「蘇民祭」1000年の歴史に幕 2008年の“物議”ポスターの男性を取材 複雑な心境語る(2023年12月8日)
岩手県奥州市の黒石寺で開催される伝統の祭り「蘇民祭」が、1000年の歴史に幕を下ろすことになった。
■苦渋の決断…檀家の高齢化と担い手不足
最低気温マイナス6℃と身も凍る寒さのなか、ふんどし一丁で凍った川に入り、頭から水を浴びる男たち。これは今年1月、新型コロナでの自粛を経て、3年ぶりに開催された岩手県奥州市の黒石寺・蘇民祭だ。
参加者:「“ジャッソー”って『邪を正す』ってことじゃん。邪なくなったな」「なくなった」「邪がなくなりました」「ありがとうございます。すべてに感謝です。ありがとうございます。ジャッソー!」
復活した喜びも束の間、今週、来年の開催を最後に終了すると発表があったのだ。
番組は、蘇民祭を執り行ってきた住職を取材。すると、そこには苦渋の決断があった。
妙見山 黒石寺 藤波大吾住職:「お祭りの中心を担っているのは、私たちお寺の人間と、檀家(だんか)さんを含めた地域の方々。例えば、その方がかなり高齢化してきていたり、その『家』が将来の担い手が今いないという状況になってきていて。そうなると、近い将来、お祭りを今の形で続けていくことは、どちらにしても難しくなってくるということで、今回決断させていただいたということです」
祭りの中心部分を支える檀家の高齢化と、将来の担い手不足が深刻さを増しているという。
藤波住職:「蘇民祭を愛してくださっている皆さんに対しては、本当にただ申し訳ないですという気持ちだけですね」
来年2月17日の祭りを最後に、今後は祈祷(きとう)などの儀式のみを継続していくという。
■最高潮は…「蘇民袋」奪い合う伝統行事
1000年以上続いてきた伝統の祭り、黒石寺・蘇民祭」。例年3000人が訪れるという人気の祭りだ。
五穀豊穣(ほうじょう)や無病息災を願い、ふんどし姿の男たちが凍てつくような真冬の川の水で身を清めたり、火の粉を浴びたりしながら気勢を上げる。
そして、祭りのクライマックスは…「蘇民袋」と呼ばれるお守りが入った麻袋を奪い合う伝統行事だ。
男たちは夜を徹して争奪戦を繰り広げ、毎年“取り主”が決まるのは明け方になっていた。
■物議を醸した…2008年ポスター掲載の男性
この蘇民祭の名が全国的に知られるきっかけとなったのが、2008年のポスターだ。
胸毛の濃いひげの男性が吠える目をひくデザイン。これが利用客に不快感を与える恐れがあるとして、JR東日本が駅への掲示を拒否し、物議を醸したのだ。
番組でもポスターの男性を取材していた。
佐藤真治さん(当時38)。佐藤さんは中学2年生の時から20年以上、蘇民祭に参加し、祭りへの思い入れも強い。
佐藤さん:「この祭りに出るために1週間、肉・魚・乳製品・卵(をとらない)みそぎですね。それをして臨んでいるのです。我々はそういう意気込みを持って、祭りに挑んでいますし、臨んでいますので」
■希望を捨てず…蘇民祭は“蘇る民の祭り”
過去には、「蘇民袋の争奪戦」で“取り主”になったこともある佐藤さんだが、今回の黒石寺・蘇民祭の終了をどのように受け止めているのか?7日、取材に応じてくれた。
佐藤さん(52):「(Q.蘇民祭の終了について?)確かに苦渋の選択だったと思うけれど、もう少しなんかなかったのかなという。色んな先輩たちが命かけて引き継いできた、受け継いできた伝統。1000年も続いてきた儀式じゃないですか。もう少し何かやり方がなかったのかなと」
ポスターで話題になった2008年以降、蘇民祭には関わっていないという佐藤さんだが…。番組が取材した15年前、妻・利枝さん(当時26)のおなかにいた高校1年の長男と、佐藤さんが祭りに初めて参加した年齢と同じ中学2年の次男を連れ、来年で最後となる蘇民祭を見せに行こうと考えているという。
来年の開催で終了が決まった蘇民祭だが、佐藤さんは希望を捨ててはいない。
佐藤さん:「蘇民祭っていうのは、漢字を見てもらえれば分かるんだけど、“蘇る民の祭り”でしょ。近い将来、『おかげさんで、もう1回やります』って感じで、5年後、10年後あたりに若い人たちがもう1回、奮起してやってくれるんじゃないかなっていう期待もあるんで、悲しい半面『もうちょっとすれば、またすぐ復活するじゃろ』という気持ちもあるのが、複雑って感じかな」
(「大下容子ワイド!スクランブル」2023年12月8日放送分より)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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