「諦めない」女性社長“涙の再起決意” ピーク直前「能登かき」深刻被害【もっと知りたい!】【グッド!モーニング】(2024年1月15日)

「諦めない」女性社長“涙の再起決意” ピーク直前「能登かき」深刻被害【もっと知りたい!】【グッド!モーニング】(2024年1月15日)

「諦めない」女性社長“涙の再起決意” ピーク直前「能登かき」深刻被害【もっと知りたい!】【グッド!モーニング】(2024年1月15日)

 能登半島地震により、漁業も深刻な被害が出ています。日本海有数のカキ養殖の産地である七尾市もその一つです。33歳の女性社長が、これから旬を迎えるカキを守ろうと再興に向けて動き出しています。

■“困難の連続”がんで失った父と続く震災

 冷たい雨が降る13日午前8時。

下村水産・浅井絢美社長(33)
「出荷できないカキがどんどん成長してきて、棚自体が重くなって、ブイも沈んできてる。なのでブイを追加して、出荷できるようになるまで棚を浮かせる作業をします」

 下村水産の3代目・浅井さんは、日本海側最大級のカキ養殖産地とされる石川県七尾市で、特産の「能登かき」の養殖・加工を営んでいます。

浅井社長
「ようやくここまで来たというところで、震災が起こって」

 甚大な被害を受けた石川県七尾市では、15日現在も断水が続いています。浅井さんは5年前に一般企業を退職し、一大決心の末、カキ養殖の家業を継ぎました。

浅井社長
「父が大切にしてきたものを守りたいという気持ちで、後を継ごうと決意しました」

 決意をした矢先に父はがんで他界。浅井さんは未経験ながら社長に就任しましたが、その道のりは困難の連続でした。
 
浅井社長
「こんな未経験のやつにできるわけないっていうので、古参の従業員は私が社長に就任してから、みんな辞めまして」

 人手不足に加え、新型コロナウイルスの影響で売り上げが半分に落ちたこともあったといいます。それでも、同業の漁師や新しく加わった従業員と力を合わせ、手探りで迎えた4シーズン目、震災に見舞われました。

浅井社長
「まずは家族の心配と、その後にせっかく育ててきたカキ、作業場、船はどうなったか。津波の予報もありましたので、それが本当に心配でした」

 幸い事務所に大きな被害はなく、浅井さんの家族や従業員も無事でした。しかし、断水の影響でむき身の作業ができなくなり、カキ棚を浮かせるブイも流されてしまいました。今は主にかき棚の修復作業に汗をかく浅井さん。

漁師
「もうちょい下げられる?」

浅井社長
「カキを吊るしている棚の一部が倒れています」

 大粒の雪が降り、視界が悪いなかでの重労働です。

浅井社長
「今、やらなければいけない時期なので、寒さ厳しいですけど、やっていくしかないです」

■「心の支え」購入者から温かいメッセージ
 
 同じく七尾市でかき養殖を行う山口水産は、かきの収穫、オンライン販売を継続しています。幸い被害は大きくありませんでしたが、山口水産も断水の影響でむき身商品の出荷はできません。

 オンラインショップの購入者から、応援のメッセージが届いたといいます。

山口水産・山口翔太取締役(28)
「ほとんどのお客様が応援メッセージを添えて、ご注文してくださってます。本当にこのメッセージが原動力となってますし、心の支えとなっております」

 しかし、なかには被害の大きな業者もあります。

 七尾市の沿岸部にある宮本水産は作業小屋が倒壊し、15日現在も営業再開できていません。組合によると、今回の地震で七尾市のカキ業者は半数以上が被害を受けたといいます。

JFいしかわ七尾西湾出張所 出張所運営部・山口達也会長
「これを機会に廃業しますという人も出てきています。5、6件はそういう話を伺いました」

■心休まらぬ日々…生前の妻の一言が引っ掛かる

 そんななか、一週間前から再開に向けて動き出しているのが浅井さんの下村水産です。以前から冬場に助っ人として来ていた輪島の漁師は、次のように話します。

輪島の漁師
「被災して、家もないんで。ここに泊めてもらいながら、社長においでって言ってもらって」

 輪島市では、沿岸部がおよそ4メートル隆起し、漁ができない状態が続いています。

輪島の漁師
「もう10年だめやろうな。10年お願いします。でも、そういうわけにいかないもんな。足踏みしてられん。どっかで戻らんと」

 手伝いに来てくれた2人のおかげで、復旧作業がようやく進み始めたといいます。

 そんななか、ある常連の男性(60代)が事務所を訪れました。「年末に買ったカキの代金を支払いに来た」といいます。

浅井社長
「レジ使えるんかな。今年1回も動かしてないので」

常連客
「俺、初めてか?」

浅井社長
「店開けても、売るものもなかったですもん」

 男性にとって、年明けは悲しみの連続でした。最愛の妻が1月1日早朝に自宅で亡くなったのです。悲嘆にくれるなか1日夕方、地震が起きました。

常連客
「本当、忘れませんよ。これ死んだわと思った。ただ、やっぱり妻もおるし、置いてかれん。こんな感じで、顔に物当たらんように」

 心休まらぬ日々を過ごすなか、生前の妻の一言が引っ掛かっていました。

常連客
「(年末に買ったカキの)支払いだけは早よしてきてねって言われとったから、気にはなっとったんよ」

常連客
「(Q.2週間経ってようやく)こちらのほうも、なんとかかんとか落ち着いてきて、段取りも終わってきたし。(支払い)しないとなと思って」

 誰もが少しずつ歩みを進めています。

 震災から2週間、浅井さんは能登かきをなんとか届けようと、わずかに収穫できた殻付きカキを自ら車を運転して、金沢の市場に卸し始めました。

 さらに14日、オンラインショップでの販売も再開し、気持ちを奮い立たせています。

浅井社長
「震災が起こったからといって、諦める気はまったくないですし。少しずつできることから、一歩一歩前に進んでいってます」

(「グッド!モーニング」2024年1月15日放送分より)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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