“山のダイヤ”見つからず宿泊客を制限…記録的残暑“秋の味覚”に異変 今後どうなる(2023年9月28日)

“山のダイヤ”見つからず宿泊客を制限…記録的残暑“秋の味覚”に異変 今後どうなる(2023年9月28日)

“山のダイヤ”見つからず宿泊客を制限…記録的残暑“秋の味覚”に異変 今後どうなる(2023年9月28日)

9月も残すところ3日ですが、甲府や静岡など4カ所では35度を超え、観測史上最も遅い『猛暑日』となりました。東京都心も33.2度を記録。この時期に33度を超えたのは、24年ぶりです。

どうにもならない暑さで、秋の味覚にも異変が起きています。

長野県の山間を上っていくと、松茸がぶら下がった宿泊施設があります。その名も『松茸山荘』。松茸をふんだんに使った料理が自慢です。松茸を求め、社長自ら、山に入ります。

その希少性から“山のダイヤ”とも呼ばれる松茸は、地温が19度くらいに下がって、適度な湿り気があると発生しやすくなるそうです。しかし、今年は、まったくありません。本来なら、いまの時期は、1日に10キロ採れる日もあるそうです。
松茸山荘・常田兼弘社長:「(Q.遅れの一番の理由は)暑さです。暑さで“地温”地面の温度が下がらないといけない」

この夏は、記録的な暑さに雨も少ない状態が続いため、松茸が、ほとんど発生していないといいます。結局、1時間、探し回って、1本も見つかりませんでした。

例年なら、宿は満室になる時期です。でも松茸の入荷が少ないので、受け入れる客を3分の1ほどに制限しています。
松茸山荘・常田兼弘社長:「気温も少しずつ下がってきたので、これから10月に入って、2週間くらい経てば、出てくることが、十分、期待できる。早く、たくさんのお客さんに提供したい」

海の幸にも異変が起きています。
本州一の水揚げを誇る岩手県大船渡の秋刀魚。魚市場をのぞくと、漁場から2日かけて戻った船がいました。28日の水揚げ量は、今年度、一番ですが、全体としたら10年前と比べて1割程度。さらに、少し小ぶりだといいます。

原因の1つは、海水温の上昇。それを裏付けるような異変が起きています。
大船渡魚市場・佐藤光男専務:「今年は剣先イカがずっと入っている。本来であれば、西で獲れるものが、こっちに来ている。そんな感じがする。定置網に大体、毎日入っている」

数年前から、主に西日本で獲れる太刀魚が網に入るようになりましたが、今シーズンになって、剣先イカが加わったそうです。

これから、秋刀魚の値段はどうなるのか。
大船渡魚市場・佐藤光男専務:「水揚げいっぱいあって、安く供給できる状況にないので、“超絶高級魚”にはならないと思うが、そこそこの値段で、当分の間、そういうポジションになるのでは」

記録的な暑さが、チャンスに変わる兆しもあります。純国産のワインです。
北海道浦臼町の広大な土地に広がるのは、ブドウ畑。いま、ある変化が起きています。

フランス・ブルゴーニュ地方を代表する高級赤ワイン用の品種、ピノ・ノワール。ワインにすれば、世界で最も人気のあるブドウの一つですが、デリケートで、気候を選ぶ性質でも知られます。

北海道は、これまで、このブドウの栽培に適した温度には届かない土地でした。ところが、ここ4年ほどは、気温の上昇で、当たり年が続出。特に今年は、真夏日を33回記録するなど、生育期の平均気温も高くなり、ベストなコンディションが確保されました。
鶴沼ワイナリー・齋藤浩司農場長:「猛暑日を何回か経験したし、真夏日が当たり前のように続いた。気候的にはすごく良い年」

間もなく収穫期を迎えるピノ・ノワール。今年の出来も上々のようです。
鶴沼ワイナリー・齋藤浩司農場長:「いろんな地域でワインブドウが栽培できるようになって、北海道のワインが盛り上がる意味では、温暖化は悪くもないかなって思う」

※各地で続出している“秋の味覚”の異変。

農産業と気候変動の関連に詳しい農研機構エグゼクティブリサーチャーの長谷川利拡さんは「今年の暑さは、程度、範囲、期間のいずれをも非常に記録的で、作物の品質に影響与える可能性が大きい。そして、局所的な大雨、短期間の集中的な大雨の影響も大きい。雨で土の水分が多くなりすぎ、野菜が病気などになってしまう。水産物も生息域・資源量の変化が早いため、いままで獲れていた魚種が獲れなくなっていく」といいます。

各地に影響を与えている暑さですが、今後の影響について、長谷川さんは、「まだ予測は難しい部分があるとしながらも、梨と桃などの果樹には直接的な影響がある。冬の寒さが十分でないと、芽が減り、翌年に実がなりにくくなる。農作物の管理に注意が必要だ」と指摘しています。

こうしたなか、温暖化を一つの契機とした新しい取り組みが各地であります。

亜熱帯性の果樹であるパッションフルーツは西日本で、サツマイモなどは、北の方に産地を広げています。

例えば、サツマイモ。有名なのは鹿児島ですが、最近は北海道でも作付けが進んでいます。北海道庁の農産振興課は「もともと道内で作付けしているところはあったが、今後も気温が上がっていくのなら、さらに拡大していくとみている」と話します。サツマイモの品種改良も進んでいて、『ゆきこまち』という改良品種は、北方の地域でも多く収穫でき、採れる品質も良い。

こうした産地変更や品種改良で温暖化に対応はできるのでしょうか。
長谷川さんは「産地の体制、貯蔵、運搬方法は、簡単に変えられない。気温の変化も予測できる範囲であれば、対応ができるが、例えば、果樹など収穫に時間がかかるものは、毎年、変化が激しい場合、栽培するリスクが高い。そもそも、温暖化が進めば、品種改良にも限界がある」と話します。
[テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp/a>

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