「原爆も選択肢」緊迫ガザ イスラエル流出文書が物議“出口戦略”は住民の集団移住か(2023年11月5日)

「原爆も選択肢」緊迫ガザ イスラエル流出文書が物議“出口戦略”は住民の集団移住か(2023年11月5日)

「原爆も選択肢」緊迫ガザ イスラエル流出文書が物議“出口戦略”は住民の集団移住か(2023年11月5日)

ハマスとの戦闘が始まって間もなく1カ月。終わりの見えない侵攻が続く中、イスラエル政府が作成したとされる文書が流出しました。A4の紙で10枚にわたって書かれていたのは、ガザの全住民の国外移送を推し進めるという内容でした。

■イスラエル軍ガザ市を包囲し攻撃激化空爆も相次ぐ

「前に!ゆっくり!前に!」
連日、難民キャンプへの空爆が続くガザ地区。パレスチナの現地メディアはこの夜、別の難民キャンプでも空爆により51人が死亡したと報じています。さらにこの日は、国連機関が運営する学校も空爆を受けていて、ガザ保健当局によれば15人が死亡、70人が負傷しました。
(イスラエルガラント国防相)「戦闘は一歩ずつ進んでいる」
地元メディアによると、ガラント国防相は「軍はガザ市で南北から作戦を展開し市街地に入った」と明らかにしました。すでに住宅密集地などでは、イスラム組織ハマスとの戦闘が始まっています。
(CNN記者)「ガザに入り1キロほどの場所です。ガザ市はすぐそこです。すぐ後ろで聞こえるようにイスラエル軍とハマス戦闘員の間で戦いが行われています」
(イスラエル軍の兵士)「我々はイスラエルの安全を確保するため、何年何カ月かかろうとここにいます。ガザの家一つ一つ調べる必要があるならそれも行います」
4日、ガザへ入り前線の部隊を視察したイスラエル軍のハレビ参謀総長。
(イスラエル軍ハレビ参謀総長)「士気を高めてください。強いことはわかっています。私は君たちを誇りに思っています」
こちらはアメリカの戦争研究所が公開した4日時点での地上侵攻の状況を示した地図。すでにイスラエル軍はガザ市を南北から包囲し、進軍地域を拡大しているのがわかります。イスラエル軍は5日、前日に引き続き、ガザ地区に避難ルートを開設。住民らに南に避難するよう呼びかけました。しかし、以前イスラエル軍が指定した海沿いの避難ルートでは…
「信じられない、女の子が…女性たちも…神よ、どうか我々を守ってください。お願いします。神だけが頼りだ」
ガザ地区の保健局長は、海外メディアの取材に対し「イスラエル軍の激しい攻撃があり、15体ほどの遺体を回収した」と話しています。

■中継中に同僚の死知り「順番で死ぬだけ」

一方、南部の都市では…遺体の上に置かれたのはマイクとプレスと書かれた防弾チョッキ。
(ムハンマド・ハタブ記者)「ガザの病院で目にする光景は私たちの心を引き裂き傷つけています」
パレスチナTVのムハンマド・ハタブ記者はこの生中継直後に、イスラエルの空爆で死亡したといいます。同じ場所からの生中継中にその死を伝えられた同僚記者は…
(同僚記者)「何?」
「これがムハンマドだ。亡くなった」
(同僚記者)「ムハンマドが?確かな情報か?残念ながら、このことを伝えるのはつらいです。ムハンマドの訃報を伝えることになるとは思いもしませんでした。彼は30分前までここに一緒にいたんです。これ以上はもう我慢できない。もう疲れきった。我々はここでみんな犠牲になる。違うのは(死ぬ)順番だけだ。次から次に死んでいっている。誰も守ってくれない。国際社会はまったく守ってくれない。このチョッキもヘルメットも何も守れない。これは形だけのものだ。いかなる記者もまったく守れないものだ。こんな物は守ってくれない。形だけのものだ。我々はここでただ犠牲になって、生中継で次から次へ死んでいく。次から次へ無意味に亡くなっていく。順番で死ぬだけだ」
ガザ地区の保健当局はこれまでに3900人の子どもを含む9488人が死亡したとしています。戦闘の激化で民間人の犠牲が増える中、イスラエルの閣僚の1人が5日「ガザ地区への原爆投下も選択肢」と発言。ネタニヤフ首相はすぐさま「現実離れした発言」と非難したと伝えられました。イスラエルが描いている“出口戦略”とはどのようなものなのでしょうか?

