チェルノブイリ原発“電力切断” タイムリミット48時間・・・「重大事故」の可能性は?(2022年3月10日)
ロシア軍が制圧しているチェルノブイリ原発への電力の供給がストップしました。非常用電源は48時間で止まるとみられ、放射性物質の拡散を懸念する声が出ています。
■ロシア軍が“電力切断”
先月末、ロシア軍が攻撃・占拠したウクライナのチェルノブイリ原発で、重大事故が起きる恐れが出てきました。
差し迫る脅威を、ウクライナの国営電力会社のトップが訴えます。
ケリブニク社長:「本日、ロシア軍の攻撃によって、チェルノブイリ原発への電力供給が、完全に断たれました。現地で軍事作戦が続いているため、復旧作業は不可能です。地球全体にとって、とても危険な事態です」
チェルノブイリ原発が、ロシア軍の攻撃によって、送電線から切り離され、発電所に電力が供給されていないというのです。
敷地内にある燃料プールなどでは、およそ2万個の使用済み核燃料が保管されていますが、電力による冷却がストップし、温度が上昇した場合、放射性物質の放出につながる恐れがあると警告しています。
■タイムリミットは48時間・・・
チェルノブイリ原発は、ロシア軍が占拠した後も、3つある送電線のうち、2つが破壊されたままだったといいます。
ケリブニク社長:「これまでに一度、ロシア軍の了解を得て、修理チームが原発に向かったことがあります。しかし、作業員が頭上から発砲されたため、修理作業を行えないまま引き返しました」
ウクライナ側は、復旧工事をさせるよう求めていましたが、ロシア軍はこれを拒否。そして、1本だけ残っていた送電線が破壊されたというわけです。
ウクライナ・クレバ外相(ツイッターから):「予備電源は48時間しか電力を供給できない。放射性物質が漏れ出る危険が差し迫っています。ロシアの野蛮な戦争は、ヨーロッパ全体を危険にさらしています」
タイムリミットは48時間。このまま放置すれば、11日以降、重大な事故が起きる可能性があるといいます。
■電力切断「復旧させて」
2011年にテレビ朝日が取材した、チェルノブイリ原発の映像です。
廃墟と化した原発施設では、「建物に触らない」「地面に物を置かない」「地面に座らない」などのルールが、取材チームにも徹底されました。
1986年の爆発事故から36年。現在も、チェルノブイリ原発から半径30キロメートル圏内は、立ち入り禁止区域となっています。
悲劇が再び繰り返される可能性は、果たして、どれほどあるのでしょうか。
ウクライナのクレバ外相は、即時停戦と、復旧作業を進めさせるよう、国際社会がロシアに迫ってほしいと訴えました。
今回の電源喪失について、IAEA(国際原子力機関)は、「使用済み核燃料を保管しているプールには、冷却に必要十分な量の水があり、電源を失った状態でも、核燃料の熱を除去できる」と、「安全性に重大な影響は与えないとみている」との見方をSNSで明らかにしました。
■電力切断「拡散の恐れ」
ただ、核問題に詳しい専門家は、楽観はできないと指摘します。
長崎大学核兵器廃絶研究センター・鈴木達治郎教授:「48時間の電源復旧が、まず第一。それができなくても、使用済み燃料のプールの冷却能力は、燃料もずいぶん冷えているので、今すぐ重大な事故につながる可能性は低い。できれば、できるだけ早く、安全に管理できる状況に戻すことが一番大事。戦争状態なので、ロシア軍の行動によっては、何が起こるか分からない。建屋が壊れたり、使用済み燃料のプールが破損すると、水がなくなって、使用済み燃料が露出する事故が起きてしまう。そうなると、放射性物質が大気に出ていく可能性がある」
チェルノブイリ原発は老朽化が進んでいるうえ、建設当時、戦争を想定していたとは考えづらいといいます。
さらに、外部から攻撃などの衝撃があれば、冷却水の容器が壊れ、放射性物質が拡散する可能性があるということです。
(「グッド!モーニング」2022年3月10日放送分より)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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