各地で路線バス廃止…運転手確保のカギ「地方移住」 温泉、家探し支援でアピール【羽鳥慎一 モーニングショー】(2023年11月8日)
人手不足による路線バスの廃止や減便が全国で相次ぐなかで、都内で開催されたバス運転手の就職説明会に、去年のおよそ2倍の参加者が集まった。
■バス会社“運転手体験”や労働環境改善など
深刻な人手不足にどう対抗するのか。ユニークなイベントで運転手確保に乗り出す会社があった。
岡山で路線バスなどを運行する「両備ホールディングス」。この日行ったのは、バスの運転体験会だ。大阪など全国から、家族連れなど34組が参加した。
大阪からの参加者(53):「自分のセカンドキャリアに向けて、ちょっとでも早く準備をしようかと思って参加しました」
就職を視野に入れ、大阪から参加した男性。大型2種免許は持っておらず、バスの運転は初めて。現役のバス運転手の指導の下、運転体験が始まった。
参加者:「おおー、なかなか曲がるときが難しいですね」
指導員:「そうですね、ちょっと大きめに。気持ち大きく切ってやるかなーぐらい切ってもらったら」
初めて運転するバスに苦戦しながらも、10分間の運転体験を終えた。
運転体験後の面談では、採用担当者が必死にアピール。
両備ホールディングス担当者:「お客様のご期待以上に車が動かせてない現状があって、やっぱりたくさん仲間が欲しい。もし興味持っていただいたら、ぜひ応募していただければ大変ありがたいと思っております」
今年の夏から始めたこの試みで、新たな運転手確保を狙うとともに、労働環境の改善にも努めるという。
両備ホールディングス担当者:「今年の春の段階でドライバーの皆さんの給与を平均5%上げました。休日の日数自体も107日まで拡大しまして、しっかりお休みもとっていただけるような形にしています」
先月東京で開催された、バス運転手の就職説明会。場内には所狭しとブースが置かれ、多くのバス会社が参加した。
千葉 日東交通 運転手:「日東交通としては女性ドライバーが多いので、すごく働きやすくて安心。もっと(女性に)入ってきてほしいと思います」
2015年から毎年開かれている「どらなびEXPO」。今回の参加会社は104社と、去年の2.5倍以上に激増。背景には運転手の確保がままならない、バス会社の切実な事情があった。
■利用者「見捨てられていく」全国で廃止続々…
京阪バス:「深刻な運転士不足が続いており、この度、一部路線の廃止の届け出をさせていただきました」
大阪と京都を中心に運行する京阪バス。大阪府守口市と門真市周辺などの合わせて7路線の運行を、来月16日で廃止すると発表した。
多くの人が利用する路線が廃止に。利用者からは戸惑いの声が上がった。
バスの利用者:「困ったね、もう私は本当に。もう年寄りってあれなんか、見捨てられていくんかねと。どうやってきましょう。死んじゃうわ、もう」
バスが走る地域の自治体も対応に苦慮している。
守口市担当者:「(京阪バスから)運転手不足を主な原因として路線の見直しはどうしようもない状況である、というようなご説明は受けております。市としても、なかなかそれに対しての措置だったりということは難しいと考えております」
■地下鉄に乗り換え発生で「料金的にも負担」
路線バスの廃止は札幌でも。道内最大手の北海道中央バスは、4年前1300人いた乗務員が、現在では200人減少。
今月いっぱいで、札幌市郊外とJR札幌駅を結ぶ2つの路線の廃止、また、12の路線について市内の地下鉄の駅までの運行に短縮することを決めた。
利用者のルートをたどってみると、現在は札幌駅まで行くが、12月からは地下鉄に乗り換える必要が出てくる。
さらに、こんな負担も発生する。
バスの利用者:「1回で行けるのが、また降りて乗り換えなので、料金的にも負担になりますよね」
会社は「バスだけで市民の足を確保することが困難な状況」としている。
■別府バス会社「温泉入り放題」 移住アピール
東京で行われたバス運転手の就職説明会にも北海道から7社が参加。都道府県別で東京・神奈川に次ぐ多さだ。アピールポイントは「北海道でゆったり暮らす」。
十勝バス担当者:「今はもう地元だけだとなかなか難しくなってきているので、以前より厳しい状況かなと思います。全国国内で移住も含めて、考えていかなきゃいけない」
北海道庁の職員も現場に駆け付け、移住も含めたPRを行う。他にも地方から多くのバス会社が参加。大分の別府から参加した「亀の井バス」は、一風変わった手法を取っていた。
