務は官房長官」

 国葬を巡っては、戦前の「国葬令」が日本国憲法の制定後に失効。

 戦後初の国葬となった吉田茂元総理の場合、法的根拠がないまま佐藤栄作内閣が閣議決定し、実施に踏み切りました。

 佐藤栄作総理大臣(当時):「故吉田茂氏は周知のとおり敗戦直後の最も苦難に満ちた時代にあって、強い祖国愛に根差す民族への献身と優れた識見とを持って廃墟と飢餓のなかにあった我が国を奇跡の復興へと導いたのであります」

 安倍元総理の国葬も規模などで吉田元総理を参考にしたとされ、岸田政権が先月の閣議で実施を決めました。

 閣議決定を根拠とする運用が55年を経て、受け継がれた形です。

 憲法学が専門の東京都立大学・木村草太教授は時の内閣の評価によって、国葬かどうかを判断することに疑問を投げ掛けます。

 東京都立大学法学部(憲法学)・木村草太教授:「閣議決定のみで行うことについては平等原則との関係が問題になります。首相経験者あるいは公務員を経験した人のうち『なぜ安倍氏だけを特別扱いするのか』ということについて、合理的な理由がなければ平等原則違反の問題が生じます。今回は、岸田内閣のメンバーが功績があると主観的に言っているだけで、客観的な審査や基準に基づかずに国葬という形で功績を称えることが行われようとしています。それでは特別な理由にはならないのではないか。これが問題です」

 木村教授によりますと、安倍氏の「大きな実績」とは岸田内閣の主観的な評価に過ぎず総理の功績の大きさは客観的な評価が必要だと指摘。

 東京都立大学法学部(憲法学)・木村草太教授:「国葬について、政府は『国民全体として敬意・弔意を表する儀式』と定義してきました。しかし、国全体というのは国民全員を指すのであれば国民の敬意、弔意を勝手に表する。これは思想、良心の自由や表現の自由の侵害になりますし内閣のメンバーの敬意、弔意を表するのであればそれは国葬と名付けるべきでなくあくまで『内閣葬』と言うべき、ということになります。今回のような主観的な判断だけで国葬という重大な行事を行ったという前例は残さない方がいいと思います」

 一方、立憲民主党の安住国対委員長は自民党の高木国対委員長と会談し、岸田総理が自ら国会で国葬開催の理由などを説明するべきとの考えを伝えました。

 立憲民主党・安住国対委員長:「国葬で税金使って葬儀をするっていうのを決めた人が(国会に)来て説明しないのは私は結果的には岸田さんにはね返っていく話だと思いますよ。野党に対してというよりも、国民に対してちゃんと正直であれと申し上げたいと思う」

 国葬では、海外から要人を含む参列者も多数いるため、警備体制が焦点の一つとされるなか、事件の責任を取る形で辞職を表明した奈良県警の本部長が改めて語りました。

 奈良県警・鬼塚友章本部長:「本件結果を招いた最大の問題は遊説場所の全方位に対する警戒が必要であったにもかかわらず、安倍元総理の後方にあたる南側の警戒が不十分であり、(山上)容疑者の接近を許した点であると判断されたところであります。当県警としては損なわれた信頼を回復させ県民をはじめ当県を訪れる多くの方々に安全安心を実感して頂けるよう、全力を尽くして参る必要がございます」 (C) CABLE NEWS NETWORK 2022
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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