「医療関係者も助けを求めている」人出不足で疲労もピークに…被災地医療支援もひっ迫【報道ステーション】(2024年1月16日)
能登半島地震の被災地には、各地の自治体から様々な支援の手が集まっています。医療の現場には熊本地震を経験した医療チームが、水道復旧には西日本豪雨でも工事に携わった職員などが、一日も早いインフラ復旧のため、奔走しています。
■水道復旧へ 各地の職員奔走
復旧工事や支援活動の司令部となっている金沢市。全国16の自治体から水道局の職員たちが集まり、被災地へ出向いて復旧作業を行っています。
最大で11万戸を上回った断水件数。復旧できたのは、まだ5割程度です。志賀町には、横須賀市の上下水道局のチームが向かいました。志賀町は、いまだ全域で断水が続く地域です。路上の小さな蓋を開けて、鉄の棒を中に入れます。そして…。
横須賀市上下水道局 望月慎一主任
「(Q.耳に当てていたのは)漏水の音がするかどうか確認する。漏水、水を使っていると、水が流れる音が聞こえる。(Q.どういう音)『スー』という音。表現しにくいですが」
玄人にしか分かりませんが、音の違いで漏水しているか分かるといいます。これを1つ1つ調べていく、根気のいる作業です。
横須賀市上下水道局 望月慎一主任
「地元でやる作業に比べると時間がかかる。間違ったバルブをいじってしまうと、想定と違うことが起きてしまう。状況によっては図面と道路が変わったりしているので、間違ってないことを確認しながら、慎重に作業している」
他の自治体が持つ経験は大きなメリットです。16日に輪島市の支援に入った横浜市水道局。これまでも東日本大震災や西日本豪雨など、被災地で復旧工事を担ってきた実績があります。
横浜市水道局再整備推進課 敦賀仁課長
「これまでも地震により色々なところで被害があって、そのたびに水道関係者一丸となって、復旧に取り組んできた。生活環境復旧のために、一刻も早く水を届けていきたい」
支援項目は多岐に渡ります。全域が断水状態にある志賀町では、静岡県御前崎市、茨城県高萩市、横浜市と3つの自治体から給水応援に来ています。それだけ、支援を必要としている人の数が多いことを意味します。
被災者
「本当に色んなところから支援をいただいて、助かっています。僕らの心の支えにもなるような感じで、自分ら復旧に向けて頑張らないとなと思ってやっています」
石川県は16日、地震で亡くなった方のうち、遺族の了承を得られた20人の氏名や年齢などを新たに公表しました。いずれも「家屋倒壊」により亡くなったということです。
■熊本地震の経験いかし…心のケアも
そして、発災から2週間以上が経過した今、正念場を迎えているのが、災害関連死を防ぐ戦いです。
七尾市の総合病院。駐車場には全国各地から集まった緊急車両が並んでいます。そのうちの1つ、熊本から駆けつけた医療チームは、熊本地震の経験をいかし、活動を続けています。
避難所にいる女性(91)は、エコノミークラス症候群の疑いがあるとの報告があがっていました。
熊本赤十字病院 杉本卓哉医師
「弾性ストッキングって持ってますか」
女性(91)
「いえ、ないです」
熊本赤十字病院 杉本卓哉医師
「今ちょっと持ってきてるんですよ」
熊本赤十字病院 杉本卓哉医師
「熊本地震もエコノミークラス症候群が発生しやすい状況でした。熊本地震の経験をいかして、予防のために弾性ストッキングを配ったり、足を動かしていただいたり、そういったことを普及しています」
女性(91)
「ありがとうございました。本当にうれしい。感謝です。本当にありがとうございます」
熊本赤十字病院 杉本卓哉医師
「熊本はすっかり戻ってますので、能登もだんだん戻ってくる。それまで辛抱して…」
女性(91)
「助けてください。お願いします」
■「命を守る」産婦人科の闘い
一方で、震災後に生まれてきた命もあります。地震で大きな被害を受けた七尾市の恵寿総合病院では、被災直後の混乱のなか、元気な女の子が誕生。それからの2週間で、病院では新たに5人の赤ちゃんが生まれています。
恵寿総合病院産婦人科長 新井隆成医師
「72時間過ぎた1月4日くらいに、周りを見ても疲労・ストレスの強さがうかがえた。そういうタイミングで、ボランティアでベテランの産婦人科医が支援にきてくれた」
その後も休まる時はありません。
妊娠5カ月の女性
「地震が起きた夜は車中泊をして、次の日は実家近くの避難所で1日過ごしました」
医師
「トイレ近くなるから、水分控えちゃったりしたでしょ?」
妊娠5カ月の女性
「そうですね。あと、その時まだ飲み物もなかった」
被災によるストレスに苛まれる妊婦は少なくありません。生まれてくる命を何としても守りたい。産婦人科は被災したため、損壊を免れた本館に移動。ただ、分娩台がないため、手術室を利用しています。
恵寿総合病院産婦人科長 新井隆成医師
「妊婦さんは本来できるだけ早く、安全な生活を送れるところに身を置いておかないと、過去の震災の報告で早産が多くなる。優先し守ってあげなきゃいけない対象、災害弱者の代表ですから」
■医療支援もひっ迫 人出足りず
羽咋市や志賀町など、能登中部での医療チームの活動拠点となっている七尾市の病院に、下村彩里アナウンサーがいます。
下村彩里アナウンサー
「こちらは医療福祉チームなどの拠点となっている、公立能登総合病院の駐車場です。岡山や香川など、全国各地から医療チームの車が集まっています。医療チームの責任者に話を伺うと『物資は足りてきているが、人手はまだまだ足りない』と訴えていました」
下村彩里アナウンサー
「公立能登総合病院では能登中部の支援を主に行っていますが、能登北部にも活動拠点があります。そちらは特に医療スタッフが足りていないといいます。北部にスタッフを送り込もうとしていますが、天気が悪かったり、相次ぐ地震で、昨日通れた道が今日は通れず、医療スタッフがたどり着けない状況が起きているといいます」
下村彩里アナウンサー
「さらに今、医療従事者が、問診などだけではなく、避難所の洗濯や調理なども行ったり、役割を超えた支援を行っている状況で、スタッフの疲労がピークに来ているということです。話を伺った医療従事者の方は『被災者だけでなく、医療スタッフも助けを求めている。我々のことを忘れないでほしい。息の長い支援を続けてほしい』と強く訴えていました」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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