『人道回廊』設置も・・・戦況激化か キエフ「3方向から包囲」の動き 専門家解説(2022年3月9日)

『人道回廊』設置も・・・戦況激化か キエフ「3方向から包囲」の動き 専門家解説(2022年3月9日)

『人道回廊』設置も・・・戦況激化か キエフ「3方向から包囲」の動き 専門家解説(2022年3月9日)

ロシアの侵攻開始から間もなく2週間、ウクライナ各地で市民の被害は増え続けています。

アメリカ国防総省によりますと、ロシア軍は主に3方向から、首都キエフを包囲するように動いていると分析されています。最も近付いているのは、キエフ中心部から北西の部隊で、約25キロの位置にある空港まで近付いてきているということです。キエフの北東にいる部隊はチェルニヒウに留まり、スムイの北側から進軍した部隊は、キエフの東、約60キロの地点にいるということです。

◆ロシア情勢に詳しい、防衛省防衛研究所の兵頭慎治さん、ロシアの軍事・安全保障政策が専門の小泉悠さんに聞きます。

(Q.いまだキエフを陥落できていないということは、ロシア軍の作戦が失敗しているということですか)

小泉悠さん:「そういう部分はあると思います。ウクライナ軍は、旧ソ連第2位の兵力をもっていますし、ロシア軍はすべての兵力をウクライナに回せるわけではありません。言われているほどロシア軍の兵力が圧倒的ではない部分もあると思います。今回、ロシアは色んな方向から進軍していて、兵力が分散しています。ウクライナの抵抗は微弱で、簡単に瓦解するのではないかという甘い思い込みで始めた結果、攻勢の停滞につながっているのではないかと思います」

(Q.プーチン大統領の心理はどうなっていると思いますか)

小泉悠さん:「プーチン大統領に聞いてみなければ分かりませんが、この作戦計画を見ると、もっと簡単に落とせたはずだという思いはあると思います。現実には、侵攻開始から2週間が経とうとしていますが、首都キエフもハリコフも落とせておらず『早くやれ』というプレッシャーがかかると思います。そうなると、これまではある程度、自制していた住民が住んでいる地域への無差別攻撃を行う可能性が出てくると思います。ウクライナはここまで耐えてきましたが、それゆえにロシア側の反動を心配しています」

兵頭慎治さん:「私も悲観的な見通しを立てています。ウクライナが想定外の善戦をしてきて、ロシアが当初、考えていたような軍事作戦が行われていません。戦況を立て直したうえで、首都キエフの軍事掌握に向けて、総攻撃が行われるのではないかとみています」

一時停戦し、住民を避難させる、いわゆる“人道回廊”が新たに設置されました。南部のエネルホダルやマリウポリから州都ザポリージャに向かうルート。ボルノバーハからポクロフスクへのルート、そして、ロシア軍から攻撃を受けている周辺地域から、まだ制圧されていない首都キエフに向かうルートも設置されています。

(Q.アメリカの議会では『ウクライナの退避ルートの上だけでも飛行禁止区域を設置する』という案が出てきましたが、実現の可能性はあると思いますか)

小泉悠さん:「まず、ルート上空だけできるのかどうかです。このルート上空をパトロールするということは、ポーランドなどのアメリカの同盟国からウクライナ領空に深く入っていって、ロシア国境の近くまで行かなくてはいけません。これだけでも相当リスキーです。飛行禁止区域は、そこを飛んではいけませんというだけではなく、そこにロシアの戦闘機が入ってきたら撃ち落とすということです。これは限りなく戦闘関与に近く、ロシアとの全面戦争になりかねません。ただ、アメリカは時に道徳的な理由で動くことがある国です。善悪のような判断のもとに国民が決まると、考えられないようなことをやる場合があります。今回の場合、アメリカ国民がウクライナで起こっていることをどう判断するのかや、これからハリコフやキエフを陥落させるために、ロシアがものすごい暴力行使をし、ウクライナ国民の死者数が増え、アメリカ国内で『ほっておいてはいけない』という議論になれば、『退避ルートの上だけでも飛行禁止区域を設置』に踏み込んでくる可能性があると思います」

兵頭慎治さん:「避難民の安全確保であれば、アメリカ・NATO(北大西洋条約機構)も一歩踏み込んだ形で軍事的な動きをしてほしいとは思います。他方で、地上でも一時停戦がままならないのに、上空で小競り合いが起きないのか。万が一あった場合、ロシアとNATOの全面戦争に発展する危険があります。NATO側が本当にそこまで踏み切れるかどうかですが、なかなか難しいのではないかとみています」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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