【報ステ解説】狙いは“プーチン氏の誕生日”?ウクライナ「クリミア上陸作戦に成功」(2023年10月6日)
ウクライナ東部のハルキウ州で、2日続けてロシア軍のミサイル攻撃がありました。子どもを含む多くの民間人の死者が出ています。
攻撃が行われたのは、6日午前7時ごろ。弾道ミサイルが住宅街に撃ち込まれ、10歳の少年と、その祖母が死亡。負傷者も30人に上っています。
女性:「やつらこそ、がれきの下敷きになればいい」
男性:「悪夢だ。住宅の手前に着弾した。裸のままで飛び出た。恐ろしい。娘はきょう誕生日です。パソコンを買ってあげたばかりなのに」
前日、別の村に行われた攻撃では、死者が52人になりました。1度の攻撃による被害としては、侵攻開始以来、最大規模です。村ではこの日、命を落とした兵士の追悼式が行われていて、参列者ら60人が店に集まっていたといいます。そこをミサイルが襲いました。
男性:「父は、追悼式が行われていた、この建物の中にいました。ミサイルは、人々を悼む場所にも飛んでくるようになった」
一方で、ロシアが居座るクリミア半島で、転機が訪れようとしています。日時は不明ですが、ウクライナ側は、特殊部隊が上陸に成功したうえで、ロシア軍に大きな損害を与えたと発表しました。
ウクライナ軍特殊部隊:「ウクライナ軍はクリミアに再び上陸した。クリミアは我々の領土だ」
ウクライナの反転攻勢が開始して以降、クリミアには様々な方法で攻撃が行われています。クリミア大橋の一部を崩落させた、7月の水上ドローン。8月には、1回目の上陸作戦が行われ、9月に入ると、黒海艦隊の主力艦船や、司令部本体をミサイル攻撃でピンポイントに破壊しています。日本時間6日夕方にも、水上ドローンによる攻撃が行われたと、ロシア国防省が発表しています。
海からも空からも、驚異にさらされる状況だからでしょうか。黒海艦隊が気になる動きを始めました。
米シンクタンク 戦争研究所:「ロシア軍は最近、黒海艦隊の艦船数隻を、セバストポリ港からノボロシスク港に移した。攻撃から守るためと思われる」
衛星画像の分析で、黒海艦隊の主力艦船であるフリゲート艦や潜水艦など、少なくとも10隻がロシア側の港に移動したとみられています。
ノボロシスク港は、整備能力に欠けると言われているにもかかわらず、移動した理由。司令部攻撃でも使われたと言われる、巡航ミサイル『ストームシャドー』の存在が指摘されています。移動した先の港が、ミサイルの射程外になるのが1つ。そして、このミサイルをイギリスから供与される際、ロシア本土には使用しないことが誓約に設けられたとみられているからです。
ただ、もともと戦略上、黒海の真ん中にあるセバストポリは、東西両方をにらむうえで重要な拠点。一時的なのかもしれませんが、そこからの退避は、ロシア海軍最強と言われる黒海艦隊が“守勢に回った”転機と言えるかもしれません。
◆プーチン氏の誕生日 去年も“攻撃”
防衛省防衛研究所の兵頭慎治さんに聞きます。
(Q.ウクライナ軍は、クリミアへの攻撃を相次いで行っています。その意図は何だと思いますか)
兵頭さん:「今回の上陸作戦だけでなく、7月のクリミア大橋の2回目の破壊、8月以降も防空システムの破壊、司令部への攻撃と、攻撃を激化させています。なぜ7月後半から動きが強まっているかというと、ウクライナ側は『クリミアへの攻撃について、アメリカなどが容認に転じた』と説明しています。これまでは、プーチン大統領が核使用をするのではないかという懸念がありましたが、直ちにそういうことはないということで、ロシア軍後方の軍事拠点を攪乱することで、前線でのウクライナ反転攻勢を強めていく狙い。そして、クリミア奪還という政治的な強い意志を示してきたと思います。そして、セバストポリが危なくなってきたので、ノボロシスクに黒海艦隊を退避させる。クリミア半島全体がきな臭くなってきたと思います」
(Q.ウクライナのクリミア攻撃は、ロシアにどんな影響を与えますか)
兵頭さん:「プーチン大統領に対する政治的なダメージを与える狙いもあると思います。10月7日はプーチン大統領の誕生日です。去年は誕生日の翌朝に、1回目のクリミア大橋への攻撃が起きています。ですから、7日以降、クリミアへの何らかの攻撃が行われる可能性があります。プーチン大統領にとって、クリミアは政治的なこだわりが強い場所です。そして、来月にも大統領選挙に出馬を表明するという見方がロシア国内でも出ています。クリミアが危なくなると、選挙戦にダメージを与えることも可能になります」
(Q.ロシアがハルキウへ攻撃したのは、クリミアが攻撃されていることへの報復と考えられますか)
兵頭さん:「今年最大級の被害が出ました。しかも、ウクライナ兵の追悼の式典を行っていたということです。このタイミングからしても、司令部などへの大規模な攻撃に対して、ロシアが反応したように見えます。ロシアは、核をすぐに使うわけにはいかないので、ミサイル攻撃の規模を大きくする、場所を変えるといった形で、報復の意図を示しているようにも見えます」
(Q.欧米諸国の“支援疲れ”が指摘されているなかで、クリミアへの攻撃激化は、支援の動きに影響を与えますか)
兵頭さん:「前線での大きな動きが見られないなか、クリミアへの攻撃を見せながら、戦果をアピールして、欧米諸国からの軍事支援をつなぎ止めたい意図があると思われます」
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>
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