元日本航空機長が解説…事故防げた可能性 海保機の動きを“再現”…記録公開も残る謎【スーパーJチャンネル】(2024年1月4日)

元日本航空機長が解説…事故防げた可能性 海保機の動きを“再現”…記録公開も残る謎【スーパーJチャンネル】(2024年1月4日)

元日本航空機長が解説…事故防げた可能性 海保機の動きを“再現”…記録公開も残る謎【スーパーJチャンネル】(2024年1月4日)

 日本航空と海上保安庁の航空機が衝突し、5人が死亡した事故。なぜ、起きてしまったのでしょうか。

 元日本航空機長の塚原利夫さんと共に、模型を使って事故を検証します。

■管制から「C-5で待機」の指示も…

 まず、事故が起こった場所です。

 事故は、羽田空港第2ターミナル近くのC滑走路で起こりました。その衝突場所周辺をパネルにしました。

 事故直前、海保機はC-5というポイントから滑走路に進入しました。そこに着陸許可を得た日航機が降りてきて衝突しました。

 この時、管制から海保機には「停止位置まで地上走行」と、指示が出されていました。

 塚原さんにお聞きします。停止位置とはどの辺りでしょうか。

塚原さん
C-5の本来の停止位置は、滑走路の手前です。管制からは「C-5で待機をしてください」という指示が出されています。

■認識の食い違い…なぜ起こった?

 本来であれば、C-5の位置で止まっていなければいけなかったのですが、海保機の機長は「進入許可を得たと認識していた」と説明しています。なぜ、食い違いが生じてしまったのでしょうか。

塚原さん
思い違い、食い違いというのは、人間ですからあることだと思います。海保機の副操縦士は管制に対して「C-5の位置で止まります」という返事をしています。その返事は当然、管制にも伝わっていますし、機長と副操縦士の間でも共通認識がなされているはずです。

塚原さん
しかし、どうも、その共通認識が得られていなかったために、機長は滑走路に進入していいと誤解をしてしまったのではないかと思います。そしてC-5を出て、滑走路上で約40秒間停止しています。その時、着陸機は、まだ滑走路のはるか手前でした。結果的に接地(着陸)した後、追突する形になって、炎上したという流れになります。

 C滑走路上で、海保機が40秒停止していたというのは、どういう状態にあったと言えますか?

塚原さん
おそらく、離陸許可はまだもらっていないけれども、「滑走路に入って離陸を待ちなさい」という指示だと錯覚、誤解をしたのではないだろうかと思われます。

 そもそもの質問で恐縮ですが、停止位置の辺りに信号機のようなものは設置されていないのでしょうか。

塚原さん
空港によってついている所とついていない所があります。羽田空港の場合は通常ついていません。

 ですから、管制とのやり取りが大切になってくるということですね。

塚原さん
飛行機のシステムはハイテク化されているのですが、人の声、音声無線が一番ローテクな部分です。これが安全の要になっていまして、ここでよくトラブルが発生します。今回、聞いた言葉をいかに状況認識するか、機長と副操縦士との間に差が出ていたのだろうと。その結果が、今回の飛行機の動きに変わってきているということだと思います。

■交信記録…「こんばんは1番目」は離陸許可ではない

 管制との交信記録が新たに公開されました。塚原さんは、どの辺りに違和感を覚えますか?

塚原さん
違和感を覚える箇所は1カ所もありません。すべて、いつもどおりです。中で言えば、「こんばんは1番目(ナンバーワン)」の言葉ですね。しかし、ナンバーワンと聞いたから、自分がすぐに出られると思うパイロットはいません。この時、この海保の飛行機は、C滑走路からの1番目の離陸機だったんですね。順番がただ1番目だった。2番目は国際線の飛行機がいまして、それが2番目の離陸の順番だった。管制からは「あなたがナンバーワンの最初の離陸機ですよ」と、これは離陸の許可でも何でもありません。情報提供ですね。

■いくつか事象が連鎖…事故は防げた可能性も

 何らかの誤解があってC滑走路に進入してしまったということですが、進入後もこの事故を防ぐことができたんじゃないかとも思うのですが、いかがでしょうか?

塚原さん
非常に重要なポイントだと思います。人間は、どんな立派な人でも間違いはあるものです。例えば滑走路に入る前に、着陸機が滑走路に向かっていれば、着陸灯という大変明るいライトが見えているはずです。もしC滑走路に入る時、右側に座っている副操縦士がこの日航機を視認していれば、「危ない」ということをすぐに感じることができます。

塚原さん
今回の事故では、海保機は指示どおりに動いません。そして(発着の多い)夜だったことで多くの飛行機を管制していて、管制塔も大変忙しいと思います。管制が海保機が指示どおりに動いていないということを発見した段階で、すぐに着陸許可を出した日航機に「着陸許可は取り消す」、もしくは「もう1回やり直してくれ」というような指示が出せていれば、この事故は防げた可能性があります。

塚原さん
そして、大きい事故というのは1つ2つの問題で発生しているのではなく、いくつか事象が連鎖しています。“最後の砦”は、着陸しようと滑走路に近づいて来た日本航空機が「操縦室から見て前に何か障害物がある」「小さい飛行機が止まっている」と発見して、着陸を取りやめることです。ただ、残念なことに事故が起こったのは夜間でしたから、滑走路の周りには多くのライトがあって非常に明るい状態にもなっている。そのライトにかき消され、海保機のライトが見えなかった、あるいは姿が見えなかったなど、色々な事象が伴ったのではないかと思います。

(スーパーJチャンネル「newsのハテナ」2024年1月4日放送)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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