原発事故で避難“住民ゼロ”の街 「壁画アート」で双葉町に彩りを(2022年3月8日)

原発事故で避難“住民ゼロ”の街 「壁画アート」で双葉町に彩りを(2022年3月8日)

原発事故で避難“住民ゼロ”の街 「壁画アート」で双葉町に彩りを(2022年3月8日)

 原発事故の影響ですべての住民の避難が続いている福島県双葉町。「無人の街」に活気を取り戻そうと、男性が壁に巨大なアートを描いています。その「想い」とは。

 壁に描かれた大きな人差し指は、除染が終わり更地となった地面を指しています。

 「さあ、はじめよう!!!(HERE WE GO!!!)」。

 そして、隣には町民なら知らない人はいないファストフード店の名物店主。

 かつて、ここにはつつましくもにぎわいがありました。

 原発事故で「住民ゼロ」となってしまった街に活気を取り戻すプロジェクトを、これから紹介します。

 福島県双葉町から避難し、現在は東京で飲食店を営む高崎丈さん(40)。

 この日、友人らを連れて一時帰省しました。

 東京電力福島第一原発に近いため、高速道路の入り口付近などには放射線量を示す電光掲示板が設置されています。

 町内では11年もの間、人は住むことができず、老朽化した空き家は撤去されたり、手付かずのまま廃墟となったり・・・。

 復興庁などが去年行った帰還の意向を尋ねた調査によりますと、「戻りたい」との答えは11.3%だったのに対し、「戻らない」としたのが60.5%。また、「まだ判断がつかない」は24.8%でした。

 町の未来のため一石を投じる動きもあります。

 高崎さんたちが降り立ったのは、JR双葉駅前にある商店などの跡地。そこで、巨大な壁画アートが目に飛び込んできました。

 双葉町出身・高崎丈さん:「絵の題材が『BACK TO THE FUTABA』と言って、過去に戻ってというか、過去の双葉に戻ってというのをイメージして]

 荒廃した「原発事故の街」というネガティブなイメージを色鮮やかなアートで変えたい。高崎さんは発起人となって、ふるさとにゆかりの壁画を描く取り組みを行っています。

 それはいわば、町の再生を信じる決意表明。

 双葉町出身・高崎丈さん:「ただの廃虚だった所が、作品に生まれ変わる瞬間っていうのが、すごく感慨深いものがいつもあります。地元の方たちに笑ってもらう、少しでも昔のいい思い出を、思い出してもらうために描いてもらっている」

 ドーナツからこちらをのぞく絵のモデルとなったのは・・・。

 飲食店「ペンギン」店主・吉田岑子さん(77):「いやーちょっと恥ずかしい感じが」

 地元で長年、子どもたちなどに親しまれてきたファストフード店を営む女性。

 飲食店「ペンギン」店主・吉田岑子さん:「若者がこれだけ『ペンギン』のことを思ってくれていたんだなと、そのうれしさがある」

 そして、更地を突き刺すこの絵のモデルは、再出発に願いを込めた高崎さん自身の「左手」です。

 アートを使ったプロジェクトを始めたきっかけは偶然、目にした有名な観光地の成功事例だったそうです。

 双葉町出身・高崎丈さん:「『廃虚となった造船所』というワードと『止まっている双葉町』というところが、自分のなかですごくリンクした部分があって。違う形として生まれ変わるということが、現実的に起こっているということを知られたこと自体が、自分のなかでは『できないことじゃないんだな』って」

 現在、住んでいる東京と双葉町を往復しながら制作会社の協力で増やしてきた壁画の数、全部で7作品。

 東日本大震災から丸11年となる今年、町では初めて帰還困難区域の一部が解除され、6月頃から人が住めるようになる予定です。

 再生への架け橋となった巨大壁画を見に地元住民だけでなく、他県などからも訪れる人たちが増えてきたそうですが、高崎さんたちのアート活動は今週完成する8作目でいったん、区切りを付けると言います。

 双葉町出身・高崎丈さん:「(住民の帰還がはじまり)ここからが逆に僕らのスタートになるので、そういった意味では、すごくいい助走をこのアートを通して付けてもらったので。そこをうまく助走に乗って双葉町という町が、うまく再生とか、復興できていければいいのかなと思っています」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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