■流出文書から読み解くイスラエル政府の“出口戦略”

全10ページからなるこちらの文書。タイトルは「政策文書:ガザの住民人口についての政治的選択肢」。ハマスとの軍事衝突から6日後、先月13日の日付です。イスラエルのメディアが政府の内部文書としてその存在を報じました。
(中東ジャーナリスト川上泰徳さん)「これですね。ヘブライ語の文章ですが、ここにロゴがあってですね、これは諜報省と書いてある。これ自体、要旨と書いてある。ですから大きな文書があってそれの要旨だと理解している」
元朝日新聞記者でエルサレムやバグダッドなど中東に駐在していた川上泰徳さんです。文書にはハマス政権打倒を掲げるイスラエル政府がとるべき方針について、A・B・C3つの選択肢が示されています。
「A案=ガザ地区の住民をそのままにして、パレスチナ自治政府に統治を任せる」
「B案=ガザ地区の住民をそのままにして、現地パレスチナ人による統治体制を作る」
「C案=ガザ地区からシナイ半島に民間人の退避」
3つの選択肢を示した上で、内部文書は3つ目のC案の説明から始まります。
「C案はイスラエルにとって効果的で長期戦略的な成果を生む実行可能な選択肢だ。国際的な圧力に直面するため政治決断が要求され、アメリカとイスラエルの友好国の協力が重要になる」
続いて、A案とB案は「戦略的意味と長期的実現可能性について重大な欠陥がある」と指摘しています。
(川上泰徳さん)「ハマスの体制が認められないのであればアッバス議長の治めているパレスチナ自治政府を持ってくればいいわけです。ところがこのA案が最もダメだと言っている。最初からパレスチナ国家を認めない、ということを前提に問題を考えているということで、パレスチナ国家を認めないとなれば、C案しかないわけですよ。だからそういう意味では、最初からC案を出すための選択肢を仮にあげたと考えている」
民間人をガザ地区からシナイ半島に退避させるC案。作戦の項目には…
「ハマスとの戦闘地域から非武装の住民に避難を命じる。第1段階でガザ北部に空爆を集中させ、避難が完了し住民がいない地域や、人口が密集していない地域での地上侵攻を可能な状況にする。第2段階では北部とその周りの境界線から徐々に地上侵攻を進め、ガザ地区全体を制圧する。さらに、ハマスの地下トンネルも破壊する」
(イスラエルネタニヤフ首相)「これは戦争の第2段階であり、その目標は明確だ。ハマスの軍事力と政府機能の破壊、そして人質の帰還だ」
内部文書に書かれた作戦とこれまでのイスラエル軍の動きが符合しているように見えます。では、この先は…文書からは軍事作戦の“出口戦略”を読み取ることもできます。シナイ半島に移される200万人あまりの住民たちのその後とは。
「シナイ半島に複数のテントの町が作られ、次の段階ではガザから退避した住民を支援する地域とシナイ北部の地域に再定住できる都市がつくられる」
(中東ジャーナリスト川上泰徳さん)「今回のガザ戦争を契機として、「もうパレスチナ国家は作らせない」という。そのためにはガザを排除してしまうという案として出てきたんだろうと思う。戦争をどういうふうに進めるかという方針として(内部文書が)ネタニヤフ政府の中で受け止められていたのでは」
一方、イスラエル首相府はAP通信の取材に文書の存在を認めたものの「コンセプトペーパー」だと回答。政府の公式見解ではないとしています。

11月5日『サンデーステーション』より (C) CABLE NEWS NETWORK 2023
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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