別府市担当者:「別府はこの泉質を楽しむ、温泉自体を楽しむ。それができるのは日本中どこを探しても別府しかないんです」
亀の井バス担当者:「売りとしては別府は温泉地なので、営業所の中に温泉があります。仕事終りに温泉に入って帰っていただく。朝から入る人もいますけどね。もちろんタダですし」
自慢の温泉を前面に押し出すと同時に、別府市とバス会社が一体となり、移住も含めたサポートを行い、運転手確保を狙う。
別府市担当者:「これからは行政と公共交通がそれぞれが頑張るんじゃなくて、お互い連携をとりながら公共交通を守っていくっていう姿勢が大事」
■参加者「なれるもんなら今がチャンス」
会場を訪れた参加者からも、移住とセットでバス運転手への転職を考えているという声が上がった。
50代:「建設コンサルタントの会社にいたんですが、夏に辞めてしまいまして。地方移住を視野に入れて転職しようと思って、今回参加しています」
60代:「アイターン(地方への転職)も考えて。色々、近県の埼玉、東京から北海道、静岡あたりを回ってみました」
都内在住の夫婦も、こう話す。
夫:「将来的にバスの運転手になりたいなと思っていたので、それでいま転職活動をしてる最中で」
妻:「(Q.奥様も大型は?)取りました、仕事しながら」
手には取りたての大型2種免許があった。夫婦そろってバス会社への就職を考えているという。
夫:「北海道は好きで何度も行ってるので、いずれ北海道っていうのはずっとあったから」
夫婦が向かった先は、北海道の北見バスのブース。
夫:「転居先の例えばアパートなりを探すお手伝いもしていただけるんですか?」
北見バス担当者:「します。もちろんでございます。まず来ていただいて、北海道への移住っていうのも検討していただきたい」
バス会社の熱のこもった説明を、真剣な表情で聞く二人。
北見バス担当者:「ご検討よろしくお願いいたします」
夫婦:「ありがとうございました」
妻:「本当に人がいないんだなって。50歳でおととい免許取りました、それでもいいみたいな勢いで。移住とか全然抵抗がないんで。地方いくにしろ、なれるもんなら今がチャンスみたいな」
夫:「今がチャンスな感じはするよね」
■金銭面支援も手厚く…地方の魅力発信とともに
バス運転手の労働環境は月193時間で、全職業の平均に比べて10時間以上多く働いているということになる。それにもかかわらず平均年収は399万円と、100万円ぐらい全職業の平均に対して低い状況だということだが、先月行われたバス運転手の就職説明会では、来場者数およそ400人と去年の2倍に増えている。
その理由について、ここに参加した人々に話を聞くと、次のような声が聞かれた。
都内在住 50代夫婦:「夫婦で大型二種免許をとり、移住も視野に検討している」
都内在住 50代:「人生は短いので妻に相談し、移住する許可をもらった。支援スキームがあると参考になる」
どちらも「移住」がキーワードになっていて、移住支援も含めた人材確保に乗り出している自治体が増えている。
大分県別府市の亀の井バスでは、会社の営業所のなかに無料の温泉があり、働いた後にこの温泉につかって一日の疲れをいやして家に帰れるというところをアピールし、移住希望者を募っている。
さらに、金銭面でも支援を行う自治体もある。
亀の井バスでは無料Wi-Fi完備。全室エアコン付き。初年度の家賃月1万円の社員寮を用意している。
そして、企業だけではなく街を挙げて支援を行う所として、別府市は就職氷河期世代の30代後半から50代前半を対象に、5年以上の定住などという一定の条件で移住支援金を最大上限400万円支給する。また、免許取得助成金として大型二種免許の新たな取得者には、最大上限50万円も支給するという試みを行っている。
人材支援会社・リッツMC株式会社中嶋美恵長によると、「ゆかりのない土地に全国から転職希望者が集まってきている。地方のバス会社は土地の魅力を知ってもらうなど移住とセットで採用を考えていかないといけない」ということで、様々な工夫を施しているということだ。
(「羽鳥慎一 モーニングショー」2023年11月8日放送分より)
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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