メディアの沈黙 なぜ、ジャニー喜多川氏の性加害問題を報じてこなかったのか【風をよむ】サンデーモーニング

メディアの沈黙 なぜ、ジャニー喜多川氏の性加害問題を報じてこなかったのか【風をよむ】サンデーモーニング

メディアの沈黙 なぜ、ジャニー喜多川氏の性加害問題を報じてこなかったのか【風をよむ】サンデーモーニング

半世紀以上に及んだとされる、ジャニー喜多川氏による性加害問題。なぜ、それは報じられることなく止められなかったのでしょうか。

■2004年の最高裁判決を報じず

いまだ大きな波紋が広がるジャニーズ事務所、ジャニー喜多川氏による性加害問題…。

そもそもこの問題は、ここ最近明るみに出たわけではありません。1999年には週刊誌が既に報じていました。

当時、この記事に対し、ジャニーズ事務所側は名誉毀損の訴えをおこしますが、2004年、最高裁が上告を退け、セクハラに関する記事の真実性を認める東京高裁の判決が確定します。

ところが、この最高裁判決を、テレビ各局が報じることはありませんでした。

今回、民放連会長は定例会見で「メディアの反省」を口にしました。

民放連・遠藤龍之介会長(9月21日)
「性加害であり、重大な人権侵害であるという認識を、民放を含む多くのメディアが、十分に持てなかったことは事実で、反省をしなければならない」

■メディアの沈黙

実際、ジャニーズ事務所が設置した外部の専門家による再発防止特別チームは、8月の会見で、こう述べています。

再発防止特別チーム・林眞琴座長(8月29日)
「その背景には”マスメディアの沈黙”という状況が関係している」

“マスメディアの沈黙”。長年、テレビ、新聞を含む多くのメディアがこの問題を十分報じてこなかったことが性加害が続いた一因とされます。

■性加害は知られていたか

では、この問題の存在はメディアにどれほど知られていたのでしょうか。

今回、TBSの「報道特集」などは、TBSの制作局や編成局の現役社員やOB、およそ60人に取材。ジャニーズのタレントや事務所関係者と接してきた人たちです。

その結果、多くの人の認識が「ジャニー氏が同性愛者で、少年が好きという噂はあったが、性加害とは思わなかった」というものでした。その中にはこんな声が…

元役員(制作経験者)
「芸能界のスキャンダルという認識でゴシップとして捉えていた」

一方で、性加害をうかがわせる一端に触れた社員も…

制作担当者
「ジャニーズ事務所のタレントと食事に行ったときに『合宿所をとにかく早く出たかった』と言っていたので、合宿所で何かあるんだなとは感じた」

■メディアへの圧力は…

では、なぜこうした話が深刻に受け止められなかったのでしょうか。

再発防止特別チームが公表した報告書は、「この問題を報道すると、タレントを出演させることができなくなる、との危惧があったのでは」などと指摘。事務所側も、そうした「圧力」について語っています。

ジャニーズアイランド・井ノ原快彦社長(9月7日)
「そういった怖さとか、そういう部分がみんなを萎縮させてしまって、忖度が働いたりする部分は、確かにあったんじゃないかと思います」

事務所からの「圧力」については、TBSの当時の制作担当者も…。

制作経験者
「気に入らないことがあるとすぐに『タレントを引き上げるぞ』と言うため、振り回された感があった」

制作経験者
「怒らせたらダメ。キャスティングを巡る圧力が番組にあった」

メディアが著名人の報道を見送った例は、過去にもありました。

■BBCの人気司会者の性加害問題
 
今回、ジャニー氏の問題が知られるきっかけとなったのは、今年3月の、イギリスBBCのドキュメンタリー番組です。

ところが、そのBBCでも、かつて人気司会者による性加害問題が浮上したのです。

BBCの子ども向け番組などで長年司会を務めたジミー・サヴィル氏。慈善活動にも尽力し、王室からナイトの爵位まで授与された著名人です。

そのサヴィル氏が2011年に亡くなった後、多くの少年少女に対する性的虐待が発覚します。

英サンデー・ミラー元編集者 ポール・コンニュー氏
「一人の少女が『サヴィルは大抵、彼のロールスロイスやキャンピングカーの中で行為に及んだ』と証言しました」

ところがBBCは、亡くなった直後は、この問題の報道を局幹部の判断で差し止め、通常の追悼番組を放送したのです。
 
しかし、その後、警察の捜査で性加害の事実が確認され、BBCも独立調査委員会を設置します。
 
社員の中には、この問題に気づいた人もいましたが、著名人への「恐れ」があり、出演を拒否されることに怯え、告発を困難にしたと指摘。
BBCは検証番組を放送したのです。

■沈黙を繰り返さないために

BBCが陥った「沈黙」の過ち。それは今回、日本でも、テレビ局を含む多くのメディアがおかした過ちでもありました。TBSでかつて制作の現場にいた人からは…
 
制作経験者
「人権について低すぎた意識を高めるべき。芸能界は普通の社会から切り離されているという感覚があった。社会通念に照らして、人権意識を変えないといけないと思う」

「メディアの沈黙」という過ちを繰り返さないよう、真摯な取り組みが、今、メディアに求められています。

(「サンデーモーニング」2023年10月8日放送より)

▼TBS NEWS DIG 公式サイト https://ift.tt/TQzkKXA

▼チャンネル登録をお願いします!
http://www.youtube.com/channel/UC6AG81pAkf6Lbi_1VC5NmPA?sub_confirmation=1

▼情報提供はこちらから「TBSインサイダーズ」
https://ift.tt/Xt8P0Q3

▼映像提供はこちらから「TBSスクープ投稿」
https://ift.tt/TzMfuDZ

#ニュース #news #TBS #newsdig

TBS NEWSカテゴリの最新記事