【報ステ解説】イスラエル“地上侵攻”いつ?その影響は?“ガザ地区退避通告”も(2023年10月13日)
イスラエル軍が、パレスチナ・ガザ地区北部の住民に対し、ガザ地区南部へ避難するよう勧告しました。
イスラエル国広報官:「民間人の被害を最小限に抑えるため、軍による人道的な措置を報告します。ガザ市の住民全員に避難を呼びかけます。自身の安全のため、南へ逃げてください」
避難の対象は、ガザ全土の住民約220万人の半分にあたる110万人です。国連によりますと、イスラエルが通知した退避の期限は24時間。日本時間14日午前6時だそうです。
イスラエル広報官::「今後、軍は相応の兵力を投入し、市内で作戦を遂行します。“人間の盾”にされないよう、ハマスから離れてください」
その後、イスラエル軍は、退避通告の内容が書かれたビラ数万枚を上空からばらまいたそうです。ネット環境が不安定なガザ住民への通知です。
ガザ地区から2~3キロ離れた場所には、イスラエル軍の車両が続々と集まってきています。最近、特に多く目にするのが、兵士を輸送する装甲車両。地上侵攻は、すでに秒読み段階に入っています。
地上侵攻が実行にうつされれば、どれほどの命が失われるのか見当もつきません。だからこその退避通告ですが、空爆が始まって7日目、退避は容易なことではありません。
パレスチナ赤新月社のマルワン・ジラニ事務局長:「我々の病院には、ICU患者や負傷者だけでなく、障がい者もいます。我々にどうやって避難しろと言うのでしょうか。どの道路も破壊されているのに」
イスラム組織『ハマス』も声明を出しました。徹底抗戦の構えです。
ハマスの声明:「南部へ避難しろという呼びかけを拒否する。パレスチナ国民は、血と犠牲の代償を払い、不屈の精神を結集することによって、抵抗運動の勝利を導くのだ」
情勢の悪化につながりかねない要素は、ほかにもあります。
金曜日は、イスラム教の集団礼拝の日。ハマスは、信仰心が高まるこの日に合わせてデモを行うよう、すべてのイスラム教徒に呼びかけました。すると、世界中で呼応する動きが起きました。
日本のイスラエル大使館近くでも、抗議活動が行われました。
パレスチナ出身のジョブラン・アフマドさん(28):「(Q.24時間以内にガザの一部からの退避命令が出ているが)ガザから出ていけと言ったら、どこへ行くんですか。場所もないし、ほかは全部バリケードされているし。死ぬまで行くということだけなんですよ。いま目にしている人道に対する罪は10倍になります。それは子ども、女の子、おじいちゃん、おばあちゃんとか全く関係なく、人間ではないと思われているんです」
エルサレムでは、緊迫の度合いがさらに上がっています。ひとたび衝突が起きれば、どこに憎悪が飛び火するかわかりません。
残された時間は長くありません。政府手配の航空機で自国民をイスラエルから脱出させる動きが、各国に広がっています。日本も14日、チャーター機を出すことを決めました。イスラエルからの出国を希望している日本人をテルアビブからドバイに運ぶ予定です。
不測の事態に備えるためなのか、アメリカの動きは慌ただしくなっています。12日にイスラエルを電撃訪問したブリンケン国務長官は、今度はヨルダンでパレスチナ自治区のアッバス議長と会談しました。アッバス議長は「ガザ住民の退避を拒否する」と話したそうです。
ブリンケン長官は、このあと、カタールやサウジアラビア、UAEなどを訪れる予定です。主な目的は、ガザに取り残された人々を脱出させる人道回廊の設置。そして、正確な数は不明ですが、ハマスの襲撃で人質となったアメリカ人の解放交渉です。ハマスとの対話チャンネルを持つ中東各国に働きかけているとみられます。
ブリンケン長官と入れ替わるように、オースティン国防長官もイスラエルを訪問しています。イスラエルのガラント国防相と会談後、そろって会見を開きました。アメリカは、イスラエルを止めるつもりはないようです。
アメリカ・オースティン国防長官:「ハマスの残虐性は“イスラム国”を彷彿とさせる。血に飢え、狂信的で、憎しみに満ちている。
イスラエル・ガラント国防省:「これはイスラエルの存続をかけた戦争だ」
ガラント国防省にはこんな質問が向けられます。
イスラエル・ガラント国防省:「(Q.イスラエルが発表した24時間の期限をめぐり混乱が生じている。期限はあるのか。明確な説明をしてほしい)テロ組織は民間人に紛れようとする。だから分ける必要がある」
24時間の期限は維持するのかという質問には答えませんでした。
※東京大学・中東地域研究センターの鈴木啓之特任准教授に聞きます。
(Q.イスラエル軍の24時間退避勧告の期限が迫っていますが、地上侵攻は避けられないのでしょうか)
現在、カウントダウンが行われていると考えたほうがいいと思います。地上侵攻の可能性が高まっています。24時間の期限が来て、すぐの侵攻の可能性がある緊迫した状態です。イスラエルは、ガザ地区に対して、人道的な処置をしたという動きを示すための24時間だと思います。ここからは、本格的な軍事侵攻が起こることを真剣に考える必要があります。
地上侵攻によって、人質は、ある程度、犠牲になる可能性はありますが、そこは人質をとったハマスなどの武装勢力の責任だということになると思います。国内問題として、ハマスなどガザ地区を拠点としているパレスチナ武装勢力、それらを自らの手で攻撃する。そうした動きにイスラエルは乗り出しているという可能性が高いということです。
(Q.世界の批判の矛先が向く可能性もあるなか、イスラエルが強硬姿勢を崩さないのは、なぜでしょうか)
イスラエルは、今回の自国民、特に民間人を含む1200~1300人という死者を出している状況を重く受け止めているところがあると思います。イスラエル社会に対して、脅威を与える存在。それは、ハマスなどガザ地区にいる武装勢力。これらを排除するということが、地上侵攻をする最大の動機になっていると思います。
これまでイスラエルは、攻撃してきた相手に対しては徹底的に打撃を与えるということを行ってきました。現在、ネタニヤフ首相のもと野党党首も連合する形で、戦時内閣が形成されています。実際の軍事行動にうつる準備が整っているのが現在の状況です。
(Q.イスラエル軍は地上侵攻、具体的にどう進むのでしょうか)
恐らく1~2カ月は激しい攻撃が続くと思います。地上部隊が市街地を進むだけではなく、空爆も止まらずに行われる。ガザに住んでいる人にとっては、昼夜問わず、攻撃を受けているという状態になりかねません。これまで、イスラエルがガザに対して、軍事行動を取ってきました。ただ、そのときは、ハマスの脅威を一時的に取り除くという目的でしたが、もし今回、ハマスのせん滅を目的にするなら、途中で交渉も何もなく、ひたすら攻撃を続くだけです。イスラエルの目的が、どこの段階に置かれているかによっては、過去に前例のない、非常に悲惨な戦闘になる可能性があります。
(Q.そんな攻撃が予想されるガザ地区ですが、24時間退避は現実的なことなのでしょうか)
私は非現実的だと思います。ガザ地区は、人口密度が高く、住宅も限られています。そのなかで約100万人が避難対象者となっていますが、その人口を収容できるような場所がガザにはない。地上侵攻まで、南部であろうと、北部であろうと、建物の中に住民が残されると思います。 (C) CABLE NEWS NETWORK 2023
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